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蒼が目を覚ました日  作者: 甘寧もえ
蒼が眠っている時(下)
6/13

予兆の静寂



 私は、ニコニコとする女の子に、眉をひそめた。



「運がいい? どういうことなの?」

 だが、女の子は明るい瞳で遠くを見つめている。

 そしてそのまま「いいから。ほら、よく見てなさいな」と答えた。

 私は不思議に思いながらも、揺れる窓の外を眺め出した。



 ――異変は、すぐに起こった。



 始めはその光景が何なのか、さっぱり見当もつかなかったが、今はさらに意味がわからない。

 ただ、向こうの方で、ぴたりと風が止んだのだ。

 今まで窓の外から爽やかに流れていた、心地よい音が消える。

 穏やかに揺れていた波も、形を滑らかに変えていく。

「ね、ねぇ、これって何?」

「始まるわ!」

 私に喋らせまいと言葉を重ねると、女の子は目を輝かせた。



 あっという間に波が止む。

 シンと静まりかえる海面。



 水面から凹凸が消え、海は静かに息を潜める。

 何もかもが透明なその時間に私は思わず息を呑み込んだ。

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