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名前をなくした女の子
しかし、その先の言葉が出てこない。
一体、どうしたというのだろう。
テンプレート的な自己紹介の中で、自分の名前だけが黒く塗りつぶされている。
鼓動が、ドクドクと早まる。
――私は、誰なんだろう。
そう、自分に問いかけるが、途端に頭がガンガンと鳴りだした。
ノイズ混じりに私の声が、脳の中で跳ね返って行く。
『私は誰なの? わたしはだれなの? わタしハだれナノ? わたしは……』
ブルブルと首を振った。寒気がする。
慌ただしい喧騒。
鳴り響くクラクション。
心臓が握りつぶされるような、圧迫感。
永遠を重ねたような、一瞬の衝撃。
口を塞ぐ、電子的な音の塊。
思い出したくない。嫌だ。
違う、違う。そうじゃない。私はまだ――。




