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届いた音
「忘れないよ、私。あなたと会えたことも。一生に一度だけのことだけど、一生に一度しかないことだもの! 絶対忘れない」
私は最後に、心の奥底の正直な気持ちを叫んだ。
しかし、あの子に届いたかはわからない。沫となって散る私の声は、言葉にさえならなかったかもしれない。
音が遠ざかって行く。
優しい波音も、爽やかな風も。
淡く、夢を離れていく。
元いた場所、元いた世界。
私があるべき場所へ。
「――――!」
最後に、言葉にならないような、そんな儚い音を聴いたような気がした。
しかし、それは私の身体をすり抜けて彼方へ消えてしまったので、とうとう私の中に届くことはなかった。




