世界vs世界
side アリス
「はぁ、はぁ、これでアリスの勝ちだね。」
最初にあれだけの傷を負わせて、アリスが最高の能力は発揮でき、尚且つお姉ちゃんの能力を少なからず制限したこの世界、手枷足枷つけてやっと互角・・・
それでも、神器は弾き飛ばした。
この状況で出してきた位だからあれ以上の神器はもうないはず。
これでチェックメイトだ。
「まさか、私がここまで追い詰められることになるとは、夢にも思いませんでしたよ。
ここまで、追い詰められたのは過去でも主神以外いません。」
「違うよお姉ちゃん。
これは追い詰めたんじゃなくて、詰んだんだよ。
もう、お姉ちゃんに戦える力はない。
アリスだって、本気でお姉ちゃんを殺すつもりはないんだから早く降参してくれるといろいろ助かるんだけど。」
早くお兄ちゃんのところに行きたいしね。
ああ、あと少し、あと少しで救ってあげられる。
だから、もう少し待っててねお兄ちゃん。
「確かに私にはこれ以上戦うことはできません。
しかし、これで終わりというわけではありませんよ。」
苦し紛れの嘘とは思えない。
でも、今のお姉ちゃんが近接で戦えないことは事実。
となると、遠距離かトリッキーなもののはず。
どちらにせよ、この世界で神器は十全に能力を発揮できない以上アリスの脅威じゃない。
「これを使うことは2度とないと思っていましたよ。」
っ!?
「な、なにそれ・・・」
さっきの神器みたいな神格は感じないのに震えが止まらない。
あんなもの勝負にすらならい、対峙した瞬間終わってる。
「アリス、世界はどんな形をしていると思いますか?」
「まさか・・・・」
何の飾りもないようなただの槍が
「そう、これは数多ある世界の1つです。」
side out
「これが俺の作戦だ。
何か質問はあるか?」
「いくつも不確定要素はあるし、綱渡りの部分が多いけど、あのアリスを止めるとなるとこれくらいクリアしないと無理ね。
私はフリッグみたいに完全に信じるとまではできないけどレンのこと信頼してる。
そのレンがたてた作戦なんだから、不安要素はあっても降りる理由にはならないわね。」
「レン、俺にはユーリアがいる。
だから、俺は絶対にユーリアのもとに帰らなくちゃならない。」
「ああ、逆に命まで掛けられても困る。
可能な限りで力を貸してくれ。」
「ああ、もちろんだ。」
こんな作戦に2人を乗せるなんて今までじゃ考えられなかったな。
これも、皆のおかげか・・・・
だから、次は俺の番だ。
待ってろよ、フリッグ、アリス。
side アリス
世界そのもの?
いくら、アリスが『月の庭』を展開してたところでここはあくまでも元いた世界。
世界の中に世界を内包するなんてそんなこが・・・・
「信じられないと言った顔ですね。
まぁ、無理もありません。
我ながらとんでもないことしているという自覚はありますから。」
「・・・・・1つの世界に世界を内包なんてしたら世界は沈むよ。
お姉ちゃんはこの世界を沈ませるつもり?」
「確かに、世界というものは酷く繊細です。
だからこそ、世界は矛盾や異物を嫌い全力で排除するよう抑止力が働きます。
ですが、抑止力そのものである神には世界からの干渉はありません。
もっとも、今はそんなこと関係ありませけどね。」
お姫様程度の神力ですら世界が許容できるぎりぎりなのに、世界なんて内包した瞬間沈むはず。
それなのに・・・・
「答えは単純です。
この世界が世界を内包できないというのならば可能な世界に作り替えればいいんです。」
「・・・・・はぁ~、本当に滅茶苦茶だよ。
そんなことができるならもっと早くやればいいのに。
踊らされたみたいで馬鹿みたいだよ。」
「いえ、できるようになったはついさっきです。
どうやら私は追い詰められれば強くなれるようです。」
お姉ちゃんがまだ強くなるってとこまでは計算に入れてなかったなぁ・・・・
計算に入れてたとしてもここまで急激に強くなられたらもともとアリスに勝ち目なんてないか。
一から作り直すより、既存の世界を作り直す方が圧倒的に難しいはずなのに。
それを、あの短期間で使えるようになって、疲弊した状態から使うなんて本当に滅茶苦茶だよ・・
「アリス、最後の忠告です。
こればっかりは私も手加減が効きません。
負けを認めてください。」
世界を作り直したってことは神力も全力で使えるはず。
それなら、時間を稼いでもすぐ回復さちゃう・・・・
「どうやら、これを見ても退く気はないようですね。」
「当然だよ。
もともと、分が悪いどころか、奇跡が起こらないと勝てない戦いだっただよ?
