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ミズガルズ その⑤ 不審な点

これで3人。

意外とたいしたことなかったな。


「お兄ちゃんも強くなったね。」


そりゃあ、とっくに終わってるか。


「いつから見てたんだ?」


「最初の1人の時からだよ。

せっかくお兄ちゃんが戦うところ見れるんだもん。

ぱぱっと終わらせてきちゃった。」


俺が1人倒すまでに3人とは実力の差がありすぎてどれくらいの差があるのかすら分からない。


「とりあえず情報を聞きただすか。」


「簡単に話してくれるかな?」


「それは大丈夫だろう。

何せ、こいつらは所詮学生だ。

やりようはいくらでもある。」


本気で命のやり取りをしたことがないのならアリスの殺気をぶつけでやれば簡単に吐いてくれるだろう。


side フリッグ


「結局、私たちに何をして欲しいの?」


「私たちの邪魔をしようとする私兵たちを少しの間抑えつけてほしいんです。

なので、実際に働いてもらいたいのはそっちの御2人になります。」


聞く限り怪しいところはないように思えますが、私じゃ考えたって分からないんですよね。

レンが許可してくれれば思考を読んで何を考えてるかなんてすぐにわかるんですけど、絶対に許可してくれないでしょうし。

ここは言われた通り、リンネに従いましょう。


「リンネ、どうします?」


「私個人としてなら断るべきだな。

あの男には不審な点がいくつかある。

だが、私たちが断ったところで今のミナを一人にしてはそっちの方が危険だ。

だから、裏で動いてるだろう風峰に任せ、私たちはミナを見守る為にもここは受けておくべきだろう。」


不審な点なんてありました?

この街で知らない人はいないほど有名なミナに付いている私達が普通じゃないと思うのは当然のことでしょうし、それに期待するのもおかしな話ではないような気がします。


「フリッグ、例えばの話だ。

そうだな、この世界において姫の名を知らない者はいないだろう?

だが、その顔はどうやって知ることができる?」


「それは写真か何かで撮っておけばいいんじゃないんですか?」


「そう、それが可能な世界ならそれで問題ない。

だが、私が知る限りこの世界ではそんな便利なものは存在しない。

ならば、なぜ3年も前にこの街を去ったミナの顔を知ってる者がいる?

さらに言うならば、当時のミナはまだ成長期の真っ最中だ。

当然容姿だって変化するだろう。

それを見ただけでミナを識別することは可能だと思うか?」


言われてみればおかしい話ですね。

確かに、この街に来てもミナが来ているのに誰もそれを騒ぎ立てることもありませんでした。

リンネが暴れた時も周囲の注目を集めたのに誰もミナに目を向けることはありませんでしたし。


「つまり、どういうことなんですか?」


「ここから先は情報が足りない。

予想はできるが確証は持てない、今頃風峰が裏を取ってるだろう。

私たちは風峰が来るまで時間を稼いでおけば問題なはずだ。」


皆、頭良すぎですよ。

レンは気付いているでしょうし、ミナも冷静だったら気付いてるでしょう。

後はアリスですが、どうなんでしょう?


「それではお願いできますか。」


考え直しては・・・・くれませんよね。

まったく、レンがミナのことをお荷物だなんて思うわけないというのに。

嘆きたいことですが一番信頼を置いていると言えばミナだと思うんですよね。

私やアリスは少し感情表現が激しいですから、レンのことになるとちょっとだけ見境が無くなったりします。

だからと言うわけだけだはないと思いますけど、レンが関わったりするときはミナに相談することも多いんですよね。


「ミナ。」


「・・・・・ごめん。」


「謝る相手を間違ってますよ。」


「これは私の我儘だから無理に付き合ってくれなくてもいいのよ。」


「私はレンに言われたからミナに付いてるわけじゃありませんよ。」


私にとってもミナは大切な親友です。

レンの言いつけはできるだけ守りたいと思いますが、手に負えないと判断した場合は私が無理矢理どうにかしましょう。


「ありがと。」


結局止められませんでしたか。

後は頼みましたよ、レン。


side out


「こら、少しやりすぎだぞ。」


「お兄ちゃんの前だから張り切っちゃって。」


思わず許してやりたくなる可愛さだが全員気絶させてしまっては情報を聞き出せない。


「そういえばアリスは読心術が使えるんだよな?

