取り戻したもの
「まだ、起きませんか・・・」
「あれだけの怪我を負ったんだ、2,3日は目覚めなくても仕方ない。」
フリッグとの激戦の後、休みことなく俺たちと闘ったんだ。
いくら、アリスといえど相当な疲労がたまってるだろう。
「いえ、アリスのことは確かに心配なんですけど、こんなにアリスにべったりじゃ私がレンといちゃいちゃできないじゃないですか。」
こいつはどうしてこんなに残念なんだろうか?
黙っていれば文句なしの美少女だというのに。
「仕方ないだろう、アリスと約束したんだから。」
「それは分かってますけど・・・・・
もう、丸々1日ですよ!
こんなに長い間レンを独占されてるんですよ!
アリス、いい加減に起きてください!」
はぁ、またか・・
この約束をするときにごねて、この部屋に来るたびにこの繰り返し。
それに1日が長いと言ってるが、お前は1週間も2人でいただろう。
「フリッグ、いい加減にしなさい。
まったく、少し目を離すとこれなんだから。」
「ミナはおかしいと思わないですか!!
今回の主犯はアリスなのに、そのアリスにレンが付きっきで看病してるんですよ!
私だって刺されたり、切られたり、いろいろ力を使ったりして疲れてるんですよ!
私だってレンに看病してほしいです!!」
「あー、はいはい、分かったから行くわよ。」
「うぅ~、レン~」
まったく、甘えられるのは悪くないんだがTPOくらいは考えてほしい。
その点、ミナは分かってくれて助かる
「あぁ、分かってると思うけどアリスが起きたらこの借りはきっちりと返してもらうからね。」
・・・・全権撤回だな。
「ところでアリス、いつまでそうしてるつもりだ?」
「あはは・・・・、やっぱりばれてたんだ。」
「半信半疑だったけどな。
他の誰かがいる状況で言えるほど確信はしてなかったが、誰も聞いてないんなら多少恥ずかしいだけで済む。」
他の誰かがいる状況で違っていたら恥ずかしすぎるけどな。
まぁ、誰もいなくても違っていたら恥ずかしいが・・・
「もう、お兄ちゃんがそんなことするから勘違いしちゃうんだよ?
これを狙ってやってるんだとしたら誘ってると勘違いしても仕方ないよね?」
「目を覚ました時、すぐ傍に居ろって言ったのはアリスだぞ?
それに、寝てる間も手を離してくれなかったんだ。
どこかに行きたくてもいけない。」
「ふ~ん、それじゃあ約束しなかったらいてくれなかったんだ?
身を挺してお兄ちゃんを助けたのに薄情だな~」
仕返しのつもりか?
こういうところはまだまだ子供っぽいな
「いや、アリスの可愛い寝顔を見ていたから暇ではなかったぞ。」
「なっ!?」
おお、アリスでもこういう反応するのか。
なんだか新鮮でいいな
「うぅ~、うぅ~、お兄ちゃんのばかぁ~」
どうもこういうところを見せられると苛めたくなってくるのはSだからなのか?
常識的に考えてアリス位の歳の子供を苛たいとはいろいろ疑ってしまうところだが、そこはアリスだからという理由でいい気がしてくる。
「どうした?
まさか、いつも年齢のそぐわないことばかり言うアリスがこれくらいで照れてるのか?
いや、安心したよ、アリスにもこういう子供みたいなところが残ってたんだな。」
顔を赤くして睨まれても全く怖くない。
10人が10人可愛いとしか言わないだろう。
もちろん、俺もその中に含まれる。
とはいえ、そろそろやめないと危険な気がするな
「それじゃあ、そろそろいく「お兄ちゃんがその気なら」」
まずい!
「おち、ぐぇ・・・」
「ふふっ、言い負かされた分たっぷりお返ししてあげる。」
ぐっ、この負けず嫌いめ。
これはまずい、本気でやられる!?
side フリッグ
「離してくださいミナ!
レンの貞操が危ないんです!」
「何馬鹿なこと言ってるのよ!?
アリスはまだ寝てるんだからそんなことあるわけないでしょ!!」
「いえ、私にはわかります。
だから、行かせてください!」
「そういって、レンに会いたいだけでしょ!
もう、何度同じこと言ってるのよ!」
「今度は本当なんです!
証拠もあります!」
「証拠って・・・・
フリッグ、確かそれって・・・」
「前に仕掛けた盗聴器です。
こんなこともあろうかとこっそり仕掛けておきました。」
「フリッグ、私あなたと友達でいれる自信がなくってきたわ。」
あれ、なんだかすごく退かれてる気がします。
これはあくまでレンの安全を確保するためのもであって、レンの声を聴きたいからとかレンのプライバシーをちょっと覗きたいとかそんな目的じゃないんですよ?
