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ミズガルズ その③ 癇癪

「・・・・・・はぁ。」


朝目が覚めてここまで憂鬱な気分にさせられるとは。

今日何かが起きるのは間違いないだろうが、何より予測できないというところが怖い。

予測ができなければ対策の取りようもないからな。

一応、いくつか起こりそうなことを予想して準備はしてきてるんだがトラブルメイカーのミナに常識が通じるとは思えない。

現に、最初のアースガルドでは王族とことを構えることになるし、二ヴルヘイムではせっかく何事もなかったと思ったのに余計なことするし、言い出したらきりがないな。

だが、フリュネがいなければ王族との問題に絡まれることはほぼないはずだ。

顔は割れてるはずだが下手なことをすれば自分の首を絞めることくらいいい加減理解してるだろう。

つまり、何か起きてもそう大きな問題にはなりにくい・・・・・はずだ。

むしろ、こんな自警団が見回ってる学園祭の中でどうやって大きな問題に発展するか聞いてみたい。

よし、理論武装終了。



「あら、もっと憂鬱そうな顔してくると思ったのに思ったより普通ね。」


「その原因の一端が言っていい言葉か?

まぁ、今回はちゃんとした自警団もいるんだ、そうそう大きな問題には発展しないはずだ。」


「しないって言いきらないところがレンらしいわね。

でも、ここにはレンがいるのよ。

面白くならないはずがないわ。」


「むしろ、俺がいれば事は小さく済むだろ。

ひっかきまわしてるのはミナかフリュネだ。」


実際ミナとフリュネがいなかったら何も起こってないんじゃないか?


「まぁ、そういうことにしておいてあげるわ。」


「ああ、それはそうとして、そっちの人は?」


目を逸らしていたかった・・・・・

なにせ、昨日見た自警団だ。


「朝早く申し訳ありません。

ミズガルズ学連、自警団隊長のクルス・ミラノと申します。」


早速理論武装が砕け散りそうだ。

挨拶だけで聞きたくない言葉がいくつも・・・・・


「実は折り入って頼みがありまして尋ねさせってもらったんですがよろしいでしょうか?」


「だ「もちろんいいわよ。」・・・・」


「そんなに見つめないでよ。

照れちゃうじゃない。」


いつもの仕返しのつもりか?

それならもっと冗談が効く時にしてくれ。

態々、隊長を名乗る奴が朝から一般の観光客である俺たちに頼みごとを持ってくるんだぞ。

絶対に碌な事じゃない。


「ありがとうございます。

では、「ちょっと待て。」なんでしょうか?」


「クルスとか言ったな。

頼みがあると言ったが、自警団というからには大なり小なり危険を伴うことだろう?

そんな危険があるものをただの観光客に頼むきか?

さらにいえば、俺以外は全員女だぞ。」


こうは言ってるが、この面子で性別なんて関係ないけどな。

むしろ、女性陣が強すぎる。


「それは重々承知です。

ですが、そちらの黒髪の方は昨日の騒ぎで並みの男より遥かに強い。

そして、そちらの少女も昨日、男たち数人を倒したと部下から報告が来ています。

なにより、ミナ・レグスさんがいらっしゃるということで多少の危険ならば問題ないと判断しました。」


アリスが何をしたか知らないが、天笠同様、まぁいいだろう。

問題はミナ、お前はいったい何をやったんだ・・・・・


「あら、もう3年も前のことなのにまだ私のこと知ってる人がいるんだ。」


「あなたはこの街の伝説となっていますから。

編入試験で全教科満点、編入初日からすべての授業を受け持っていた先生方を論破し、1週間後には独自の魔法論理を作りだし不可能と思われていた魔法陣の再利用を成し遂げ、1月後にはその名を知らぬ者なしと言われ、半年後には突如この街を去っていき、ミズガルズ始まっての天才と謳われてますよ。」


