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くじ引き転生  作者: ブラックシュミット
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「うっ…………ここは…………?」

俺はゆっくりと目を開けた。

起きたばかりだからか、視界がぼやける。

「確か…………女の子に変態と間違われて、魔法で吹き飛ばされたんだよな…………」

そこまでは覚えてる。

だがここはどこだ?

感触からして下が地面じゃなくて、いつの間にか石の床になってるし、おまけに暗い。

とりあえず、立ち上がろうか…………よいしょっと。

ジャラ

「ん?何だ今の音は?」

嫌な予感がしつつ、音がした足の方に視線を向けるとそこには

鎖があった。

「………………何でだ!?」

一瞬、思考が停止したがすぐに我に返ってガチャガチャと鎖を引っ張ったり、押したりする。

が、鎖はびくともしない。

「くそ、誰か!

誰か助けてください!

ヘルプミー!!」

「うるさいわよ!」

聞き覚えのある怒声が聞こえ、そちらに視線を向けるとさっきの女の子が階段を降りてきていた。

「おい!何だこの鎖はっ!?

今すぐ外せ!」

「ふん、頼むのならそれ相応の態度があるんじゃない?」

「外してくださいお願いします!」

「迷わず土下座!?

プライドないの!?」

「プライドだと………?

そんなもの、犬にでも食わしてしまえ!」

「か、変わった人ね…………」

女の子が若干、呆れた目で俺を見ている。

「で、外してくださるのでしょうか?」

「嫌よ」

嫌、だと…………?

「だってあなたみたいな変態を野放しにしたくないもの」

「いや、待て!

それは誤解で!」

俺が慌てて弁明しようとするも、女の子は背を向けて階段に手をかける。

「まあ、何か悪党って感じしないし、憲兵に突き出すのは今はやめておいてあげるわ」

少しだけ立ち止まってそう言うと、女の子は階段を上った。

「マジかよ…………くそ、何で俺がこんな目に……………!」

普通に暮らしてただけなのに、くじ引きとかいう訳の分からん理由で転生させられて、転生直後に化け物に喰われそうになり、魔法少女が登場して、魔法を食らって気を失って、気がついたら鎖で繋がれてるときた。

短期間で不運が続きすぎだろ、泣けてくるぜ。

「あー…………そういえばチート能力をって話もあったなー…………」

クレアが言っていたことを思い出す。

まあ、クレアが能力の大半を封じられてるみたいだから、俺にそんな能力が備わってる訳ないよな。

……………………。

「暇だ……………」

何で誰も来ないんだ?

クレア辺りなら様子を見に来てもおかしくないんだが、っていうか来なきゃおかしいだろ元凶!

「というか腹減ったな…………」

そこまで険悪な雰囲気じゃなかったし、流石に飯抜きはないと思うんだが。

しょうがない、この世界のことについて現時点で分かることを整理でもしておくか。

まず、化け物がいる。

ゲームとかで言うモンスターとかその類のが。

で、魔法使いもいる。

特殊な職業なのか、一般的なものなのかは全然分からないが。

「…………これぐらいか」

まだ来て間もないから、あまり時間を取られることはなかったな。

………………

「待つか…………」

―――――――――――

「何で来ねえんだよおおおぉぉぉぉ!!」

結果、来ませんでした。

「ってか、マジ腹減った!

ヘルプミー!!今度はマジで命の危機!」

俺は暴れながら叫ぶが、女の子はおろかクレアも出てくる気配はない。

腹が減ってるため、それも長続きせずすぐに俺は静かになった。

「くそ…………騙された…………。

憲兵に突き出さずに、このまま餓死させる気だったとは………」

百歩譲って飯なしとしても水すらないのは、本当にヤバイ。

「まさか、ラノベとかでよくある『美少女に助けられる』が死亡フラグだったなんてな…………」

ああ…………ヤバイ…………意識が…………

トントン

なんだ…………?階段を下りる音が…………

ひょこ

「あ、生きてる?」

階段から下りてきて顔を出したのは、あの女の子だった。

「生きてる?じゃねえだろ!!

