記憶。
なんで。こいつ、おれの虫眼鏡の事を知っている。
ゴソリ
リュックを下ろし、更にその中の小袋を取り出す。雑貨類を入れた袋だ。十徳ナイフ、懐中電灯、財布。そして、虫眼鏡。
「これか?」
「ああ・・・。触っても?」
「良いけど。壊すなよ」
大事な物だからな。
大事な。
・・・なんで?
誰にもらったんだっけ。何に使ったんだっけ。
おれ、なんで、この虫眼鏡をずっと持ってるんだろう。物心付く前から持ってたよな。
ひょっとして両親の形見とか。
三生が物思いにふけっている間にも、女は虫眼鏡を撫でている。
よく。三生に、付いていてくれた。
「おい」
「ん」
女に呼びかけられ、考え事をしていた三生は、ふと顔を上げた。
目の前に、虫眼鏡。
当然、それを通した視界が見える。
「・・・・・・コオリ?」
氷??
おれは、何を言っているんだ?
「やはり。虫眼鏡を通せば、何とかなりそうだな」
1人納得した女は、虫眼鏡を三生に返す。
そして。
「三生。お前は誰だ」
誰?
おれは、おれ。
切始三生。
・・・・・・・・。
恋人が居て、うらやましいだろーって、自慢した覚えがある。
腕を、腹を、ブチ抜かれた覚えがある。
助けられた覚えがある。
おれ。こいつに会ってる。
「お前、誰なんだ。なんで、おれを知っている。おれは、なんでお前を知っているんだ」
「お前だけじゃない。私は、お前達、皆を知っている。なぜかは、聞くな。私にも分からない。だが、その私にも言える事がある。そしてお前達も、それを聞きたがっている。だから、ここに居る」
そう言えば。熱しやすい火山花が、文句も言わず、大人しくこの小屋に居るなんて。今更ながら、三生はその不自然さに気付かされた。
「三生。虫眼鏡を使え。お前なら、使いこなせる。そして、知れ。この世界の謎を」
謎。
今までの不可思議な会話は、三生の情報処理能力を超え過ぎていた。
だが、これなら分かる。
謎を、解き明かす。
良い言葉だ。
「全く分からんが。分かった。おれは、こいつを使えば良いんだな?」
「ああ」
以上。
謎の女との面会は終了した。
待たせていた歩生に連絡を入れ、今回の湯快山マップは、中断。流石に時間を使い過ぎた。
不思議な事に、冒険部の誰も、あの出来事に対し、違和感を覚えなかった。
歩生すら、その顛末を聞いただけで、納得したのだ。
即ち。
冒険部の夏は、終わっていない。
三生の虫眼鏡を中心に。
この世界の謎を調べる。
いざ、冒険へ!