本当ですよ
「というわけで、どいてくださいミナ!」
「あ、こら、待ちなさい!」
「レン!」
「フリッグ、助かった。」
「もう、お姉ちゃんはいつもいいところで邪魔するんだから。」
レンを押し倒してる決定的な現場でよくもあんな余裕な態度が取れますね。
フフフ、これは1度たっぷりおはなしする必要がありそうですね
「あ、やっぱりあった。」
え
「・・・・アリス、それはなんだ?」
「この部屋にいなくてもこの部屋の音が聞けるようになるものかな。」
「ちょ、ちょっとまってください!?
それは「つまり、盗聴器だね」」
あ、なんだかあの優しいレンにとても怒ってるオーラが見えます・・・
「さて、フリッグ、詳しく説明してもらおうか。」
side out
「ふぇーん、レン、許してください~」
「少し反省してろ。」
あれから、俺の部屋もアリスに見てもらったところいくつも盗聴器が見つかった。
幸いと言っていいのか、俺の部屋では主に寝ること以外しないからほとんど意味がない。
だが、流石にこれは注意しておかないと次は何をされるか分かったもんじゃないからな。
「ねぇ、お兄ちゃん。」
「どうした?」
「今更だけど、あんな約束しちゃって本当にいいの?
後悔しない?」
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「どうしたの?
いくらアリスがこんな状態でもお兄ちゃん1人なら簡単に無力化できるんだよ。
それとも、まだなにかあるのかな?」
「いや、もう俺に手は残っていないし、これ以上戦うつもりもない。」
「アリスを説得でもするつもり?
ごっほ・・・はぁ、はぁ、アリスは止まらないよ。
どうしても止めたいって言うなら力づくで止めてみてよ。」
「アリス、ミズガルズで結んだ約束覚えてるか?」
「それはもちろんだよ。
でも、ごめんね、お兄ちゃんを信じさせる前にアリスがお兄ちゃんを信じ切れなかった。」
「それは俺のセリフだ。
俺が不甲斐ないばかりにお前たちにはいつも苦労ばかり掛けさせて、挙句の果てにはこんなことになってしまった。」
だが、いい加減に俺も目を背けることを止めよう。
いつでも、こいつらは本気で俺に向かい合ってくれた。
生きることから目を逸らし続けている俺に、懸命に向かい合ってくれた。
「だから、俺は死に逃げることは止めにする。
俺は苦しんで足掻いて、最後に生きてて良かったと思えるように頑張る。」
「それは、アリスたちに苦しみながら生きていくお兄ちゃんを見守り続けろってこと?
お兄ちゃんはもう、お兄ちゃんだけの物じゃないんだよ。
お兄ちゃんが傷つけばアリスも傷つくんだよ?
それでも、お兄ちゃんは立ち向かうの?」
「あぁ、俺はもう逃げない。
俺の負けだ、お前たちには負けたよ。」
俺にとって死ぬことは何よりの救いだった。
生きている限り誰も傷つけずに生きていくことなんて不可能で、誰も何も信じることができない俺に支えなんてなかった。
だけど、きっとこいつらとなら生きていける気がする。
いつか、生きたいって思えるはずだ。
「そっか、おめでとうお兄ちゃん。
きっとこれから地獄の苦しみが待っているかもしれないけどアリスはずっと支えるからね。
愛してるよ、お兄ちゃん。」
「俺も家族としてなら大歓迎だ。」
「ふふっ、お兄ちゃんらしいや。
ちょっと、眠くなっってきちゃった・・・・」
「あぁ、ゆっくり眠れ。」
「ねぇ、お兄ちゃん、アリスが目を覚ました時一番に目に入るのはお兄ちゃんがいいな。」
「分かった。
アリスが目を覚ますまでずっと傍にいる。」
「うん、約束だよ。
それじゃあ、おやすみ・・・」
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「後悔なんてしないさ。
これから途方もない苦しみが待っていても、取り戻せたものもある。」
例え狂いそうになったとしても、皆がいるこの生活を取り戻すことができた。
俺がすべてをかけても守りたいもの。
これを守れるのならばどんな苦しみとも付き合っていくさ。
「そっか、それじゃあ次は本格的にお兄ちゃんを落としにかからないとね。」
「手加減はしてくれよ。」
「それは無理だよ。
アリスが命を懸けても手に入れたい愛しのお兄ちゃんなんだから♪」
あぁ、これが俺の幸せの形なのかもしれないな。
終わりっぽいですがまだ終わりませんよ><
更新は相変わらず不定期になりそうですけど・・・