01
君のまわりは可笑しいぐらいに赤、紅、朱、緋。
まるで、薔薇の花弁を敷き詰めたような地面。
それが薔薇の花弁ではないと判るのは、君の血が絶え間なく流れだしているから。溢れる血は命を削って、君のぬくもりを恐ろしい早さで奪い、君が横たわる場所に血の湖が出来てゆく。
…ほんの少し前まで俺に笑いかけていたのに。
「俺が…っ!俺の……せいだ………!」
涙で言葉は出てこない。鮮やかな君の血とは違って、溢れるのはとこまでも透明な涙だけ。
「…ごめん……っ!」
そんなことない、と君は弱々しく笑みを浮かべる。
こんな時にも、君は笑うのか。
血で濡れた手を俺の頬にかけると、君はこの上なく艶やかに笑う。
────生きて、どうか幸せに。
そんな最期みたいな言い方は、本当に。
次の瞬間、サラリと銀髪が揺れて、力が無くなる。輝きを永遠に喪った空色の瞳は固く閉じられた白い瞼の下。
「おい…、約束……はどうした」
無意味なことだとわかっていた。
それでも、まだ望みを捨てきれなくて華奢な身体を揺さぶる。
情けなく震えた声が、ただただ、虚しい。
「…くっ……ぁぁぁぁぁああああっっ!!」
淡い光りを放って、君が手放さなかった宝珠がきらめく。
君は、もう居ない。
俺は初めて哀しみから絶叫した。
初っ端から誤字を見つけましたので、変更しました(2015/02/08)
改稿しました(2015/12/17)