俺を餓死させる気か!?」

俺は女の子の顔を見た瞬間、思わず怒鳴っていた。

女の子は俺の剣幕にばつが悪そうな顔をして

「ごめんごめん。

ちょっと………その…………あなたのこと、忘れてた☆」

と舌をちろっと出して言った。

ふむ、忘れてたか……………………

「忘れてたぁっ!?」

「ごめんって。

だからそんな怖い顔しないでよ」

「ふざけんな!

こちとらこのまま餓死するのかと心配してたんだぞ!!」

「ふん、一日食事抜いたぐらいで死にはしないわよ、大袈裟ね」

女の子はやれやれと首を振った。

こいつ…………!

「それより、あの子から事情を聞いたわ。

どうやら私の勘違いだったようね、ごめんなさい」

「ふざけんな誰が許すか許されたかったらこの鎖を外して土下座して謝れ」

「……………ライトニングウィップ(ぼそっ)」

バチィッ!

「ぎゃあああああ!!

鞭の鋭い痛みと、電撃によるショックが絶妙な痛みを醸し出し痛い痛い痛い!

ごめんなさい!!

自分調子こきました!!」

「分かれば良いのよ」

女の子は満足したように言うと、電撃の鞭を消した。

というか謝られてたのは俺なのに…………いつの間にか俺が謝る側になってるし………。

「こほん。まあ、今回は私も少しは悪かったし………」

「少し…………いえ、何でもございませんですはい」

女の子が再び鞭を出そうとしたのを見て、言いかけた言葉を止める。

「それにクレアちゃんから事情は聞いたから、解放してあげるわ」

「え、マジで!?」

やった!やっと鎖から逃れられる!

「ただし―――あんたが変態的な行為をしそうになったら―――」

「また鎖に繋ぐんだろ?

しないから大丈―――」

「ミンチにしてその後、焼却するわ」

「想像の斜め上をいく回答が出た!」

こええ…………でも、まあやらなきゃ良いだけの話だよな。

当然、常識ある日本人である俺はそんなことをする気は毛頭ない。

「話しは終わったし、さっさとこんなカビ臭い所出るわよ。

それにあんたを迎えに行ったせいで、まだご飯食べてないし」

女の子はそう言うと階段を登っていった。

それを言うと俺も食ってないんだが…………まあ良いや。

女の子の後に続いて階段を登ると、まず見えたのは森の景色で、少し離れた所に森には似つかわしくないキレイな二階建ての木造の家があり、その近くに俺が鎖で繋がられていた倉庫のようなものがある、という配置になってるらしい。

「何見てるのよ?

早くこっち来なさいよ」

声に振り向くと、女の子が木造の家の前で手招きしていた。

「え?入って良いのか?」

「空腹のまま魔物がうろつく森の中を歩きたいなら、別に来なくても良いけど?」

「お邪魔しまーす!!」

女の子がドアを閉めようとしたので、慌てて中に入る。

中はこざっぱりしていて、必要最低限の物だけ置いた、という感じだ。

まあそれは良いんだが…………真ん中にあるテーブルに突っ伏して寝てるやつ、すっごい見覚えがあるんだが。

「すー…………すー…………うーん、もう食べれません………」

「ベタな寝言だなおいっ!?

つーか起きろこのボケ神がああああぁぁぁ!!」

俺はクレアの頬をつねりあげる。

「いひゃひゃひゃ!?

や、やめてくらふぁい!!

