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くじ引き転生  作者: ブラックシュミット
15/32

11

「な、何がうわっ!?掃除だ!ひえっ!?騙されたああああああ!!」

俺は迫り来る骸骨の剣をかわしながら叫ぶ。

「いやあああ!来ないで!ファイアボール!ファイアボール!」

俺の近くではアルティアがそう叫びながら魔法を連発し、骸骨を次々と炭へと変えていた。

「アルティアーー!

俺も助けてくれーーー!」

「ちょっと!?こっち来ないでよ!」

「連夜ーーー!

助けてくださいーーー!」

「うわっ!?おま、こっち来んな!」

何故か骸骨達は、よりによって戦闘能力のない俺とクレアを中心に追いかけ回していた。

アルティアは怖いせいか、魔法にいつもの勢いがないため、骸骨達の数は減らず、むしろどんどん増えていくのだった。

「み、ミリィ!何とかしてくれ!」

「……………泥舟に乗ったつもりで任せて。

反転、方向」

ミリィが先頭にいた骸骨に触れると、その骸骨は回れ右をし、後ろの骸骨に突っ込む。

ガシャガシャーンと骨同士がぶつかり合う音と共に、骸骨達は霧のように溶けて消えていった。

「はー…………はー…………すまんミリィ、助かった………」

「……………気にしなくて良い」

「わ、私も助けてくださいーーーー!」

あ、忘れてた。

追いかけられつつも必死に逃げ回っていたクレアだが、ついに周りを骸骨達に取り囲まれてしまった。

「クレア!」

「れ、連夜!助けーー」

「大丈夫だ!お前なら切り抜けられるって信じてるからな!

そこでなるべく敵を引き付けとけよ!」

「裏切り者ーーーー!?」

幸い、あの剣で斬れることはないだろう、まあ多少痛いかもしれんが。

「………………鬼」

「俺だって見捨てたくて見捨てたんじゃねえよ。

ただ、今までに受けた怨みを晴らしとこうとか思っただけというか」

思えばあいつには散々、迷惑かけられたよな…………。

もう会えないかと思うと一抹の寂しさもなくもないような気がしなくもない。

「勝手に殺さないでください……………!!」

クレアとの思い出を振り返っていると、そんな怨念に満ちた声が聞こえ後ろを振り向く。

そこには涙目で服が少しボロボロになったクレアと、太刀を抜いているレイアがいた。

「お、生きてたか」

「生きてたか、じゃないですよ連夜のバカ!アホ!えーと……………」

「おい、お前まさか罵倒のレパートリーそれしかないのか?」

俺が哀れみを込めた視線を送ると、クレアは慌てた様子で反論してきた。

「そ、そんな訳ないじゃないですか!

他にいくらでも………いくら、でも……………」

「分かった、もう良い。

すまん、俺が悪かった、この通りだ」

「そんな本気で謝られると惨めさが増すじゃないですか!」

俺の本気の謝罪にクレアはまた涙目でそう言い、端っこに行って落ち込み始めた。

俺は常々思ってんだが、こいつ本当に神龍で、俺の元の世界の管理者だったのか?

神様を信仰している人が見たら卒倒しそうなんだが。

もし元の世界に戻ったときには、真っ先にこいつと誰かマトモな管理者に変えてほしい。

「ここはあらかた片付いたわね………ってクレアちゃん、そんな所でうずくまってどうしたの?」

「私のことは良いので放っておいてください……………」

「ってかアルティア騙しやがったな!

やるのはここの掃除じゃなかったのか!?」

「ええ、そうよ。

ここの魔物掃除・・・・を、定期的に皆でしてるの。

古い墓地だからかこの手の下級モンスターが、周期的に湧いちゃって…………」

「よし、帰る」

俺はアルティアの言葉を遮り、出口に向かって回れ右をした。

「ちょっと、どこに行くのよ?」

「入り口でこんだけ出てくるんだ。

この先、もっと出てきたら対処しきれなくなるかもしれないだろ?

そうなったら痛い思いするかもしれないからな、まだ帰れる内に帰る」

「だ、ダメよ!

一応、これも依頼なんだから!

