3つの契り
side フリッグ
「ふふっ、お兄ちゃんも言ってたけど人を舐めない方がいいよ。」
得体の知れない相手には様子を見ながら戦うのがセオリーですけど、いつまでもレンをあのままにしておけませんし、アリスに無駄な怪我を負わせる訳にもいきません。
ここは、一撃で!
「分かりやすいなぁ、お姉ちゃんは。」
くっ!!
完璧なタイミングでカウンターを・・
「呆けてる暇なんてあるの?」
私の訓練の時は本当に手を抜いてたようですね。
今の状態でさえいつもの倍以上の動きをしていますし、本当に底が知れませんね。
ですが、まだまだ遅い!
「おっと、流石お姉ちゃん。
あれくらいじゃ、全然効かないね。」
まるで、私の動きを読んでるかのようですね・・・
いえ、実際読まれているんでしょうけど。
「そうだよお姉ちゃん。
アリスはずっとこの時のためにお姉ちゃんを見てきたんだもん。
お姉ちゃんの考えてることなんて手に取るようにわかるよ。」
「まったく、末恐ろしい才能ですね。
アリスが私と同じ年月を重ねいてたらと思うとぞっとします。」
10000年、いえ1000年の歳月が経っていれば私に迫ることすらできているかもしれませんね。
「それはそうだよ。
アリスのこの力はお兄ちゃんを救うために手に入れたものだもん。
それに、お姉ちゃんを倒すのに1000年もいらないよ。
だって、この日にアリスが勝つんだから。」
言ってくれますね。
明らかな挑発だということは分かっていますが私も伊達に最強を名乗っていませんよ。
力の差は今一度教えてあげます!
「ふふっ、本当にお姉ちゃんは単純なんだから。」
「最近のアリスは可愛くないですよ!」
「アリスはお兄ちゃんにそう思ってもらえればそれでいいんだよ。
お兄ちゃんは小悪魔みたいなアリスでも可愛いって言ってくれるもん。」
どこが小悪魔ですか。
魔王と間違っていますよ。
「そろそろ守ってばっかりも飽きちゃったしこっちから行くね。」
くっ、本当に私の時はどれだけ手を抜いてたんですか!
「確かにお姉ちゃんは最強だと思うよ。
でも、全力を出せなければ最強も名折れだね。」
「やはり、気付いていましたか・・」
「神力は少量でも大きな力になるけど、それは本来世界には存在しない異物。
お姫様くらいが世界が許容できる限界だよね。
それ以上使用すると世界が崩壊しちゃうから、お姉ちゃんは全力出せない。
だけど、アリスは世界を構成する1つの魔力のみを使用してるから加減なんて必要ない。
これなら対等に戦えるよ。」
私とアリスの魔力はほぼ互角、神力がある分力では私が上ですが、行動を完全に読まれているとなると戦況は5分ですね。
「本当にアリスを甘く見すぎだよ。」
「なっ!?」
「お姉ちゃん専用のトラップだよ。
じっくり味わってね♪」
side out
side アリス
「ごほっ、ごほっ、まったく、お気に入りの服が台無しですよ。
初めてはこの服にしようとまで思っいたんですけど、これじゃあもう着れないじゃないですか。」
う~ん、お姫様くらいなら簡単に殺せる威力だったんだけどね。
ダメージがないわけじゃないけどこれくらいじゃ倒しきれないかな。
「お兄ちゃんはアリスのものになるんだからそんなこと考えても無駄なのに。」
「それにしても、あんなもの私じゃなければ死んでますよ。」
「それはお姉ちゃん専用だもん。
半端な威力じゃ意味ないでしょ?
ちなみに街中に仕掛けてあるから早めに倒されちゃってね。」
とは言ったもののあれって仕掛けてる中でもかなり威力の高いもだから、罠だけで倒すのは無理みたいだね・・・
まぁ、他にもいろいろあるからアリスの手で踊ってもらうよお姉ちゃん。
「・・・・・本気なんですね。」
「そんなの今更だよ。
だって、お兄ちゃんを賭けて戦ってるんだよ?
