5 一飯之恩 (いっぱんのおん)
一飯之恩
四文字熟語。
意味――ほんのわずかな恩義のこと。
一度食事をご馳走になっただけなのに、そのわずかな恵でも忘れてはいけないという戒めの言葉。
「……あったか~~い」
「そんなに動くなって……」
「こういうの嫌……?」
「嫌じゃないけど、乗っかって動きすぎだよ……」
「だって上が好きな体位なんだもん!」
「そうなのか……?」
「なんか奥に響いて安心するの……」
「……うっ」
「んぁ……下手だったらごめんね……」
「……で、樫野さん……何してるの?」
「お兄ちゃんの、膝の上に座っている!」
「いやいや……そうじゃなくて、なぜ座ってるの?」
「心が暖かくなって安心するから!」
「あはははっ! そうなのか~~……て、おい! とにかく降りようね! よっと!」
隼人は膝の上ではしゃぐ樫野を、ひょいと床に下ろした。小柄なので軽い。
「むぅ~~! お兄ちゃんのケチ!」
7月の初旬。来週は夏休み前の期末テストがある。本来なら勉学に勤しまなければならない高校二年生の『上野隼人』は、こないだ人生初のラブレターをくれた少女と誰もいない理科室にいた。
少女というか、見た目は幼女に近い。どう見ても同級生には見えない。手を繋いで歩いてるだけで、通報されてもおかしくないロリフェイス。無意識に頭を撫でてしまいたくなる。
破壊力抜群の幼少女(造語)だ。
「えっと~ここに連れてきたのは、ラブレターの返事の件でだよね?」
隼人が話しかけても、樫野は『うんしょ、うんしょ』とまた膝に座ろうと全く聞いてない。
「その、もう少し時間をくれないかっ…………ていっ!」
それを隼人は、頭を押さえつけて制する。
「むぅ~~お兄ちゃん。なぜ座らせない?」
樫野は腰に手をあてがい、つるぺたの胸を張る。
「なぜって言われてもな~」
「お兄ちゃん。お手紙ちゃんと読んだの?」
「読んだよ」
「ならどうして? 妹いらないの?」
ん? この子は何を言ってる?
「妹? クソめんどくさい姉ならいるけど?」
「妹いいよ~可愛いよ~ゆきりんが妹になってあげるから」
「……」
しばし思索……そしてラブレターに書かれていた文面を思い返す。
『隼人お兄ちゃんみたいなお兄ちゃんが欲しいと、前から思っていました。
よかったら私を可愛がってください。甘やかしてください。
お返事待ってます。樫野由紀より』
確かこんな感じの…………はっ!!! これはもしや!!!
「樫野さん!」
「むぅ~お兄ちゃん! ゆきりんて呼んでよ~~」
「では、ゆきりん。もしかしてあの手紙って、俺にお兄ちゃんになって欲しいってことだったの?」
「そうだよ! 初めてあんぱん貰った時から決めてたんだよ! 絶対お兄ちゃん(隼人)を、お兄ちゃんにするって!」
「――あはははっ」
完全なる勘違いをしていた。てっきり、その~男女のお付き合い。恋愛的なことを想像していたのに……それに、二人の未来ビジョンを妄想しては、何とも言えぬ背徳感に悶絶してしまったではないか……お兄ちゃんになれと……?
