ショートショートII「〈意味〉に捧げる歌」
橙色の空気が僕と君の間を泳いだ。君は数学の本で、星を操っている。海辺の砂浜は原子であり、単子であり、窓がない。ヘブライ語のように青く、赤く泳いでいる。
君は透明で不透明な男のパリ。君は丸く四角い女の椅子。僕は美しいフランス語のひらがなで泳ぎ、君は中国語のルーン文字を染め上げる。
君は星々、月、そして夜露で飾り立てているからこそ真の姿。君の姿は大きくて小さい。僕は何も着ていないからこそ虚飾。僕の姿は小さくて大きい。
君と僕は完全に同じである。だからこそ僕と君は顔も形も性格もあらゆる点で全く違うのだ。君と僕が触れ合うと、激しくぶつかり合うと同時に互いの身体をするりと抜けてしまうのだ。