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村の諍

 さて、妖精のお姫様が住む村では最近不穏な空気が流れていました。今日も、朝から妖精の姫と村の賢女たちとの間で小さな事件が起こったところでした。賢女とは、またの名を『フェアリー・ドクター』『ウィッチ・ドクター』と呼んだもので、村で年長の賢く経験豊富な女達のことです。昔から、まじないや薬草、夢のお告げなどであらゆる問題を解決したものでした。それらの知恵は、彼女らの祖母の曾祖母のまたまた曾祖母から代々受け継いできたものなのでしたが。


「何なの、あの様は?一体、何人の乙女らがあの泉に足を運んだのでしょうか?そんなことをしても、病は治せない。さあ、あなたとあなたたちで泉の周りを片付けさせなさい」

「しかし、姫様、あの泉は代々女性の病を治してきた由緒ある精霊の泉なのです……」

 賢女の一人が困った顔で答えます。 

「今、あの泉に願をかけた乙女のなかに、病が治ったという者はいますか?」


 賢女たちは皆押し黙ります。

「泉を清めなさい。ちり一つ残してはならない。」

 妖精の姫シーリーンは、そう言うと賢女たちの前から去っていきました。有無を言わせぬ口調でした。賢女達は、しかめた顔を見合わせ、ひとり、またひとりと渋々動くのでした。


 事の発端は、村の近くにある霊泉でした。昔から、女性特有の病に泉の水が効くとして、女たちがよく水浴びの為の水を求めたものでしたが、最近では、水浴をする者はおりません。代わりに、願掛けとして月の生理用品を泉の周辺の木々にぶら下げていく若い女が出てきました。それは、日を追う毎に増える一方で、村だけでなく、噂を聞き付けて、遠方からも悩みを持つ女達が押しかけて願掛けをしていくからでした。今では、霊泉と呼ばれたはずの美しい泉の景観は、見苦しいことこの上ない悲惨な有様です。しかし、村の賢女達は泉に力がある証拠だと、却ってその霊泉を崇めてふれまわったものですから、それをシーリーンが責めたのでした。

 確かに、その霊泉にお参りをして女性特有の病が治ったという報告は聞いたことがありませんね。

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