途中で放棄なんて許されないわよ!」

ただでさえ古い墓地なんて不吉な予感しかしないのに、そこにスケルトンまで出てきたんだ。

某ゾンーー腐った方々が出てくるようなショッキングな絵面をリアルで見せられた日には、俺の惰弱な精神は一瞬で崩壊するだろう。

「あーあー、聞こえなーい。

ほら、クレアもそんな隅っこでうずくまってないで立て。

さっさとこの陰気臭い所から出ーー」

「あ」

「ん?おい、クレア。

なに呆けた顔で俺の後ろをーー」

嫌な予感がしつつ振り返ると、そこには生き残りがいたのかスケルトンが、剣を振りかざしていてーー

ゴッ

そんな音と共に俺の頭が揺さぶられ、俺はそのまま倒れ意識を失った。

ーーーーーーーーーーーーー

次に目覚めた時、俺はさっきまでとは違う、入り口が見えない場所にいた。

「って!人が意識失ってる間に、なに進んでるんだよっ!?」

「だってあそこに放って置いても行けないじゃない?」

「この間は放って置いてたくせに…………」

俺はアルティアを睨みつつ言うが、ここまで来たらもう帰り道も分からないので付いていくしかない。

「私だって早く帰りたいんだから、さっさと終わらせるわよ」

「そういえば、他の奴等は?」

「周辺の魔物を倒してるわ。

私はちょっと魔法を使いすぎちゃったから休憩。

しばらくは動けないわね」

ってことは今、アルティアと二人きりか…………しかも動けないと…………ほうほう…………

「そういえば、お前大丈夫なのか?」

「何がよ?」

「いや、前暗い森でメチャクチャ怖がってたじゃんか」

「こ、怖がってないわよ!」

「あれー?涙目で「レンヤぁ…………助けてくださいお願いしますぅ」って言ってたのは誰だっけな?」

「い、言ってないわよそんなこと!

あんた、調子に乗ってたら痛い目にーー」

「会いたくないから皆のところに行ってこようかな、じゃそゆことで」

「えっ!?えっ!?」

俺はそう言い、立ち上がってアルティアから離れようとする。

「ちょ、ちょっと待って!」

「ん?なんだ?

お前も一緒にーーああ!

今動けないんだったよなぁ!

すまんすまん!」

「…………あんた、分かっててわざとやってるでしょ…………!!」

「何のことやら。

アルティアちゃんは、この暗い場所で一人きりになっても怖くないんだよなぁ?

なら何の問題もないじゃないか!」

「うう……………!!」

「それとも怖いのか?」

「こ、こわ…………く………」

「聞こえないな。

そろそろ行こっかなー」

「う…………ぐす、こわ………い………」

「もうちょいはっきり言ってくれ」

「ひ、一人じゃ怖いから一緒にいて…………お願い…………」

ふ、勝った。

何か勝利と共に主人公として大切なものを失った気がするが、まあ良い、今の俺は気分が良いからな。

前と同じく少女らしく震えながら、すがるような目で俺を見るアルティアにしょうがないといった感じで返事をしようとしてーーー

ザリッと背後から誰かの足音が聞こえてきた。

その音を聞いてクレア達が戻ってきたかとも思ったが、急に猛烈に嫌な予感を覚える。

「……………何か前にもこんなパターンが」

そう呟きつつ振り向くとーーー後ろには大量の骸骨で埋め尽くされていた。

「何で嫌な予感ばっかり当たるんだよおおおおおおお!?」

「れ、レンヤ?きゃっ!?」

俺はアルティアを抱えると骸骨達から離れるべく猛ダッシュを開始した。

「ど、どうしたの!?

はっ、ま、まさかここの幽霊に取りつかれて…………!!」

「違う!だからその詠唱をやめろ!!

後ろを後ろを!」

「後ろ…………?」

アルティアは怪訝な顔で振り向き、すぐに顔を前に戻して震える声で叫ぶ。

「は、走って!早く早く!」

「落としてやろうかこの野郎!

ってか、いつもみたいに魔法か何かで吹き飛ばしてくれよ!」

「だ、ダメよ!

一応、価値のある遺跡だし、威力のある魔法を使ったら崩れちゃうかもしれないわよ!?」

どうやらアルティアがいつもより、消極的だったのはそういう理由だったらしい。

ってかそろそろいくら軽いとは言え、人を抱えて走ってる俺の体力が本当にヤバイ。

どうすれば…………

「あ、連夜。

さっき大きな声が聞こえてましたけど何がーー」

「よし、お前ら!

ここは任せたぞ!」

俺はちょうど俺たちに合流しに来たミリィとクレアにそう声をかけその場を離れる。

「え?え?

