開かれた窓
そして、一体誰が、この静かな風景が一瞬で壊れると想像しただろうか。
うっとりと眺めていた私は、その時目をいっぱいに見開くしかなかった。
刹那、ピタリとやんでいた風が、一気に流れ出したのだ。
縛っていた縄が突然プチリと切れたかのように、風があり得ない勢いで吹き荒れる。
それに合わせるように波は、ゴウゴウと音を鳴らせながら流れ出す。
風と波が唸る音に、窓もピリピリと震えだした。
女の子は、待ってましたと言わんばかりに、窓を大きく開け放った。
途端に水しぶきと荒れた風が、一気に部屋の中に入り込む。
畳まれていた白いカーテンも、狂ったように踊り出す。
「うわぁっ!」
あまりにも予想外かつ突然の出来事に、私は尻もちをついた。
どうしてこんな時に、窓なんて開け放つのだ。
波が打ち上げた飛沫が、私にも降りかかる。
霧雨のように、さらりとした細かい雫。
光に淡く乱反射して私を照らす。
「大丈夫? さぁ立って」
差し伸べられた細い腕は、こんなにも頼りなさげなのに、どこからこんな力が湧くのだろう。
私は勢い良く窓際に引っ張られる。
そこから覗く光景は、先ほどまでの穏やかな風景の面影を残さない。
雲も、あっという間に流れていく。