あんぱん? そんなもの、ゆきりんにあげた覚えがない。というか、こうしてしゃべるのも初めてなような気が……
「お兄ちゃんは、よく甘いパンをくれます。それがいつも楽しみで楽しみで、おかげで学校に通うのが楽しくなりました」
ゆきりんは、顔を真っ赤にしながら深くお辞儀をしている。
「俺か? 人違いじゃない? パンなんて、ゆきりんにあげたことないよ?」
「いいえ。『これ隼人お兄ちゃんからだよ』って、吉井さんが持ってきてくれます」
「――吉井が?」
「はい!」
犯人はあいつか~……
『吉井照也』同じクラスの高校二年生男子。
こいつも神谷と同じく、高校からからの付き合いで、二年連続同じクラスだ。
友達作りが苦手な隼人にも、気さくに話しかけてくる。性格の明るい、いいやつだ。
そういえば、吉井によく「パンを一つくれ」とせがまれたっけ……
10年前に父親を病気で失った隼人家は、姉と母と三人暮らしの母子家庭で、母は小さなクラブ(スナック)のママをしている。
明け方に家へ帰ってくる母には、毎日の弁当作りは過酷なようで、500円玉とちょっとしたメモ(メッセージ)がテーブルに置いてある。
学校に行く前にテーブルを覗くことが隼人の日課で、メモを読むのが、この親子の唯一の会話でもあるのだ。大抵『お昼はこれですませてね』と書いてあるだけだが、ごくまれに『最近、隼人の顔が見れなくて寂しい』など書かれてたりもする。
隼人はスマホなど携帯ツールを持ち合わせていない。この何気ないメモを、メールを保存するように、自室の引き出しにある、クッキーの空き缶へ保存する。これもまた大切な日課だ。
この学校には食堂(学食室)がなく、弁当を持参しなかった生徒は、毎朝購買に押し売りに来る、パン屋のパンを買っていた。
その中には『パンセット』という代物があり、白い紙袋に5~6個のパンが、豊富なバリエーションで入っていて、中身は選べないが300円とリーズナブルなので、隼人はよくこのパンセットを購入していた。
パンセットには、必ず一つ甘い系のパンが入っていて、甘いものが若干苦手な隼人は、吉井が「パン一つくれ」とほざいてきた日には、その甘いパンを渡していた。あんぱんや、ジャムパン、クリームパンなどだ……
それが、巡り巡ってゆきりんに渡っていたのか……
「ゆきりんね……学校に友達いないから……お弁当とかね……友達と一口交換したりね。そういうの夢だったの……」
先程まで無邪気に振舞っていたゆきりんだったが、急に俯き舌足らずな声音で語りだした。
隼人も自宅で一人の夕食は当たり前で慣れているが、その寂しさには覚えがある。ここは静かに耳を向ける。
「わかってるの……自分をゆきりんて呼ぶ女の子が『痛いやつ』てことも……こういう子供っぽい見た目だから、クラスの女子に嫌われてることも……わかってる……『学校なんて行きたくない』て、思うこともあったよ……」
ゆきりんはファンクラブ(親衛隊)が出来るほど学校で人気があり、超有名人。この子に甘えてお願いされたら、断れる男子はいないであろう。そう無双使いなのだ……でもいっぽう、女子には妬みの象徴でしかない嫌われ者なのか……
ふっと、姉貴(一恵)の顔がよぎる。隼人の姉、一恵も隣町までファンクラブがあった。同じく色目無双の使い手だ。
『姉貴もこんな思いをしていたのだろうか?』
「でもね、そんな頃『お兄ちゃんのパン』に出会えた。とても甘くて美味しかったよ」
ゆきりんは目をバッテンにして見上げてきた。一飯之恩を感じてるのだろうか……
「……そっか」
自分の意図しないところで『お兄ちゃんのパン』は出来上がっていた。
なぜゆきりんに渡していた? その真意は後ほど吉井に伺うとして――
「ゆきりん! 俺でよければ今度交換するか? その~弁当とか!」
ほっとけなかった。隼人は優しい声で囁く。
するとゆきりんは、満開の向日葵のような笑顔で――「うん!」と頷いた。
「やっぱりお兄ちゃんには、なってあげれないが、友達ならなってあげれるぞ」
「いいのです! ゆきりんは諦めないのです」
「じゃ~手紙の返事は、今のでいいな?」
「ダメです」
ん? うまく伝わらなかったか?
「これからは毎日、ゆきりんにキスしてください! お兄ちゃんとして!」
!!!?
な! え~~~!!!
「なんでそうなる!?」
「お兄ちゃんなら、妹に挨拶のキスをすることは当然なのです」
「俺はゆきりんのお兄ちゃんになった覚えもないし、それに普通、兄妹でキスなんてしないだろ~!」
「ほっぺにもですか?」
「ほっぺにもだ!」
「ならお姉ちゃん(一恵)ともキスしないんですか? 実の姉弟なのに?」
「……」
隼人は言葉に詰まった……挨拶ではないが、悪ふざけで昨日、姉貴にキスされたばかりだったからだ。
そしてその隼人の苦悶な表情をゆきりんは見逃さなかった!
