開花:1
やっとはじまりました。
ハヤトがゴウの鍛冶屋に招かれ、雇われた次の日の朝、ハヤトはゴウとカルシア、メイリアの三人と一緒に朝食を食べていた。そして食べ終わるとゴウが口を開いた。
「ハヤト君。今日はメイと一緒に役所に行って身分証を作ってきなさい。お金はこちらで出すから安心していいよ。やっぱり身分証がないと何かと不便だからね」
それから準備と言ってもハヤトはほとんど荷物は無いのでメイリアの準備待ちだ。そして二人は鍛冶屋を出て役所に向かった。
ハヤトの格好は昨日とは違い、黒いズボンにグレーのシャツを着ている。これはゴウのお下がりで若干だぼだぼ感がある。メイリアは青のワンピースで肩から鞄を下げている。ハヤトの腰にはウエストポーチが着けてあり、ハンターも着けているらしいので特に目立つ事がなかった。
町は西洋の感じで、レンガ造りの家が大半だ。そして3〜4階建てが主流らしく2階建てはあまり見当たらない。
道路は石材で綺麗に整備されており、道端も10mはあるだろう。
道行く人には、鎧を着た人や、行商人らしき人の姿も多く見受けられた。その中には、耳が猫のような人や、蜥蜴のような鱗が一部ある人もいたのにハヤトは内心では驚きとワクワクが入り雑じっていた。
ここは異世界なのだと改めて実感した瞬間でもあった。
無事に役所で手続きも済み。ハヤトはこれで身分証を手にいれたのだ。
終わったが二人は真っ直ぐ帰らずにでしょうかメイリアの案内で町を歩くのだった。まぁ案内といっても会話はほとんどなく、一言二言しか会話がなかった。
ちなみに服を買うのはカルシアから言われた事で、ハヤトの日用品などを買うようにとの事だった。
まずは服屋に入り4着程買った。お金はメイリアがカルシアから渡されていたらしいがハヤトは盗賊から盗ん…拝借した……拾ったお金で払った。お金の価値がまだわからないためメイリアに聞きながら払ったのだ。そしてこの王国のお金の価値はこんな感じだ。
紅金貨:100万E
白金金貨:50万E
金貨:10万E
銀貨:1万E
五千紙幣:5000E
千紙幣:1000E
百紙幣:100E
十紙幣:10E
製紙技術が安定しているのか一般的なお金は紙で出来ており、高額なお金は硬貨であった。
現在ハヤトが持っているお金は、金貨4枚、銀貨13枚で53万Eで、かなりの大金だった。
この王国で普通に生活するなら家族4人なら金貨2〜3枚ほどだ。
高ランクハンターになれば一度の依頼でそれぐらいは稼げるので、これもハンター希望者があとを絶たない理由にもなっている。
服の入った袋を片手にハヤトとメイリアは道具屋に向かった。
昨日は急遽だった為、来客用の食器などを使ったのだが、やはりハヤト専用の食器や箸が有る方がいいと買う事になった。
道具屋には色々な物が揃っている。箸や食器といった日用品からハンターが使うナイフや毛布、鍋やリュックタイプの鞄など様々だ。
その為店は大きく、一般人やハンターの姿が見受けられた。
ハヤト達、と言ってもメイリアはハヤトが箸などを選ぶのを後ろから見てるだけなのだが、そんな時、ある女性に声を掛けられた。
「あら、メイちゃんじゃない。久しぶりね。そちらの方とデートかしら?」
ハヤトが振り返るとメイリアの横に緑色の髪をした20代後半ぐらいの綺麗な女性が立っていた。
「……違う。ただの付き添い…」
「あらそうなの?でも珍しいわね。男性と一緒だなんて」
女性がハヤトに顔を向けた。
「初めまして。私はこの道具屋で働いてるマリリアよ。よれしくね。メイちゃんが付き添いってことはラタークさんの知り合いよね。あなたもハンターなの?」
「昨日からラタークさんの鍛冶屋でお世話になってます。ハヤト・ソガといいます。残念ながら僕はハンターではないですよ」
「あら?そうだったのね。ラタークさんの店はにはお世話になってるからまた近いうちに行くわね。その時に名前忘れてたら起こるわよ。うふふ」
マリリアとハヤトはその後二三会話をしてマリリアは仕事に戻った。
マリリアは話易い人だなと思ったハヤトだった。客商売だからなのだろうが隣にいるメイリアは店に出ていると聞いたがいったいどんな接客なのか気になった。このまま口数が少ないのか、それとも……。
何はともあれ必要な物を買ったハヤト達は鍛冶屋に帰ったのだった。
帰ったハヤト達はカルシアに出迎えられた。
ハヤトは部屋に戻り買った服を仕舞う。食器などは既にカルシアに渡している。
片付け終わり丁度昼食の時間になりメイリアが呼びに来た。
「……御飯出来たから、居間に来て」
それだけ言うとそそくさと出ていった。
嫌われてる?と思ってしまったが会ってまだ1日も経ってないのだ、それもしょうがない事なのだと結論付け居間に向かっうハヤトだった。
昼食を食べ終わるとメイリアは店の手伝いに向かい、ゴウは再び工房に籠って武器の作成だ。
ハヤトはカルシアに文字などを教えて貰う為に居間残って片付けだ。
ハヤトが食器を洗い、カルシアがそれを拭いて棚に仕舞った。
片付けが終わるとカルシアが二冊の本を持って来てハヤトの横の席に座った。
「まずは文字ね。基本は50個の文字を覚えたらあとはちょっとした応用だけだからすぐ覚えれると思うわ」
そう言って本を一冊開いた。そこには日本でいう50音の表があり、文字は日本語とは違うものだった。しかし表が同じため一通り目を通すだけですんなり全て覚える事が出来た。これにはカルシアも驚いていたが、忍の任務時には書いてある文書を一度で完璧に覚え、すぐに文書を燃やしていたので、記憶力には自信があったのだ。
驚きから立ち直ったカルシアはもうひとりの本を開いた。
「はぁ〜。一回見ただけで覚えるなんてハヤトさんは凄い頭がいいんですね。こちらは特殊な文字です。これは一文字で、ハンターと読みます」
日本でいう、漢字のようなもので、例えるなら『狩』と書いて『ハンター』と読ます感じだ。
勉強会は順調に進んでいった。