次の街は
「アリス、立ちなさい。
この程度では私はおろか、上位の神格を持つ神には勝てませんよ。」
「はぁ、はぁ、簡単に言わないでよ、お姉ちゃん。」
今、俺たちはフリッグが創った世界とやらにいるらしい。
曖昧なのはいきなり変なところに飛ばされて、ここはフリッグ作った世界としか説明されてないからだ。
フリッグが強いのは知っているつもりだったがどうやらまだまだそこが知れないらしい。
「確かにアリスの『月の庭』は強力です。
前代未聞の対神術であり、神器を持った私と互角に戦えるほどまでに能力を引き上げる一種の神器といってもおかしくないでしょう。
ですが、突然襲撃があった時あんな大がかりな仕掛けをを敷いておかないと発動できないものなどないものと同じです。」
フリッグの声は聞こえるんだが、目で追うどころかどこにいるのか全く分からない。
いったいどんな速さで動いてるんだ・・・
「ねぇ、レン、これってあれよねぇ・・」
「あぁ、おそらく訓練という建前のもと先日の鬱憤を晴らしてるんだろう。」
あの後、アリスは俺にべったり、いつもならフリッグが引き離すところだが盗聴器なんてものを仕掛けた罰としてしばらく、アリスが俺に何をしてもよほどのことがない限り干渉しないと約束を取り付けられた。
なぜ、アリスが決めているのかというと
『アリスが気付かなかったらずっとあのままだったんだよ?
そのお礼くらいしてもいいんじゃないかな~?』
まぁ、特に俺に損害があるわけじゃないということで頷いてしまったというわけだ。
それからというもの、フリッグに見せつけるように引っ付いてくるものだからフリッグの機嫌が日に日に悪くなっていき、ついに限界がきてこうなったわけだ。
「むぅ~、お兄ちゃん慰めて。」
「あー、よく頑張ったな。」
本当に負けず嫌いというかやられたらやり返さないと気が済まないらしいな。
「アリス!!
まだ終わっていませんよ、早くレンから離れなさい!!」
「少し落ち着きなさい、フリッグ。」
「ミナは何も思わないんですか!?
あんなこと起こしておきながら、どうしてあんなにレンにべたべたしてるんですか!」
「それは、フリッグが余計なことしてたからでしょ。
それに私は別に何の制限もないわけで・・・・」
「って、おい!?
ミナまで何やってるんだ。」
っく、もう何度目か分からないが俺は健全な男だぞ。
体を押し付けるように腕に抱き着かれたら何の反応もないわけがない
「な、なによ、減る物じゃないんだしいいじゃない!!」
そう言うなら、その赤面はやめろ。
そこまでしてフリッグをからかいたいのか。
「うぅ~、うぅ~・・・」
ほら見てみろ、もう泣きそうになってるだろ。
そして、最後にとばっちりを受けるのは俺だからな・・・・・
「アリス、もういいだろ?」
「アリスはお兄ちゃんがそう言うなら、アリスはどうでもいいよ。」
「というわけだ、もういいぞフリッ「レン!!」っと」
いや、まぁ、予想はしてたが、やはりこうなったか。
「ふふっ、お兄ちゃん両手に花どころじゃないね。」
「そう思うんなら離れてもいいんだぞ?」
「それじゃあ、お姉ちゃんをダシに抱き着いてるミナお姉ちゃんが離れたら離れてあげようかな~」
「こ、これはそういう流れだったからで・・・」
「あぁ、言い方が悪かったね。
本当はお兄ちゃんに甘えたいのに、ツンデレだから素直になれず、こういう機会じゃないとお兄ちゃんに抱き着けないミナお姉ちゃんが離れたらアリスも離れてあげる。」
そ、そこまで言うのか・・・
気持ちは分からないでもないが、俺でもそこまではしないぞ。
「う、うるさい!!
絶対、誰にもレンは渡さないんだから!!」
あぁ、久しぶりの幼児退行・・・・
どんどん、状況が悪くなる。
「こうなったら、しばらくミナお姉ちゃんは離れないからアリスも離れられないね。」
「・・・・・・もう、好きにしてくれ。」
ミナとアリスを離したところで・・・・
「私は後3日は離れませんよ!!
この数日、私はずっとこの時を待ってたんですからね!!」
一番の難関が待ち構えているんだからな。
・
・
・
・
・
「つ、次の旅先はニダヴェリールよ。
いつも通り、出発は1週間後だから各自準備しておいてね。」
流石にあの後3日間も離れないはずもなく、ミナが正気に戻ったところでアリスも離れ、2人ががりでフリッグも引き離した。
ミナが正気に戻るまで、6時間は掛かったがな・・・
その間何をするわけでもなく、ただ他愛のないことはしゃべったりしただけで何もやましいことはしていないぞ。
我ながらよくやったと褒めてやりたい。
ちなみに、その6時間の間、ジンはいい加減見慣れたのか同情の眼差しを向けれられただけだったが、フリュネは「3人とも娶る甲斐性を見せぬか。」なんて言いやがった。
どんな甲斐性があったらそんなことが可能なのか是非とも聞いてみたい。
3人とも仲はいいが、独占欲が強い。
ハーレムなんてものは絶対に認めないだろう。
「ちなみに今回は兄さんも参加するそうよ。」
「たまには、友達遊んで来いと言われてな。
それに、ニダヴェリールには見に行きたいものある。」
これは本当に助かる。
ジンがいないときは軟派が多い。
俺は見た目が冴えないからか、俺と一緒にいても声を掛けられるしな。
それに、男1人というのはいろいろ堪えるものもあるから、大助かりだ。
「それじゃあ、私たちはそろそろ帰るわ。
しっかりと準備しておいてね。」
・
・
・
・
・
・
ニダヴェリール、通称、錬鉄の街。
腕のいい職人が集い、この国の武具の9割がここで生産されているらしい。
ジンが見たいものもおそらく武具だろう。
武具、つまりは戦うための物だ。
この街で巻き込まれる厄介事が流血沙汰にならなければいいがな・・・・