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あなたは幸運
女の子と別れる時、私はちょっぴり泣きそうになった。
だが、相手がずっとにっこりと笑っているものだから、私だけ涙を流すともっと笑われそうな気がする。
だから私は、この子の前では泣かないことにした。
だが、堪らなく悲しくなって俯く。
もう、この人とは二度と会えないだなんて……。
突然の別れは寂しいものだけれど、わかっている別れは悲しすぎる。
「やっぱり嫌だよ……二度と会うことがないって、知っちゃったんだもん……」
びしょぬれの体が、すでに蒼く光を受け始めていた。
この子は、ずっと私のことを覚えていてくれるだろうか。
一生に一度、たった一瞬時間を共有しただけの私なんかを、覚えてくれるのだろうか。
「大丈夫!」
予想以上に明るい口調に、私は顔を上げた。
女の子はにっこりして、私の心臓の上に優しく手を当てる。