な、何でしょうかあんなに慌てて…………というかアルティアさんが抱えられてて」

「………………あれ見ないで。

…………目をそらして」

そんな会話が聞こえた後、後ろから二人分の走る音が追加された。

「お前ら!あいつら少しで良いから引き付けとけよ!」

「むむむ無理ですよ!」

「……………戦略的撤退」

言い争いながらも必死に走るが、骸骨達は徐々に距離を縮めてくる。

このままでは遠からず追いつかれてしまうだろう。

「あ、クレア殿。

こちらは終りまーーど、どうしたのですか!?」

その時、前方からレイアが驚いた声をあげながらやって来た。

「れ、レイアさん!

レイアさんも早く逃げてください!」

「いえ、それには及びませんよ」

クレアの呼び掛けに応じず、レイアは太刀を抜いて迫り来る骸骨達に構える。

「シャーフィンド流剣技、風の型……………一の太刀“疾風”」

そう呟くとフッとレイアの姿がかき消える。

その直後、後ろからガシャガシャーン!と、大きな音が響いてきた。

振り向くと、骸骨達は地に伏しており、その先にはレイアが太刀を抜いたまま立っていた。

「い、今のお前がやったのか?」

「ああ、そうだが」

「あ、あの数の骸骨達をどうやって倒したのですか?」

「何と言われても…………これで、ですが」

レイアは自分が持っている太刀を掲げて見せた。

「いやいや、剣技でどうにかなるもんなのか?」

「我がシャーフィンド流では火、水、風、岩の四つの教えがある。

その中の風とは即ち速さ、速さを突き詰めればこのぐらいは造作もないことだ」

レイアは簡単に言うが、あれだけの数の敵を、瞬く間に斬ると言うのがどれだけ人間離れしてるかは言うまでもない。

「それよりクレア殿。

先程から戦っていないようですが、一体どうされたのです?」

「うっ!

いえ、その……………」

クレアは痛いところを突かれ、しどろもどろに返事をする。

ヤバイ、あいつ一人じゃ絶対ボロが出る、俺がフォローしねえと!

「いや、クレアはほら、アルティアと一緒で強力な魔法しか使えねえんだよ。

ここを傷つけてもマズイから使ってないだけだ」

「しかし、クレア殿の動きはその…………言いにくいのですが戦闘経験のある者の動きに見えないと言いますか………」

ぐっ!?流石はSSランクの戦士、痛いところを突いてくる。

「それはお前、戦士と魔法使いの動きを比べたらそう見えるだろうよ。

な、アルティア!」

「え、ええ。

まあ私達も直接戦闘は苦手だし……………火力で敵を近づけずに倒すのが魔法使いの基本的な戦い方だから」

「そういうことだ」

「そ、そうですよね。

すみませんクレア殿、疑ってしまって。

かくなる上はこの私、腹を裂いてお詫びを………!」

「や、止めてください!

全く気にしてませんから大丈夫ですから!」

太刀を自分の腹に向けようとするレイアをクレアとアルティアが二人がかりで止めるのを見ながら、何とか誤魔化せたと胸を撫で下ろす。

「……………バレなくて残念」

「それは本心なのか、それとも逆なのかどっちだ?」

「…………でも、いつかはバレる」

「…………そうだな」

ミリィの指摘もまた鋭い。

いくら極力、クエストに出ないといっても、不意の事態はあり得る。

この間みたいに龍みたいなやつが街へ来たら、強力な戦力になってるクレアを出さないわけがないし、権力者等がクレアを名指しで指名してきたら、俺たちに断ることは難しい、アルティアやカティさん達に迷惑がかかるかもしれないし。

だからその前に決着をつけるべき問題ではあるのだろう、それは分かってるのだが…………一歩間違えると大惨事大戦になりそうなので、迂闊に言うわけにもいかない、悩ましいところだ。

考え事をしていると、どうにかレイアを止めたようで、疲れた顔をしているクレア達が俺達の方へ戻ってきた。

「お疲れー」

「お疲れ、じゃないわよ………あんたも止めなさいよ」

「そうですよ、自分だけ逃げてズルいですよ」

「痛いのは嫌だーーいや、二人だけでも手が足りるかと思ってな」

「ほんと、清々しいほど最低ねあんた」

「はっはっはっ、そう褒めるな」

「褒めてませんよ…………」

「そんなことより、あとどのぐらいでこれ終わるんだ?