「やっぱりお姉さんと挨拶のキスしてるんですね~~。ゆきりんも、ゆきりんも、したいです」
そういうと、ゆきりんは座る隼人に飛び込んだ。
小さい体だが勢いがついた分、避けることもままならず、隼人は受け止めるしかなかった。
くしくも昨日、とある公園で花園仁和にされた状態である。
膝の上にお尻を載せて両腕は隼人の首にかけられている。違う点は胸の部分が当たってないところだけだ。
気を許したら、唇と唇が重なりそうな距離……
「では! 行きますよ~お兄ちゃん!」
ゆきりんは、顔を赤くしながら目を閉じ、唇を突き出した。こういうのに慣れていないのだろう、眉毛がピクピクと動いている。
「待て待て待て!!!」
「待てませんよ~~!!! 行きますよ~~」
ゆきりんは、両足を椅子の下で固めている。動けない――
「いや! だから待てって~~~~~~~~~!」
そのとき!!!
『ガチャンガララララ』
勢いよく理科室の後ろの扉が開いた。
「なにをやってるんじゃ~~!!!」
素早く、ゆきりんを持ち上げると、隼人から引き剥がした。
ハアハアと息を荒く、目の前に神谷が立っていた。
「隼人にこんな趣味があったとはね……」
はい! 出ました! 道端に捨ててあるエロ本をカピカピでページがくっついてるのに必死でめくろうとしている変態を見るような目はやめて~~。
「誤解だ神谷! これには深~~い理由がだな……」
「何が誤解よ! 樫野さんが隼人のことを好きな気持ちを利用して、やらしいことしようとしてたんでしょ!」
「違うんだよ! なあ、樫野さん」
「むぅ~~お兄ちゃん。ゆきりんて呼んでて言ったのに!」
「はあ~お兄ちゃん!? なにプレイよ~!!! 隼人~あんたね~」
「だから、違うんだって……」
「おー! お兄ちゃんは、ゆきりんと『妹キス』しようとしただけだよ~」
「…………終わった」
「は・や・と~~~!!!」
――――――――――
まだ右の頬が痛い。
神谷にビンタされたり、噛み付かれたり、なじられたりしながら、ようやく、ことの顛末を理解してもらえた。
「悪かったわよ。そんなに痛がらないでよね」
「本気でぶっただろうが! 痛がるにきまってる」
「わーわー、喧嘩はよくないのです」
この原因の主役は、のんきなものだ……
「で、お兄ちゃんになるってこと?」
「そうじゃない、クラスで一人ぼっちの女の子をほっとけないだろうが! 友達になる! て言ってるんだよ」
「友達じゃないのです。おにいひゃんなのです」
あ! 今、噛んだな……
「ゆきりん! ややこしくなるから少し大人しくしてようね」
隼人はなだめるように、ゆきりんの頭を撫でる。
「むぅ~」ゆきりんは頬を膨らませているが、嫌ではなさそうだ。少し照れている。
その様子をみた神谷は、少し考える素振りを見せて――「わかったわ。なら私も樫野さんと友達になる」と言い出した。
「いいのか?」
「いいわよ。隼人が友達になるなら私もなるわよ」
そのやり取りを、頭を撫でなれながら伺っていたゆきりんは――「断る!!!」と、一歩前に出て神谷に言い放った。
「――なんでだよ???」
咄嗟に隼人が口にする。
「だって! お兄ちゃん! この娘さん! お兄ちゃん狙ってるもん! ゆきりんにはわかるもん!」
「な!」
ゆきりんの言葉に、神谷が動揺する。
「な、な、なに言ってるのかな~~あははははっ」
「ん? お前もお兄ちゃん欲しいのか?」
「そんなわけあるか~~」
『バシッ』
また叩かれてしまった……
よく意味は分からなかったが、どうやら二人は打ち解けたようだ。今も「負けない」とか「私のほうが」など、楽しそうに話してる。
「そういえばゆきりん。弁当食べてる途中だったろう? いいのか?」
「お兄ちゃんはもう食べました?」
「いや、これから購買で買ってくる」
「ならここで一緒に食べませんか? 教室にお弁当取りに行きますから」
「神谷は食べたのか?」
「まだよ……」
「なら神谷も一緒にどうだ?」
神谷は目を丸くして、一瞬微笑んだ。
「どうしても! って言うなら仕方ないわね! 私もお弁当取ってくるわよ」
少し顔が赤い。
「むぅ~お呼びじゃないのです。お兄ちゃんとの時間に割り込まないでほしいのです」
ゆきりんが神谷に噛みつく。
「ほらほら、各自、一旦解散! 食料取りに行くぞ」
「むぅ~」
「なによ」
廊下に出ても、まだいがみ合う二人をよそに、隼人は一階の購買へ向かった。
なんとか隼人は、無事パンセットを買い終えると理科室へと戻った。教室には神谷の姿しか見当たらない。
「ゆきりんは、まだなのか?」
「まだみたいね」
「どうした? 機嫌わるそうだな?」
「なんでもないわよ!」
やはり機嫌がわるそうだ。腹減ってんのかな?