その奇跡が起こしにくくなったぐらいで諦める理由にはならないよ。」
1%が0.1%になったからって今更諦められない。
ほんのわずかな可能性がある限り絶対に。
それくらいの奇跡が起こせないでお兄ちゃんを救えるはずがないもん。
「そうですか・・・・
1つ教えてください。
なぜ、いまなんですか?
レンが苦しむところを見たくないというのは分かりますが、いくら何でも性急すぎます。
あの吸血鬼が現れたのは偶然だとすれば、この計画は短期間で練ったものはずです。
アリスならば、もっと時間をかけ、念入りに計画を立てるんじゃないですか?」
「単純だよ、お兄ちゃんを救うのはアリスじゃなきゃ意味がいない。
お兄ちゃんが誰も好きにならないのは、そこまで進んでしまえばもう戻れないと知っているから。
誰かを好きになって、それでも自殺志願を捨てきれなかったら最悪だもん。」
あのお兄ちゃんが心中なんてするはずないし、愛する人を置いてもいけない。
だけど、死にたくてたまらない。
どっちもこれ以上ない強い想いなだけあって、今より酷い苦しみが待ってる。
「だから、お兄ちゃんが誰かを好きになるときはどれだけの苦しみが待っていても生きていく覚悟ができたとき。
つまり、お兄ちゃんを変えられた人がお兄ちゃんが好きになる人。」
「それは分かります。
しかし、それでは急ぐ理由にならないはず。」
「うん、本当はアリスももっと時間をかけて変えていくつもりだったんだよ。
その間、苦しむお兄ちゃんを見ることになるけど、期限が決まっていれば我慢できないわけじゃない。」
アリスがお兄ちゃんを苛めたいと思うのは、アリスに構ってほしいから。
そんな子供みたいな考えだと分かっていても、止められない程お兄ちゃんを愛してる。
「だけどね、そうも言ってられなくなったんだよ。
お姉ちゃんじゃお兄ちゃんを変えることなんてできないと思ってた。
アリスは、どうしてお兄ちゃんがお姉ちゃんを警戒するのか理解できなかったよ。
ミナお姉ちゃんならとは思うけど、結果が出るのはまだ先のはず。
だから、ゆっくりでもいいから確実に変えていこうと思ってたんだけど、1つ予想外のことが起きちゃったんだ。」
本当にお兄ちゃんは鋭い。
アリスが見たって全然気づけなかったことにお兄ちゃんは気付いてた。
「それはお姉ちゃんが予想以上に成長してること。
お兄ちゃんを妄信的に信じてあげるだけじゃ、お兄ちゃんは絶対に救えない。
でも、お姉ちゃんは信じられないくらい短期間で成長してる。
焦ったよ、いつ、お兄ちゃんを取られるか分からない。
だから、少し無理があっても行動に起こさざるを得なかったんだよ。」
そして今ならわかる。
お兄ちゃんがお姉ちゃんを警戒してた理由が。
お兄ちゃんはお姉ちゃんがこうなることを予測してた。
お兄ちゃんも変わるくらいなら警戒なんてしなかったんだろうけど、それでも一生一緒に生きていくこととは別問題。
今とは別の理由で死にたくなる可能性も予測してお姉ちゃんと距離を置こうとしてたんだと思う。
「・・・・そうだったんですか。
それなら、なおのこと私は負けるわけにはいきません。
レンを手に入れるのは私です。
そして、アリスの決意と覚悟を評し全力でいきます。」
お姉ちゃんもう勝利を確信してる。
油断はしてないだろうけど、それでもそれは隙になる。
「世界の重さを知りなさい『ラグナロク』」
「これが正真正銘最後の奥の手だよ『月落とし』」
例え神力を全力で使えたとしても今なら完全に傷が癒えてるわけじゃない。
そして、手加減ができないとは言ってもアリスを殺さないように無意識に手加減するはず。
たとえ相手が世界であっても、ここはアリスの世界。
その世界の中心であり核でもある月をぶつければ!
「押し潰せ!」
悪夢でも見てる気分だよ・・・
あれが世界そのものだと知らなかったら、あんな細い槍で月を抑えてるなんて・・・・
「人の力、確かに見せてもらいました。
ですが、まだ最強(私)には及びません。」
っく、『月の庭』の核となる月が破壊された以上、『月の庭』の維持も・・・
「これで終わりです。」
ここまでかな・・・・・
ごめんね、お兄ちゃん・・
「まったく、2人とも暴れすぎだ。
こんなに街を壊しやがって、後で請求されるのは俺なんだぞ?
帰ったら説教してやる。」