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くじ引き転生  作者: ブラックシュミット
12/32

9 裏

「け、結局訳の分からないまま、森にまで来てしまった

…………」

「もう、しっかりしてよねー!

クロミネがあんなに方向音痴だとは思わなかったよ」

「いや、聞いた相手が悪かったんだよ…………」

なんせ「お兄さん、情報が欲しいなら………コレ(金)でしょ………あ、今なら割引セールで待ってくだせえー!」とか「ああ………お腹が空いて思い出せません。あそこでご飯を奢ってくれたらああ待って!?」等と言うような輩しかいなかったからな………。

「ああ、もう!

案内の看板ぐらい置いときなさいよ!」

ウサリィが怒って無茶なことを言うのに思わず苦笑いする。

「そうだ。戦闘をしているのならその音や振動で探れるかも………」

「え、そんなことできるの!?」

「うん、ちょっと静かにしててね」

僕はウサリィにそう言い、剣を突き立て耳を澄ます。

集中すると剣に微弱な振動が、耳にズウンッと大きな物が動いてるような音が聞こえてきた。

「方角は…………あっちか」

僕は剣を抜き、音が聞こえてきた方へ駆け出す。

「わわっ、き、聞こえたの?」

「うん、たぶんこっちのはず」

さっき聞こえてきた音を頼りに森を進むと湖に出た。

そして

「あ、あれが龍…………?

私、初めて見た………」

湖のちょうど反対側に赤い鱗を持つ龍、それに大人数の人がいた。

「あれが討伐隊かな?」

「多分ね。でも今のところ戦闘は………」

ホッとした次の瞬間

『舐めるなよ人間ごときが!』

いきなり怒声が聞こえたかと思うと、龍が体を仰け反らせて吼える。

「み、耳が…………キーン………って………」

「どうやら龍を怒らせたみたいだね」

何を言ったのか知らないが、龍は誰かに似てプライドの高い生き物だ。

人間に討伐するとか何とか言われて気に障ったのだろう。

「ああ、もう………面倒なことしてくれちゃって。

一度怒った龍を宥めるのは苦労するんだよな………」

僕はため息を吐きつつ、反対側に回り込もうとして

ウオオオーーーーーン………

と、何かの遠吠えが聞こえて足を止める。

「ウサリィ、今の聞こえた?」

「う、うん………何か嫌な感じがする………」

ウサリィが少し震える声で呟いた直後、ズンッ…………ズンッ………と、足音がこちらに近づきながら響いてくる。

「ウサリィ、君は隠れて!」

「う、うん。

クロミネ、気を付けて!」

僕は戦闘態勢を取りつつウサリィに離れるよう指示を出す。

ズンッ…………ズンッ!バキバキバキ!

ソレは森の木々を薙ぎ倒しながら現れた。

象のような巨大な体躯に、鋭い爪、それに特徴的なのは頭が三つあることだ。

「へ、ヘルケルベロス!?」

「知ってるのかウサリィ?」

「う、うん。

SS級指定の凶悪なモンスターで、S級の冒険者達が大規模なパーティーを組んで討伐するぐらい強いんだよ!

でも………こいつは普通、人の手が届かない森の奥地から出てこないはずなんだけど………」

「たぶん、龍の怒気に当てられたんだね」

よく見るとそのヘルケロベロスは、血走った目を落ち着きなくキョロキョロと周りに向けている。

龍の怒気によって恐怖で混乱して錯乱しているのだろう。

このままこいつが進むと、街の方へ行ってしまう。

恐らく、今の錯乱状態では目につくもの全て破壊し尽くしてしまうだろう。

ウサリィが言うように、危険なモンスターならそれでどれぐらいの被害が出るのかも分からない。

「…………ここで倒すしかない、か」

「ええっ!?

む、無理だよ!言ったでしょ!?

個人でどうにかなるモンスターじゃないんだよ!?」

「でも街に応援を呼びに言ってたら、こいつはその間に街に行くかもしれない。

ここで戦うしかない」

「で、でも!」

「それに…………もう気づかれたみたいだしね!」

僕は横っ飛びに転がって回避する。

その直後、ズウンッ!と三つ首犬の大木のような足が、さっきまで僕がいた場所を踏みつけていた。

「行くぞ!」

「く、クロミネ………?

目が………」

「後で説明する!」

ウサリィの言葉にそう答え、今はこいつを倒すのに集中する。

「雷龍の加護を!

風龍の加護を!」

剣に雷を纏わせ、風の力を身に纏う。

「はあっ!」

ヒュッ

そのまま、高速で敵に接近し、すれ違い様に斬りつける、と同時に纏われてる雷が斬りつけた場所を中心に走る。が

「効いてない………か、ちっ!」

斬撃と雷は厚い肉に阻まれ、薄皮一枚に留まっていた。

「ウオオオオオン!!」

攻撃されたことでさらに怒ったのか、ヘルケロベロスは三つ首を俺の方へと向けた。

「なんだ?」

俺がそう呟いた時、三つ首の一つがゴウ!と何と炎のブレスを放ってきた。

「何っ!?」

慌てて回避するも、ブレスに巻き込まれた木々は全て一瞬で灰になった。

龍のものより数段劣るものの、龍以外には使えないはずのブレスを使うとは…………SS級の名は伊達ではないということか。

しかし、攻撃は単調で今のところは避けるのに問題はない。

問題はあの厚い肉だ、アレをどうにかしない限りこいつは倒せない。

「一点に火力を集中させればどうにか………」

「クロミネ気を付けて!