「先に頂いとくか?」
「せっかくなんだしあの子待つわよ!」
神谷の、こういうところ好きだ! なんだかんだ言っても根は優しい素直な子なのだ。
二人でゆきりんを待つ。
「あの子……」
「ん?」
「樫野さんよ! あの子クラスでいじめられてない?」
「そうなのか?」
「うん……体育のとき、いつも一人なのよ……パートナー組んでやる授業も誰もあの子と組もうとしないの……」
確かにクラスの女子に嫌われてると言ってたな。それも自覚してると……
「俺、ちょっとゆきりん呼んでくる」
嫌な予感がした。この理科室に一番近いのはゆきりんのクラスだ。それなのに一番遅いなんておかしい……
「待って! 私も行く」
二人は理科室を後にした。
二組の教室につくと、二人でゆきりんを探した。するとすぐに見つかる。
黒板横の大きなゴミ箱を俯き覗いていた。
少し離れて、ピンクのTシャツの親衛隊の皆も視界に入った。こちらも俯いている。
クラスの女子達もゆきりんと距離をとり、眺めていた。
そこにはお昼どきにふさわしくない異様な光景が広がっていた。
なにが起きている……
じーっと見つめていたゆきりんだったが、しばらくするとゴミ箱に手を突っ込み始めた。そしてなにやら取り出した。
あれは……
それは、黄色い象の絵が書かれた弁当箱だった……ゆきりんとは真逆の象徴! 大きな象の絵が書かれた弁当箱だった。
あれはゆきりんの弁当箱……なのか……?
ゆきりんは、ぶちまけられた弁当箱にきちんと蓋をはめ直す。そして振り返った。
――――ゆきりんは笑顔だった……
涙をいっぱいに溜めて、でも向日葵の笑顔だった……
隼人は全身の毛が逆立つのを感じた――そして気が付くと叫んでいた!
「俺の妹を泣かせる奴はどこのどいつだあああああ~~」
手当たり次第、目に入る奴を威嚇しまくる。
「お前か! おい! お前か!」
女子だけにとどまらず男子生徒も、隼人の狂気じみた態度にたじろいでいた。
ただ一人を除いて……
「お兄ちゃんやめて~~」
叫んだのはゆきりんだった!
