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偶然か必然か

「あっ、どうでしたか?」


「ああ、概ね俺の思い通りだ。」


もう2度とこんな体験はやりたくないな。

俺に寿命があるなら確実に10年は縮んでる。


「だが、これで準備は整った。

後は踊ってもらうだけだ。」


「なんだか、悪役っぽいセリフですね。」


しまらないなぁ。


side フリュネ


「どうじゃ、レン。

何か思いついたか?」


「厳しいな。

今日で何も思いつかないようであれば最後の手段を使うつもりだ。」


「・・・・そうか。」


いくらレンでも今回の件は難しかったようじゃな。

レンの言う最後の手段とやらはあまり使わせたくはなかったのじゃが、仕方あるまい。


「妾は仕事に行ってくる。

何かあればすぐに言うのじゃぞ。」



「おはようございます。

今日も共に頑張りましょう。」


「うむ。」


鬱陶しい。

ついこの間まで言っていたことをそのまま聞かせてやりたいのう。

とはいえそんなことを言うわけにもいかぬし、もし、アルフヘイムまで来られてしまっては最悪切り捨てられる可能性すらある。

フリッグやミナにいくら借りを作っていようとレンが本気でその気になれば妾などすぐに追い出されるじゃろう。

妾の為にもレンの為にも早く何とかしてもらわぬとまずいのう。


「そういえば、フリュネ殿はアルフヘイムに別宅があるとお聞きしましたが住心地はいかがですか?」


これはまずいのう・・・・


「フリュネ様!!」


「すまぬ、話はまた次じゃ。」


「お急ぎ、耳に入れたいことがあります。」


「部屋で聞こう。

では、またの機会に。」


危なかったのう。

妾もあの生活は気に入っておるというのに。

これほど今の立場が面倒だと思ったことはないのう。



「フリュネ様、先日こんなものが。」



『フリュネ・セシリア

 今すぐ王位継承権を捨てろ。

 でなければ今晩、貴様の命を貰い受ける。』



「妾に喧嘩を売るとはずいぶん腕に自信があるようじゃな。」


文章を見る限り、送り主は同じ王位継承権を持つものか、妾に王になられては困る者。

心当たりが多すぎて誰とは判定できぬか。

・・・・・それとも、このタイミングで送りつけてくるということはレンの仕業か。


「これと同じものが多くの者にばらまかれています。

この話が広まるのも時間の問題かと。」


「よい、どんなものが来ようと妾が負けぬ。」


妾だけのところではないとはどういうことじゃ?

そもそも、暗殺するつもりならばいちいち脅迫状など送らぬはず。

妾を殺さずに王位継承権を捨てさせるつもりだとしても、こんなあからさまな脅迫状を広めればしばらくは護衛が増えやりにくくなる。


「フリュネ様、王がお呼びです。」


父上にまで行き届いておったか。

それも誰にも気づかれずとは余程の手練れか、内部犯か・・・・・



「フリュネ、脅迫状のことは知っているな。

これが本気なのかはわからないが、しばらく護衛をつけおとなしくしておくように。」


「・・・・・・わかりました。

例の件はどうするおつもりですか?」


「このような事態では仕方ない。

安全と分かるまで目立つ行為は避けた方がいいだろう。」


くっ、これではアルフヘイムには行けぬか。

いま、アルフヘイムに行ってしまっては妾に貸しを作ろうと護衛をつけようとするじゃろうし、レン達もいい気はせぬじゃろう。


「分かりました。

用はこれだけですか?」


「フリュネよ、焦る気持ちは分かるが今は耐えよ。

それにお前は少し働きすぎだ。

しばらく、休暇でもとっておけ。」


「・・・・・失礼します。」


妾が休める場所はあそこだけじゃ。

一刻も早く犯人を特定せねば。



「レン、脅迫状が届いた。

王位継承権を捨てねば命はないそうじゃ。」


『厄介なタイミングで来たな。

今、どういう状況だ?』


「護衛が何人も張り付いて身動きが取れぬ。

その中には他の王子や姫の使いもおるようじゃ。」


『これを機に貸しでも作ろうって算段か。

一応、フリッグがアリスを付けるか?』


「・・・・・この件、レンの企みではなかろうな?」


妾の勘がレンの仕業だと言っておる。


『なぜ俺がそんなことをするんだ?

もし、それを俺がやったとしてよう。

そして、その暗殺者を俺が倒してフリュネに相応しいって認めさせる、ってのは無理があるぞ。』


確かにそうじゃ、誰がどう見ても自作自演じゃ。

妾の勘違い?

しかし、相手はあのレンじゃ、今の状況がすべてレンの手の上だと言ってもおかしくない。


『だが、不幸中の幸いとして期限が伸びてくれたのは助かる。

最後の手段は本当に使いたくないからな。』


期限を延ばすためにこんなことを?

いや、その場しのぎの為にこんなことをするような者ではない。

だとすれば・・・・・・


『なぁ、脅迫状にはなんて書かれたんだ?』


「ん? ああ、王位継承権を捨てなければ今晩殺しに来るそうじゃ。」


『・・・・・今の状況は?』


「それは城の警備をいつもより強くし、特に妾の部屋周辺に兵を集めておる。」


『フリュネ、今すぐそこらの兵を王のところに向かわせろ。』


「なんじゃと?」


『脅迫状の内容なんて馬鹿みたいに信じるな。

もしかしたら、フリュネに注目を集めて他の奴を狙っている可能性が高い。』


「くっ、そこの者、今すぐ父上のところへ迎え!!