いふぁいです!!」

「うるせえ!人が大変な目にあってる時に、ぐーすか惰眠貪ってた奴にかける慈悲はねえ!!」

目に涙を浮かべるクレアを見て、少し溜飲が下がったので手を頬から離す。

「うう………酷い目にあいました…………」

「そりゃこっちの台詞だ。

俺なんか無理矢理転生させられて、いきなりモンスター出てきて、鎖巻きだぞ」

…………言ってて悲しくなってきた。

「ん?転生って何よ?」

俺の言葉に女の子が不思議そうな顔をする。

しまった、不用意だったか。

転生がこの世界でどういう認識なのかは知らないが、わざわざ波風を立てる必要もない、何とかして誤魔化そう。

「い、いや、何でもない。

それより飯はまだか?」

「はいはい、もうすぐ持ってくるわよ」

露骨すぎたか、と思ったが女の子はあっさり台所と思わしき所に歩いていった。

「ふう…………何とか誤魔化せたか」

俺が安堵していると、クレアが何やら難しい顔をしていた。

「おい、どうしたんだ?」

「いえ…………何だか今の間に引っ掛かる何かがあったような気がしまして………」

「?上手く誤魔化せたと思うんだが」

「いえ…………そうではなくてもっと根本的なことのような気がします。

例えばこの世界(作品)の設定に関わるような………」

「ちょ、おまっ作品、設定って。

メタな発言するな」

「私は神だから良いのです!」

「……………ヘボ神の間違いだろ」

「むっ!」

クレアが頬を膨らませるが事実だからしょうがない。

「お待たせ〜」

クレアとそんな話をしていると女の子が鍋を持って戻ってきた。

「お、来たか。

待ってたぜ」

俺は鍋から香る匂いに、今にも涎を垂らさんばかりに舌舐めずりした。

中身は野菜スープ………だろう多分。

クレアも考えるのを止め、鍋に視線が釘付けになる。

「じゃ、いただきまーす!」

「いただきます!」

野菜スープを口に運ぶと、素朴だが、煮込まれてよく味が出てる。

腹が減ってたので、このあっさりさが丁度良い。

瞬く間に鍋一杯を食い尽くしてしまった。

「はー…………腹一杯だ…………」

俺が至福の表情を浮かべる傍ら、クレアが微妙に不満そうな顔をしていた。

…………まさか、俺の五倍はお代わりしといて足りないんじゃないだろうな。

クレアの意外な大食い属性に戦慄していると、女の子が鍋を片付けて戻ってきた。

「お腹も膨れたし………そろそろ本題に入りましょ」

「本題?」

俺が怪訝な顔をすると、女の子はイラッとした顔をする。

「そうよ、あんたが変態でないのは分かったわ。

それじゃあどうしてあんな所にいたのよ」

……………やっぱり来たか、この質問。

しかし!予想してた故に対応策はすでに練っている!

「実は…………何であそこにいたのか覚えてないんだ。

それどころか、自分の名前とかは覚えているが、この世界のことはさっぱり……………」

「えっ!?それってまさか…………記憶喪失ってこと!?」

「?何言ってるんですか?

記憶喪失も何も私達は元からこの世界の住人ではもがっ!!」

余計なことを言いかけたクレアの口を塞ぐ。

「そう………あなた達記憶喪失だったのね………」

「そうそう。だから、この世界のこと色々教えてくれると助かる」

俺がそう言うと、女の子は頷いた。

「っとその前に、自己紹介がまだだったな。

俺の名前は神風連夜。

17歳だ。

こっちはクレア、歳は知らん」

「カミカゼ………レンヤ…………レンヤね。

私はアルティア・クーレンカ、17歳、17歳だからね!

アルティアで良いわよ」

アルティアはそう言うと、ほぼ平らに近い胸を張った。

うーむ、しかし17歳か…………どう贔屓目に見ても小学4年生までにしか見えないんだが。

「…………何か失礼なこと考えてない?」

「め、滅相もない!

そ、それより、自己紹介も済んだ所で、そろそろこの世界のことについて教えてくれないか?」

アルティアは俺を睨みつつも口を開く―――その時だった。

「グオオオオォォォォ!!」

突然、でかい重低音が鳴り響く。

「な、何だぁ!?」

「もが!?もがががが!?」

あ、クレアの口を塞いだままだったの忘れてた。

「この声は………!

あんた達!外に出るんじゃないわよ!!」

アルティアはそう叫ぶと、外に飛び出していった。

「ど、どうするんです!?」

解放されたクレアがアルティアの消えた方と俺を見ておろおろしている。

内心は行きたくない。

ラノベや、ゲームで先人達が教えてくれた展開だと、十中八九、ロクでもない目に会う。

だが…………

俺の脳裏にアルティアの顔が浮かんだ。

直後に鎖巻きにされたとはいえ、命の恩人だ。

何もせずに見殺しにしたってのは…………流石の俺でも気分が悪い。

それに俺に戦う力はないが、一人より二人の方が「あの、私もいるんですけど」生き残る確率は高くなるだろう。

「……………行くぞ!!」

迷った末、俺は外に飛び出した。

そこにいたのは―――

――――END――――

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