そろそろ腹も減ってきたし早めに帰りたいんだが」

「あと地下の広間だけよ。

早く帰りたいのには私も同感ね。

こんなこわーーかび臭いところ」

「こわ?」

「な、何でもないわよ!」

慌てて取り繕うアルティア、生憎バレバレだけどな。

まあさっき散々弄ったし、皆の前で言うのも可哀想だからやめてあげよう、俺って何て紳士なんうあっちゃあ!?

「バカ野郎!

いきなり火の玉放ってくる奴があるか!」

「あんたのその調子に乗った顔を見てたらつい」

「ちょ、調子に乗ってねえし」

何で俺の考えてることはことごとく悟られるんだ?

「あと一つですか…………このままいけば何事もなく終わりそうですね」

「おい、露骨にフラグ立てんじゃねえよ」

「?」

「フラグってなによ?」

「いや、ジンクスというか何というか…………特定の言葉を言うと特定の状況が起きる可能性が高くなることだ」

「何言ってるのよ、そんな言葉ぐらいで」

「クレア殿に因縁をつけないでもらいたい」

アルティアとレイアは俺を馬鹿を見るような目で見るが、分かってない、こいつらは分かってない。

神に等しい力を持つフラグの力というものを全く分かってない。

「何してるの?置いていくわよー」

「あ、ああ。今行く」

俺はどうかフラグというものがこの世界に存在しませんように、と祈りつつアルティア達と地下へ降りていく。

地下の広間は広く、中央に棺があるだけで、他には何も見えない。

「アレが昔の王様の墓か?」

「ええそうよ。

中には今も王様の遺体が…………こ、怖くないわよ!」

「俺まだ何も言ってないんだが」

そう言いつつ辺りを見回すも、さっきまでいた骸骨達の影も形もない。

「ここが最後だよな?」

「ええ、そうよ。

いつもならここで、大量のモンスターが現れるんだけど…………もしかして、今回は全部上に行ってたのかも。

それであんなに多かったんだわ」

一人で納得したように頷くアルティア。

「それじゃ、掃除は終りってことで良いんだな?」

「ええ、皆お疲れ様」

アルティアの言葉に密かに胸を撫で下ろす。

バカ神がフラグ立てるからどうなるかと思ったが、どうやら無事に帰れそうだーー

「………お主らか。

さっきから騒がしいのは」

「誰だっ!?」

いきなり聞こえてきた声にレイアがいち早く反応し、太刀を抜いて構える。

「物騒な奴じゃな。

まだ何もする気はないというのに」

そう言いながら暗闇から姿を現したのは、見た目アルティアと変わらないぐらいの赤い髪の女の子だった。

体には明らかに合ってない黒いブカブカのマントを羽織っている。

「またお子様かよ…………」

「今そこツッコムところですか?」

「すまん、つい。

どうも俺の周りにはお子様ばかり集まるからな」

「ちょっと、それ聞き捨てならないわよ」

「鏡見て言え」

「……………私だって、立派な大人の少女」

「お前は立派なお子様だろうが」

「私もあなたより遥かに歳上なんですよ!」

「うん、お前は見た目もだが、精神を歳相応に成長させてから反論しような」

「何で私だけそんな諭すような声で言うんですか!?」

気づいてないのか…………可哀想に。

「その「気づいてないのか、可哀想に」みたいなことを思ってる目もやめてください!」

「お前、いつからテレパシーに目覚めたんだ?」

「嘘でも違うって言ってくださいよ!」

「あー…………お主ら、余を無視して漫才を始めないでくれるかのう」

赤い髪の女の子は、呆れたような視線を俺達に向けている。

「あ、悪い。

でも君、何でこんなところにいるんだ?

お子様が来るようなところじゃないぞ?」

「重ね重ね無礼な男じゃな。

それに余を人間の子供と一緒にするでない」

そう言うと女の子はバサッ!とマントを翻して高らかに言った。

「余こそはヴァランドール家の現当主、レフラミール・ヴァランドールである!」

「…………だそうだが、知ってるか?」

「知らないわね」

「……………私も」

「私も分かりません」

俺達の返答に赤髪の少女は明らかに不満げな顔をした。

「なんじゃと?

ヴァランドール家と言えば、伯爵の位を持つ由緒ある吸血鬼の一族というのに………」

「だから知らーーえ?

今、なんつった?」

聞き間違いかと思い、もう一回聞き返すと女の子は不機嫌な顔のまま、もう一回繰り返した。

「じゃからヴァランドール家は、伯爵の位を持つ由緒正しい吸血鬼一族じゃ」

「きゅ、吸血鬼!?」

アルティアが叫び、レイアが即座に臨戦態勢を取る。

その物々しい雰囲気にこの女の子は、思った以上にヤバイ存在だというのを窺わせる。

「ちょ、アルティア?

