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蒼が目を覚ました日  作者: 甘寧もえ
蒼が眠っている時(上)
3/13

美しい蒼がある


「大丈夫? ねぇ、大丈夫?」



 心配そうに、女の子が私を見ている。

 私の額からは、汗が雫となって零れ落ちていた。

 あの、ノイズが掛った私の声も、訳のわからない機械音ももう聞こえない。

 ただ、蒼い世界から心地よい沈黙の音が、辺りに響いているだけだ。



「……何でもないよ。大丈夫。私にも、名前はないんだ」

 私は笑って答えた。

 女の子はホッとした様子で胸を撫で下ろす。

「なぁんだ、じゃあ、同じね。『名前がない仲間』!」

「うん! 名前がない仲間」

 お互いの顔を見つめて、そう言う。

 キラキラとした目は、やはり蒼くて美しい。

 私は何だか急におかしくなって、クフフと声に出して笑った。

 女の子も、私を見つめて同じようにクフフと笑う。



 私は、再び窓枠に肘を掛けて、外の景色を眺め出した。

 磨き上げられたガラス。そこから伝わる透明な温度が、とても心地よい。



 空とくっつきそうな海。それを許さないとでも言うように、上に手を伸ばすくすんだ建造物。



 飽きない景色。もうこのまま、ずっと、ずっとこのままでも良い。

 戻れなくたって、構わない。


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