それで、何とかできないのか?」


「あれは、相手の反応と質問対する答えを合わせて相手の考えを推測してるだけなんだよ。

だから、できないことはないけど流石に気絶してる相手には使えないよ。」


そろそろ、向こうも動くころだろう。

早いとこ聞きださないとまずいな。


「とりあえず起こさないと話ならないんだが・・・」


気絶してる奴をどうやって起こそう。


「アリスに任せて、えい♪」


「ごぶっ・・・」


いや、それはないだろう・・・・


「起きたよ。」


「・・・・・まぁいいか。

ちょっと聞きたいことがあるんだが。」



「・・・・助かった。

手荒な真似をしてすまなかったな。」


「いえ、こちらこそ不躾な事をしてすみませんでした。」


これで聞きたいことは聞けたし、あの様子なら証言もしてくれるだろう。

後はタイミングだな。


「ねぇ、お兄ちゃんって新しい仕事探してるんだよね?」


「うん?

まぁ、一応だがな。」


いろいろ試したりはしてるんだがこれといったものは見つからない。

器用貧乏の悲しいところだな。


「お兄ちゃん、詐欺師になれば?

アリスが一緒にいれば絶対に成功するよ。」


確かに、アリスみたいな子供が一緒にいれば警戒心が薄れるし、いざとなった時に守ってもらえるな。


「いやいや、どうしてそうなる。

俺が探してるのは真っ当な仕事だ。」


「だって、なにさっきの?

起きたすぐはアリスに怯えてたのに帰るときは完全にこっちの味方になってくれてたよ。

詐欺師以上にお兄ちゃんに合う職業なんてないよ。」


「詐欺師は嘘をついて騙すものだが、俺は嘘なんてついてないだろう?」


俺が言ったのは可能性があるとかかもしれないとか、曖昧な言葉しか言ってない。


「その言葉が詐欺師を匂わせてるよ・・・・」


「だが、ミナが協力してくれれば本当のことだぞ。」


「もぉ、いいや。

・・・・・こうやってアリスたちも誤魔化されてきたんだなぁ。」


最後の方は聞こえなかったがとても失礼なことを言われた気がする。


「さて、それじゃあ行くか。」


「もうちょっとお兄ちゃんと2人でいたかったなぁ。」


不謹慎極まりない言葉だが藪蛇にはなりたくないからスルーしておくか。


「意地悪・・・・」


聞こえない聞こえない。



side ミナ


「釘を刺しておくけど私が協力したことは誰にも言わないという約束は忘れないでね。」


「はい、では行ってきます。」


これはちょっとまずいわね。

フリッグとリンネなら相手に気付かれることなく倒せるでしょうけど・・・・・


「彼は中に入った?」


「はい、数人見張りがいましたが私とリンネで気絶させました。

もちろん姿は見られてませんよ。」


「そう・・・・・」


結局、最後はレンに頼るしかないわね。


「どこに行くつもりですか?」


「フリッグ、悪いけどレンを連れてきて。

私はちょっとやることができたから。」


こんなことやったらまたレンに怒られるかもしれないけど、私の失敗を全部レンに押し付けるわけにはいかないしね。



「これは、これは、レグスの者がこのような場に何の用ですかな?」


「白々しい、どうせ私がいることくらい知ってたんでしょ?」


「はて、何のことでしょうかな?」


これで1つめ。


「そいつ、いえ、学連と繋がってたんでしょ?

私を嵌めるためにしては随分お粗末なものだけどね。」


「私のような凡人には天才の言っていることは理解できませんな。」


「あくまでとぼけるつもりなのかしら?」


「とぼけるも何も私には心当たりがない。」


後はレンが来るまでの時間稼ぎね。


「そう、それじゃあ、聞いておきたいんだけどミズガルズはアースガルドの支援が減らされた今、どうやって財政を維持していくつもりなのかしら?」


アルフヘイムは特に国から補助を受けることなんてなかったから被害は少ないけど、この街は研究、学費や必要な道具、いろいろなものを揃えるために国から支援されている。

だけど、アースガルドで何かあったかは知らないけどその支援を一時的に抑えるとの公表があった。

研究が進み、新しい技術でも発見できればそれを基にどうにかできるんでしょうけど、そんな話は聞いてない。

そんな状態でこの街を維持するなんて学費を上げたところで焼け石に水のはず。


「この街が欲しいのは私の知識と技術なんでしょ?

自分で言うのもなんだけど、魔法を使った道具に関してはこの世界で最高の知識と技術を持ってる。

その私をこの街に縛り付けることで、この街を維持していくつもりだったんでしょう?」


「・・・・・・・素晴らしい推論だ。

確かに、筋は通っていますが証拠がない。

それにしても、この街を救う方法にそんな手段があるとは流石ですな。」


「・・・・私が聞きたかったことはあなたが私がこの街にいることを知らないってことと、あなたが学連との繋がりを否定することよ。」


「どうやら、そう鈍っていたわけじゃないらしいな。」


「私を誰だと思ってるのよ?」


「そりゃあ、俺の可愛い妹だろ?」


「ふん、そういうところが気に入らないのよ。

・・・・あとは任せたわよ、レン。」


「ああ、それじゃあ終わりにしようか。」

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