「もういいの……もういいの……」
隼人の腕にしがみつき一生懸命にゆする。
「だって……お前……」
「いいの…………」
ゆきりん。いま、泣いているのか……俯いてしまって顔が見えない。こうなってしまうと隼人はどうすればいいのかわからない……
「立ってるのがやっとのくせに! 生意気!」
突然、横からスッと手が伸びてきた。
「掴まって! 理科室行くわよ! 私、お腹ペコペコなんだから、こんな腐った空間なんて、いてもしょうがないわ!」
神谷は教室の一角に溜まる女子たちを睨む。鋭い眼光は男子の隼人も身震いするくらいだ。実際向けられた女子達は震え上がっていた。
「だいたい、なんのための親衛隊よ! こういうとき守ってあげれないなら解散しなさいよ!」
今度はピンクTシャツ達を睨む。こちらも震え上がっている。
『神谷真由美』マジかっけえ~。
隼人は神谷と友達になれたことを心から嬉しく思った。そして、前よりもっと好きになった。
俺たち三人は理科室に向かう。途中、神谷と目が合うと自然と笑いが込み上げてきた。
「この卵焼き美味しいです。まゆさんが作ったのですか?」
「これはお母さんが作ったのよ。でも本気出せば卵焼きくらい作れるわよ」
チラチラと隼人を見ながら神谷が嬉しそうにゆきりんと話をしてる。
ゆきりんも、神谷のことを『まゆさん』と呼んでいるし、なんかいいいな~この景色――
だいぶ元気が戻ったみたいだな。
二人で神谷の弁当を分け合って食べてる。ほんとの姉妹みたいだ。
「よし! 俺からは、ゆきりんに、このクリームパンを進呈しよう!」
「わ~~お兄ちゃんありがと~~」
ゆきりんは瞳をめいっぱい見開き小さな体全体で喜びをあらわにする。
そこまで喜んでくれるなら、クリームパンも本望だろう。
「そして、このハムクロワッサンは神谷に進呈しよう」
「いいよ私は……」
「受け取ってくれよ神谷。な!」
プイっと横を向くが手はちゃんとハムクロワッサンを掴んでいる。
パンを渡すと隼人は神谷の耳元で「さっきはありがとな」と囁いた。
すると神谷は、あたふたと「べつにあんたのためじゃないんだからね!」とツンデレテンプレを披露してくれた。おもわず微笑んでしまう。
「そういえばゆきりん。今日、花園仁和さん見かけなかったけど知らないか?」
「もぐもぐ。花園さんなら風邪で休んでるのです。四日前から!」
えっ! 四日前ってラブレター貰ってるとこ見られた日からじゃないか……
神谷とも目があった、きっと同じことを思ったのだろう。
「なんで隼人が仁和を探してるのよ? まさかあのこと(ラブレターの件)問い詰める気! 言っとくけど仁和も私も、あのこと誰にも喋ってないからね」
「ああ。違う違う、ちょっとな気になって……」
「ふ~~ん」
女の勘は鋭いと聞いたことがある。実証はまだしたことないが、おそらくほんとだろう。間違っても悟られないようにしなければ……
「そういや~神谷。どうして理科室に来たんだ? なにか用事でもあったのか?」
さりげなく話題を変える。
「たまたま通っただけよ……そしたら二人の声が聞こえたから覗いたのよ」
「そうか、そうか」
そろそろ昼休みも終わり、午後の授業が始まる。
「私、そろそろ戻るわ」
神谷が席を立つ。
「ゆきりんも、そろそろ戻るのです」
ゆきりんも席を立った。
「ゆきりん。大丈夫か? 俺も一緒に行こうか?」
隼人はまだ心配していた。
「大丈夫よ! この子はそんなに弱くないわ!」
そう言ったのは神谷だ。
「はい! 大丈夫です! ゆきりんには、お兄ちゃんがいます。それと……まゆさんも……」
後半は聞き取れなかったが、ゆきりんの瞳は真っ直ぐに隼人を見つめている。
大丈夫そうだな。
「またなにかされたら俺か、神谷に言うんだぞ!」
念を押した。
「はい!」
――――――――-―
午後の授業も終わり下校時間になる。朝のテレビニュースでは、一雨来そうだと告げていたが、今のところ問題なさそうだ。
よし! 行くか!
隼人は、昨日指定された公園に向かう。
なにも期待しないでいることは無理だ。やはり今日もこれから熱烈なキスが待っているかもしれない……
覚悟はしておこう……
それにしても、花園仁和は、なぜ学校を休んでいるのか……? 風邪だと聞いたが、多分嘘だ……
隼人は一人、悶々としながら、目的地に向けて歩き出した。
――――――――――つづく。
いや~文字で言いたいことを表現するのって難しい……
わかっていたけど、これほどとは……自分の文章力の無さに、呆れかえる今日この頃な、なほきです。
今回は、ラブレターの謎に迫ってみました。妹キャラ! お約束ですよね~ww
次回は、花園仁和ちゃん&バンパイアのハニワちゃんの謎にさらに迫る予定です。
今回も、飽きずに読んでくださり、ほんとにありがとうございます。
尻尾パタパタ~~。