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蒼が目を覚ました日  作者: 甘寧もえ
蒼が目を覚ます前
11/13

あなたは、生きている



 とても冷たい手だった。だが、どこか懐かしくて、どんな幸せよりも心地よいものだった。



 ドクン、ドクンと私の心臓の鼓動が、女の子の手を通して聴こえる。

 女の子は、優しい福音に耳を寄せるように、しばらく幸せそうな表情で目を閉じていた。

 白いカーテンが、二人をふわりと包み込む。



「……うん、大丈夫。あなたはちゃんと、生きてる。だから、ちゃあんと、胸に刻まれているわ」



 開かれた目。

 優しいけれど、どこか憂いをたたえた目。

 もう二度と、見ることのない目。



 それが、私が最後に見た蒼だった。

 既に、私の景色からは色が失われ始めている。



 空、海。全てが、向こうの街と同じ色を残して、砂のように消え去って行く。

 これは嘘なのか。それとも、夢なのか。

 枯れることのない、蒼。



 そう、何も変わらない。

 ここから跡形もなく消え去るのは、私だけなのだから。


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