この子、そんなにヤバイのか?」

「ヤバイも何も!

吸血鬼と言えば、龍と同じ上位存在!

血を吸うために人間を襲う分、龍より危険な存在よ!」

「…………っ!!」

それを聞いて、慌てて女の子から距離を取る。

まさかこんな、アルティアと見た目変わらないような子がそんな危険な存在だなんて…………!

「全く、龍も吸血鬼も、普通なら一生に一度、出会うか出会わないかなのに!

レンヤが呼び寄せてるんじゃないでしょうね?」

「いや、そんなことはない…………と、思う…………」

自分の運のステータスを思い出して、言葉が尻すぼみになっていく。

「ふっふっふっ、ようやく余の偉大さが分かったか。

本来なら貴様ら、人間が口を聞こうと思っても聞けぬ程偉いのじゃぞ。

しかし、お主ら旨そうじゃのう………。

お主は、飲みごたえがありそうじゃし、お主は極上の味がしそうじゃ。

お主は変わった味じゃろうし…………お主は、まあ飲んだら身体に悪そうじゃがそれも変わった味で楽しめそうじゃしのう」

女の子はレイア、アルティア、ミリィ、クレアの順に見て舌なめずりをした。

それぞれ恐怖と不快を混ぜた表情をする中、俺はひとつ気になることがあった。

「あー、すまん。

ちょっと良いか?」

「なんじゃ」

「今、俺だけスルーだったような気がするんだが」

「お主のは薄味そうじゃ、いらん」

バッサリと言われて若干傷つくが、それより

「つまり俺はいてもいなくても良いってことだよな?」

「うむ、どうでも良い」

「じゃ、そゆことで!!」

「逃が(さない)(さないわよ)(しませんよ)(さんぞ)」

爽やかに手を振りながら出口へ走ろうとすると、女どもにガッシリと捕まってしまった。

「おい、離せ!

俺はお呼びじゃないようだ、だからとっとと帰るから離せ!」

「あんたほんと、清々しいほど外道ね!

自分だけ助かろうとしても無駄よ!」

「ええい、離せ!

俺がいてもどうせ狙われるのはお前らだけだぞ!

だから万が一にでも余波で死なないように逃げるから離せこら!」

「仲間を見捨てて逃げるとは見下げ果てたぞ!

せめて囮になって死ぬが良い!」

「馬鹿野郎、誰がんなことするか!」

「ほう?貴様、逃げぬのか。

ならばその勇気に免じて、せめて苦しまずに殺してやろう。

他は死ぬまで余の食糧となってもらおう」

どうにか振りほどこうともがいていると、吸血鬼は逃げない、と捉えたようでターゲットを俺にも移した。

パチンと吸血鬼が指を鳴らすと、どこからともなく現れた骸骨たちが、唯一の出口を塞いだ。

「なっ…………どこから来たんだこいつら!?」

「余は夜の王、この程度の下級モンスターを操るなど、容易にできる」

「ともかくこれで一蓮托生ですね」

「このゲス野郎ども!

お前らは人間のクズだ!」

「どちらにしろもう逃げるのは不可能だ。

だから大人しく、腹を括って囮になれ」

「だからやんねえよ!」

「ええい、だから余を無視して漫才をするな」

吸血鬼は不機嫌な顔で俺たちを睨む。

吸血鬼は仕切り直すように咳払いをし、改めて口上を言った。

「幾千の魂従える夜の王、レフラミール・ヴァランドールがお主らの相手をしよう」

「いや、相手しなくて良いんで帰してください」

俺は切実に言うが、テンションが上がったのか、吸血鬼の耳には届いてないようだ。

吸血鬼は楽しそうな笑みを浮かべながら、マントに手を入れ、血のように紅い、長さが大人程もある長槍を取り出した。

…………どっから出したんだ?

明らかにあのマントから取り出せる大きさではないのだが、このシリアスな雰囲気の中、ツッコム勇気がなかったので、黙っておく。

「さあ、抵抗するも良し、大人しく降参するも良し、どちらにせよ余をせいぜい楽しませてくれよ?」

「っ!来るぞっ!!」

レイアが叫ぶのとほぼ同時に、吸血鬼が槍を手に、俺達に猛スピードで向かって来たーーーーー。

ーーーーーENDーーーーー


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