「ああ、そういえばそんなこともやったわね。

我ながらあのころは若かったわ。」


ミナならそれくらいできそうだがやりたい放題やってると言えば今の方が酷いな。

まったく、いつになったら大人になってくれるのやら。


「何か言いたそうね?」


「大人と子供の境界線について考えてただけだ。」


「遠まわしに馬鹿にしてるわよね。」


「そう思うんならそうなんだろ。」


実際馬鹿にしてるしな。


「・・・・・・・覚えときなさいよ。」


「そんなに見つめるな、照れるだろ。」


「~~~~~~っ、表に出なさい!!」


アリスとの会話は面白いし、フリッグは安心するが、からかって楽しいと言えばミナだな。

簡単に表情に出るし見ていて楽しい。

これがフリッグだと危険だし、アリスは素で返されるだろうしな。


「レン、話が進まないのでその辺にしておいてください。」


おお、正直やりすぎてフリッグが切れるかと思ったがこの反応。

兄として嬉しい限りだ。


「分かっていると思いますが、後でお話がありますよ。」


・・・・・・人生そう上手くいかないか。


「で、話ってのはなんだ?」


「先日、長が亡くなり、新しい長が就任したのですがその長が傍若無人といいますか、突然すべての学園の学費を上げたり、税を上げたりとミズガルズに住む人に負担をかけ始めたんです。

ミズガルズに住んでいる者はほとんどが学生で、中には街からお金を借りて学校に通ってる者もいます。

なので、それついて抗議したいのですが個人で雇っている兵士がいて、門前払いにされるんです。

そこで、貴方にはその兵士を押さえつけてほしいんです。

その間に私たちが長と対談し何とかするつもりです。」


どこの世界でも学生は大変だな。

この街じゃあバイトも少ないだろうが


「ミナ、この件は断る。」


「・・・・・・・どうして、私がレンの言うことを聞かなきゃいけないの?」


「ちょっと考えればわかるだろ?

この件は今までとは違う。」


今までは、巻き込まれたのがほとんどだったし、それでも軋轢を生まないようにうまく立ち回ってきた。

こちらから行動を起こした時も、相手は犯罪者だ。

基本的に後腐れがないようなものばかり。

だが今回は話が違う。

確かに、横暴とも思えるがそれは必要なことかもしれないしこの街に住む人にとって重要な問題だろう。

だが、それは犯罪というわけじゃないし、そんな街の問題に他の街の長の娘であり部外者のミナが関わったとなれば後に響かないわけがない。


「ふん、それじゃあ私だけでやるからいいわよ。」


「ミナ!!」


「っ、知らない。」


からかうタイミングを間違ったか。


「フリッグ、ミナを頼む。

俺が言っても無駄だろう。」


「分かりました。

ミナが行動を起こした時はどうしますか?」


「基本は俺が指示を出すつもりだが、ないときは天笠に任せる。」


「私は行くと言った覚えはないが?」


「フリッグが言ってお前が行かない理由がないだろう?」


「利用されているみたいで癪だが仕方ないか。」


はぁ、また面倒な事に・・・・


「お兄ちゃんはどうするつもりなの?」


「アリスはさっきの会話でおかしいと思うところはなかったか?」


「あ、やっぱり、お兄ちゃんもそう思ってたんだ。

たぶん、お姉さんも気づいてるよ。」


天笠なら上手く動けるだろう。


「きな臭くなってきたな。

俺とアリスはそのあたりを調べるか。」


「うん、またお兄ちゃんと二人だね。」


「今度は、暴れるなよ。」


「あはは・・・、ばれてたんだ?」


「かすかに血の匂いがしたからな。

ここに来るまでは俺の血は飲んでないし狭いところで暴れたりでもしたんだろう?」


半年も戦ってたらそういうことにも敏感になるらしい。


「だって、お兄ちゃんが嬉しいこと言ってくれて機嫌が良くて、ちょうどそんなときに付き合ってと言われたから付き合ってあげただけだよ。」


それは不憫な。

もう少しタイミングが良かったらもう少しましだっただろうに。

まぁ、アリスに手を出そうとしたんなら仕方ないだろう。

自業自得だな。


「それじゃあ、行くか。」


「うん。」



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