アリスのすべてを投げ打ってでも絶対に勝つよ。」
アリスが生きる上でお兄ちゃんがそばにいることは当然のことだもん。
お兄ちゃんがいて、その後にお姉ちゃんたちがいる。
お兄ちゃんがいない世界じゃ生きることさえ無理だもん。
「・・・・そうですね、途中で考え直してくれるなんて思っていた私が甘かったようです。
ここからは、手加減はしません。
帰ったら、たっぷりとお説教してあげます。」
「そんなの嫌だよ。
帰ったらお兄ちゃんとあま~い一夜を過ごすんだから。」
「ませすぎです!」
「ふふっ、初心なお姉ちゃんには刺激が強かったかな?」
「なっ、わ、私だって!」
「顔真っ赤にしちゃって、お姉さんの気持ちがちょっとわかるかも。」
っと、流石に地力の差が出てきたかな・・・・
いくら行動が読めるって言っても実戦経験が違いすぎる。
さっきは不意を突いたから当たったけどお姉ちゃんなら罠が発動してからでも十分避けることができる。
お兄ちゃんが賭かってなかったら絶対にこんな分の悪い勝負なんてやりたくないよ。
「戦いの最中に考え事とは感心しませんよ。」
「愛しのお兄ちゃんのことだから大目に見てよ。」
誘い込んでることくらいわかってるはずなのに追ってくるなんて、真正面から力の差を見せつけて諦めさせるつもりなんだろうけど・・・・・・
「特大サービスだよ。
しっかり味わってね♪」
仕掛けた罠の中で最強の威力を持ってるもの。
流石のお姉ちゃんも守りに入るはず。
『レヴォルト』
それを待ってたよ。
いままでの罠はすべてこのための布石、これでアリスの勝ちだ!
side out
っく、俺は何をやってる!
フリッグとアリスが戦ってるんだぞ!
止めたいが、今の俺が何を言ったところでアリスは止まらない。
確固たる信念を持つアリスに、何もない俺が何を言ったところで・・・・
「レン、いったいあれはどういうことなの!?
どうしてフリッグとアリスが戦ってるのよ!?」
「それは・・・・」
「いえ、大体の想像はつくけど、どうして止めないのよ!」
「今の俺が何を言ってもアリスは止まらない。
説得して止めらなければ、あのフリッグでさえ手を焼くアリスに俺がなにをできる?
なにをしようと、すぐに無力化されるだけだ。」
悔しいが、ここはフリッグに任せるしか・・・・
「ああ、もう!!
うじうじするな、それでもこの私に勝ったレンなの!!
理由がどうであれあの2人をこのままにしておいていいわけないでしょ!!」
「だが、俺に何ができる!!
アリスは俺を救えると信じ切ってる。
俺もアリスのやり方が間違ってるとは思わない。
俺が変われないというのなら、死ぬかアリスを頼る方法しかないんだ・・・・」
実際、フリッグが来なければ俺はアリスの手を取っていただろう。
アリスの手を取ってしまえばどれだけ楽だろうか・・・・
「いい加減にしなさい!!」
「ごほっ!?」
この、おもいっきり殴りやがって・・・・
「なにを「アースガルドで私に言った言葉はなんだったの?」」
「ムスペルヘイムででフリッグと約束したことは?
アリスとも契ったことがあるでしょ?
それは、そんなに簡単に諦めていいものだったの?」
そうだ、俺は何をやってる?
アースガルドで過ちを犯した俺を叱ってくれたミナに何を思った?
ムスペルヘイムで泣いていたフリッグと誓ったことはなんだった?
ミズガルズでずっと抑えさせていたアリスと約束したことは?
「レンはまだ何もしてないでしょ?
だから、考えなさい。
レン1人じゃできなくても私や兄さんがいる。
まだまだ、諦めるには早いわよ。」
いい加減目を覚ませ。
俺が不甲斐ないせいでフリッグとアリスが戦ってるんだぞ。
「ミナ、力を貸してくれ。」
「もちろんよ、絶対に止めるわよ。」
待ってろよ、フリッグ、アリス。