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蒼が目を覚ました日  作者: 甘寧もえ
蒼が眠っている時(下)
7/13

開かれた窓


 そして、一体誰が、この静かな風景が一瞬で壊れると想像しただろうか。



 うっとりと眺めていた私は、その時目をいっぱいに見開くしかなかった。

 刹那、ピタリとやんでいた風が、一気に流れ出したのだ。



 縛っていた縄が突然プチリと切れたかのように、風があり得ない勢いで吹き荒れる。

 それに合わせるように波は、ゴウゴウと音を鳴らせながら流れ出す。

 風と波が唸る音に、窓もピリピリと震えだした。



 女の子は、待ってましたと言わんばかりに、窓を大きく開け放った。



 途端に水しぶきと荒れた風が、一気に部屋の中に入り込む。

 畳まれていた白いカーテンも、狂ったように踊り出す。



「うわぁっ!」

 あまりにも予想外かつ突然の出来事に、私は尻もちをついた。



どうしてこんな時に、窓なんて開け放つのだ。

 波が打ち上げた飛沫が、私にも降りかかる。

 霧雨のように、さらりとした細かい雫。

 光に淡く乱反射して私を照らす。



「大丈夫? さぁ立って」

 差し伸べられた細い腕は、こんなにも頼りなさげなのに、どこからこんな力が湧くのだろう。



 私は勢い良く窓際に引っ張られる。

 そこから覗く光景は、先ほどまでの穏やかな風景の面影を残さない。

 雲も、あっという間に流れていく。

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