一つだけじゃないよ!」

「なにっ!?」

ウサリィの警告とほぼ同時に、残る二つの首がそれぞれ同じ炎のブレスを放つ。

「ヘルケロベロスは三つの首からブレスを放てるんだよ!」

「そういうことは先に!うわっ!?言えっ!?」

ウサリィに文句を言いつつ、不意打ちのブレスをどうにか回避しきるが、ヘルケロベロスは続けて尾を横凪ぎに振るってきた。

「くっ………!」

ギインッ!!

どうにか剣で受け止めるも、尾の勢いを殺しきれずそのまま吹き飛ばされてしまう。

ドガッ!

「ぐっ!」

木に背中を強かに打ちつけ地面に転がる。

「クロミネ!」

「いたた…………くそ、こいつ滅茶苦茶強い…………!」

「だから個人でどうにかなるモンスターじゃないんだってば!」

攻撃は単調、目立った特殊能力も特にないが、基礎能力が高く、おまけに龍魔法で強化した剣も通さないあの分厚い肉に覆われた体、なるほどSS級と言うのも頷ける。

恐らく本来は攻撃を避けつつ、少しずつダメージを与えていくのだろう。

ウサリィの言う通り、個人で討伐しに行くモンスターではないのだ。

「だけど………ここで引くわけには………!」

あの街にまだクレアがいるかもしれないし、例え無関係な人だって襲われるのを黙って見ていることなんてできない。

アレを使うか…………でも、近くに龍がいるのにアレを使ったら…………

「ウオオオオン!」

ヘルケロベロスは攻撃の手を緩めず、それぞれの首からブレスを出しながら突撃してくる。

「なんて…………言ってる場合じゃないか!」

「クロミネ、避けてーー!」

ウサリィが叫ぶも、僕はそのまま炎に呑まれーー

「龍装騎兵!」

その炎を龍の爪になった左手で切り裂いた。

「え………クロミネ、その手………?」

「説明は後だ!

今はこいつを倒す!」

俺はウサリィにそう答え、ヘルケロベロスに走って接近する。

「ウオオン!」

ヘルケロベロスは接近してきた俺に豪腕を振り上げて叩きつけようとする。

「暴龍の加護を!」

それに対し、龍魔法で強化した左手で受け止める。

ズウウウウンッ!と衝撃が体を少し地面にめり込ませるが、叩きつけを受け止める。

それどころか、徐々に奴の腕を押し返していく。

「おおおお!」

気合いを込め一気に腕を押し返す。

「ウオオオン!?」

ヘルケロベロスはそう叫びながら後ろ向きに倒れる。

ズンッ!と巨体が地面を揺るがすのを感じながら、俺は地面を蹴って宙に飛び上がった。

「爆龍の加護を!

これで止めだ、閃華!」

宙を蹴り、落下スピードを乗せて剣を思いきりヘルケロベロスの腹に突き刺した。

直後

ドオオオオンッ!!と突き刺した場所を中心に爆発が起こり、ヘルケロベロスはその三つ首を項垂れさせた。

そして徐々にその体が薄くなり、小さな粒子のようになって最後にはかき消えた。

「やれやれ………何とか勝てたか」

そう呟く僕の腕はすでに人の手に戻っており、剣を背中に納める。

「ちょっとちょっとなになに!?なんなの今の!?

何でクロミネの手が龍の手に!?」

そして予想通りウサリィがこちらに詰めかからんばかりに興奮しながら、僕の方へ飛んできた。

「あー…………それなんだけど」

「もしかしてクロミネは龍だったの!?

眼が赤くなってたしちょっと口調も荒々しくなってたけど、それも今のに関係あるの!?」

「えーと、それは………」

「今思えば神龍様を人間が探してるなんておかしいと思ったんだよ!

しかも凄く馴れ馴れしいし!

どういう関係なの?

もしかしてクロミネも実は龍でそのクレアって人の旦那様とか!?」

「いやそれはない」

僕はウサリィのマシンガントークに気圧されつつもそこはハッキリと否定する。

「そ、そう…………」

僕の冷静なツッコミに少し落ち着いたのか、ウサリィの追求が途切れる。

「まあそれは後で話すから、今はとりあえずーーー」

「え、クロミネ!?」

僕はそう言いながらドサッと倒れ込む。

「クロミネ!クロミネどうしたの!?」

「ゴメン………さっきの反動が………来たみたい………後は、よろしく…………」

「ちょ、ちょっと!?

後はよろしくってどうすれば良いのよーーーーー!?」

ウサリィの叫び声を聞きながら、僕は意識を失ったのだった。

ーーーーーENDーーーーー


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