序章:3
鍛冶屋に招かれ中に入るハヤト。 店の入口から中に入るとそこには多くの武器が綺麗に陳列されていた。
西洋風の剣やハルバート、バトルアックス、大槌など様々な武器が有った。そしてひときわ目立つのがカウンターの奥にある壁に掛けられていた長さ2mある大剣だった。刀身には何やら模様が描かれており、いい感じに使いふるされた柄には年期が見受けられた。
見ていたハヤトにゴウは笑みを浮かべる。
「その剣はな、昔俺が作った剣でまだハンターをやってた時に使ってた剣だよ」
懐かしむように剣を見るゴウ。ふぅと一つ息を吐くとハヤトに顔を向けて奥に行こうと言って先に進むハヤトとゴウ。
カウンターの奥にある扉を抜けると廊下があり、ただいまとゴウが言うと奥からおかえりと声が聞こえてきた。
奥にある部屋に入るとそこは居間で、テーブルに料理が並べてあった。そしてそこにはセミロングの金髪の大人の女性と、オレンジの長髪の16歳ぐらいだろうか無表情の女の子が座っていた。
「おかえりあなた。………そちらの方は?」
金髪の女性が聞いてきた。
「ただいまカルシア。こいつは途中の道で一緒になってな。ハヤトっていうんだ。今からじゃ宿も探すのは難しいからな、泊めてやろうと思って連れて来たんだ」
ハヤトはその言葉に驚いた。ただ道で出合い馬車に乗せてもらい、話をしただけの関係なのに、なぜそこまで親切にしてくれるのかハヤトには謎だった。
「あらそうなの。あなたがそう言うならいいわよ。よろしくねハヤトさん」
奥さん…カルシアも簡単に許可した。
「よし。まずうちの家族を紹介するよ。嫁のカルシアに下の娘のメイリアだ。もうひとり娘がいるんだがハンターやっててな、帰って来たら紹介するよ」
「ハヤト・ソガです。よろしくお願いします」
そう言って頭を軽く下げた。
「気にするな。さぁ冷めないうちにご飯を食べよう」
ゴウとハヤトが席に座ると食事が始まった。
食事の間に色々な話をした。結婚後もカルシアはハンターをやっていたが、カルシアが妊娠したと分かりハンターを引退、鍛冶屋をしていたゴウの手伝いをするようになったそうだ。
さっきの大剣はカルシアが使ってたいた物だった事に気が付いたのはちょっとあとだった。
そしてハヤトの出身を聞かれ、さすがに異世界とは言えないので小さな集落の生まれと言うとあっさり信じてくれた。
どうやらそういった人はたまにいるらしく、ハンターになるためによく町に来るのだと言う。
おそらくハヤトもハンターになる為に来たのだと思われていたらしく、ハヤトがハンターになる気はないと伝えると驚かれた。
ハンターになり、強い獣を倒せば有名になれる。過去にはドラゴンを倒したハンターは英雄と呼ばれ、王族と並ぶ程の地位や名誉を得たという。その為ハンターになりたいという者は後をたたないらしい。あとは危険だが手早く金が稼げるのも人気の理由らしい。
ハンター以外に一般的な働き口はないか聞いてみると…
「ならうちで働いてみるかい?ちょうど誰か雇いたいとカルシアと話していたんだよ」
ゴウはそう言った。
「嬉しいのですが、鍛冶の経験ないですよ」
ハヤトはそう答えるとゴウは笑いながら返事をした。
「あははは。すまない言い方が悪かったかな。ハヤト君には店の事を頼みたいんだ。今はメイが手伝ってくれてるんだが、さすがに女の子には重たい物も有るからね、そういった事を手伝って欲しいんだ。鍛冶で俺はこもる事が多いし、カルシアも家事と両立は大変なんだよ。で、どうだい?」
つまり、店での雑用などが仕事という事らしい。体力的には全く問題はない。忍として鍛練は積んでいるので、身体は細く見えるが、そこらの筋肉マッチョの人並に力はある。細くなってるのは忍の秘密だ。どうしたものか悩んでいると、
「あぁ、ちなみに住み込みでもいいよ。部屋余ってるし、ハヤト君来たばかりで大変だろ。住み込みで食事付き、給料は月10万Eと安いがどうかな?」
さらに詳しく説明されたがハヤトが悩んでいるのはそこではない。
「えっと、大変ありがたい話なんで受けたいとは思うのですが…」
「うん?どうしたんだい?何か訳があるのかい?」
ゴウとカルシアは首を傾げ聞いてきた。
「はい。実は………文字の読み書き出来ないんです。それでも大丈夫ですか?」
一瞬ポカーンとした顔をしたゴウだったが、すぐに笑顔になり。
「構わないよ。なんなら教えるよ。……さて、返事は受けてくれるでいいのかい?」
「はい。迷惑をかけますが、よろしくお願いします」
そう言って、ハヤトは頭を下げた。
「こちらこそよろしくね、ハヤト君。後で部屋を案内するよ」
「ふふふ。よろしくねハヤトさん」
「………………よろしく」
ゴウ、カルシア、メイリアは歓迎してくれた。
それから食事が終わりハヤトは部屋に案内された。部屋にはベッドと机、本棚があるだけの部屋で特に誰も使っていない部屋だそうだ。毛布を受け取りゴウは風呂を勧めたが最後でいいと言い後で呼びに来ると言い残しゴウは出て言った。
ゴウとカルシアが風呂に入り終わり現在メイリアが入っている頃、居間ではカルシアがゴウと話をしていた。
「なぜハヤトさんを雇いたいと思ったの?あなたの人を見る目は確かだから構わないけど、会ってその日にってのはびっくりしたわ。何か理由でもあるの?」
カルシアの疑問は確かだ。ゴウとハヤトが会ってまだ1日も経っていないのに家に招き、雇いたいと言い出したのだ。疑問に思わない方がどうかしている。
「ハヤトにはな、不思議な力を感じるんだ。それにハヤトとの出合いはなぜか運命的なものを感じたからだよ。まぁ俺の勘だがな」
「ふふふ。運命的ね。曖昧だけどいいんじゃない。悪い子ではなさそうだし。楽しくなりそうね」
その会話は実はハヤトは聞いていた。部屋にいたのだが、耳に神経を集中する事により、聴力を上げたのだ。忍の技の一つだ。
運命ねぇ……。と思いながらもハヤトは聴力を元に戻し、窓から外を見た。空には二つの月が浮かんでいた。
ハヤトはなぜこの世界に来たのか…
ハヤトはこの世界で何をするのか…
その答えはまだ誰もわからない。しかしわかっている事がある、それはこれからハヤトの物語は始まるという事だ。
忍の曽我ハヤトとして、そしてハヤト・ソガとしての物語が……
序章終了です。次話から本編です。
基本ほのぼのした生活ですが、たまに忍として動きます。
これからもよろしくお願いいたします。