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三生紀行  作者: にわとり・イエーガー
三生の歩く世界。
21/31

記憶。

 なんで。こいつ、おれの虫眼鏡の事を知っている。


ゴソリ


 リュックを下ろし、更にその中の小袋を取り出す。雑貨類を入れた袋だ。十徳ナイフ、懐中電灯、財布。そして、虫眼鏡。


「これか?」


「ああ・・・。触っても?」


「良いけど。壊すなよ」


 大事な物だからな。



 大事な。




 ・・・なんで?


 誰にもらったんだっけ。何に使ったんだっけ。


 おれ、なんで、この虫眼鏡をずっと持ってるんだろう。物心付く前から持ってたよな。


 ひょっとして両親の形見とか。




 三生が物思いにふけっている間にも、女は虫眼鏡を撫でている。




 よく。三生に、付いていてくれた。


「おい」


「ん」


 女に呼びかけられ、考え事をしていた三生は、ふと顔を上げた。


 目の前に、虫眼鏡。


 当然、それを通した視界が見える。




「・・・・・・コオリ?」



 氷??


 おれは、何を言っているんだ?



「やはり。虫眼鏡を通せば、何とかなりそうだな」


 1人納得した女は、虫眼鏡を三生に返す。


 そして。


「三生。お前は誰だ」




 誰?


 おれは、おれ。



 切始三生。



 ・・・・・・・・。



 恋人が居て、うらやましいだろーって、自慢した覚えがある。



 腕を、腹を、ブチ抜かれた覚えがある。



 助けられた覚えがある。




 おれ。こいつに会ってる。




「お前、誰なんだ。なんで、おれを知っている。おれは、なんでお前を知っているんだ」



「お前だけじゃない。私は、お前達、皆を知っている。なぜかは、聞くな。私にも分からない。だが、その私にも言える事がある。そしてお前達も、それを聞きたがっている。だから、ここに居る」


 そう言えば。熱しやすい火山花が、文句も言わず、大人しくこの小屋に居るなんて。今更ながら、三生はその不自然さに気付かされた。


「三生。虫眼鏡を使え。お前なら、使いこなせる。そして、知れ。この世界の謎を」



 謎。


 今までの不可思議な会話は、三生の情報処理能力を超え過ぎていた。


 だが、これなら分かる。


 謎を、解き明かす。


 良い言葉だ。



「全く分からんが。分かった。おれは、こいつを使えば良いんだな?」


「ああ」



 以上。


 謎の女との面会は終了した。


 待たせていた歩生に連絡を入れ、今回の湯快山マップは、中断。流石に時間を使い過ぎた。




 不思議な事に、冒険部の誰も、あの出来事に対し、違和感を覚えなかった。


 歩生すら、その顛末を聞いただけで、納得したのだ。



 即ち。


 冒険部の夏は、終わっていない。


 三生の虫眼鏡を中心に。


 この世界の謎を調べる。


 いざ、冒険へ!

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