「は、はい。」


くっ、妾としたことがこんな単純なことに気づかぬとは。


「皆の者、この脅迫状はブラフの可能性が高い。

一部を残し、城を巡回せよ。

残りは妾とともに父上のところへ向かう。」



「これは・・・・」


どうやら死んではおらぬようじゃが全員気絶させられておる。

最悪の展開じゃ。


「父上!!」


「っち。」


「逃がすな!!」


妾が追いたいところじゃが、今は


「大丈夫ですか、父上。」


「まさか、あの脅迫状は囮だったとは・・・・」


外傷は特に見当たらないところ見るとぎりぎりだったようじゃな。


「そこの者、父上の護衛を頼む。

妾は先ほどの者を追う。」


気配はつかんでおる。

妾に喧嘩を売ったことを後悔させてやろう。



見つけたのはいいのじゃが人が多すぎて動きづらいことこの上ない。

どいつもこいつも手柄を上げようと必死なのはわかるのじゃがこのままでは・・・・


「魔法で足を止めなさい!!」


「「「「おお!!」」」


「馬鹿者!!

魔法を使っては殺してしまうぞ!!」


くっ、この喧噪の中ではそう簡単には聞こえぬか。


「外に逃げたわよ!!」


「逃がすな!!」


「撃て撃て!!」


「止めぬか!!」


死ななければよいのじゃが、あんなに乱れ撃ちをしたら動きが止まった瞬間死んでしまう。

しかし、こやつらが邪魔で妾もうまく動けぬ。


「当たったわよ。

逃がさないようにもう少し弱らせなさい!!」


まずい、熱が入りすぎて冷静な判断が取れておらぬ。


「落ち着かぬか!!」


城の壁が粉々じゃがこれでようやく妾の声が届くじゃろう。


「いますぐ、賊の身柄を確保。

他の者はまだ城に仲間がいないか見て回るのじゃ。」



「遅かったようじゃな・・・・・」


死体は黒焦げて、ところどころ欠けておる。

これではどこの誰かなど判定するのは不可能じゃな。


「今日一日警戒を怠らぬよう城の警備を強化せよ。

妾は父上のところへ報告に行く。」


死人が出たということはレンの仕業という線は消える。

ということは、これは偶然?



「その様子だとどうやら間に合ったみたいだな。」


「レンか、お主のおかげでぎりぎり間に合った。

今から父上のもとへ向かう、ついてこい。」


「分かった。」


「父上、フリュネです。」


「入れ。」


「失礼します。」


「先程は助かった。

フリュネが気付かねば我の命はなかっただろう。」


本当に偶然なのか・・・・

あれほどギリギリのタイミングで妾が助けに入るなどできすぎておる。

しかし、死体がある限りレンの企みであることはありえぬ。


「いえ、妾も部下に言われ気付いたもので。」


「貴様は・・・・

なるほど、貴様がか。

とりあえず礼を言おう。

そして、褒美を取らせよう。

明日、謁見の間に来るように。」


「・・・・・分かりました。」



「皆の者、昨日は皆のおかげで命を拾うことができた。

賊を討った者には褒美を取らせよう。」


「はっ、ありがたき幸せ。」


「次に、脅迫状の裏を読み取りいち早く気づいた者を紹介しよう。

レン・カザミネ、面を上げい。」


「はい。」


「お主のおかげで命を拾うことができた。

お主にも褒美を取らせよう。」


「王よ、私は褒美などいりません。

そのかわりと言ってはなんですが聞いて欲しいことがあります。」


「なんだ?」


まさか、今言うつもりか!!


「フリュネを私にください。」


と、鳥肌が・・・・・

気持ち悪くてかなわぬ。

・・・・どうやら、レンも同じようじゃな。


「待ってください!!

その男は貴族でもないただの一般人です。

それに、女癖が悪い軽い男に預けては王族の品格が落ちます。」


やはり、来たか。

まぁ、レンがこの場で言うということは何かしら考えがあるのじゃろう。

・・・・・しかし、鳥肌が収まらぬ。


「侮辱しないでいただきたい。

確かに私の周りには女性が多いのは確かです。

しかし、アリスとは主従関係を結び、フリッグとともに家族のような存在です。

家族を大事にすることは悪いことでしょうか?

それに、ミナ・レグスについては私がその兄、ジン・レグスと交友関係にある為、付き合いがあるだけです。

この事実に、女癖が悪いと言えますか?」


「ぐっ、し、しかし、貴族でもない者が王族と交際するなど前代未聞だぞ!!」


「それは前例がないだけす。

この国の法には王族が一般人と交際することを禁ずることなどありません。」


なるほど、レンが軽い男という噂は覆しようがない為そう簡単には消せぬが、公の場で否定してしまえばその噂は消える。

そして、何より王である父上が認めるのならば誰も文句は言えぬ。


「静まれ。

レン・カザミネよこれまでの功績を讃え、我娘、フリュネ・セシリアとの交際を認めよう。

しかし、これにうつつを抜かすことのないようこれからも精進するように。」


「はい、ありがとうございます。」


これで、妾に言い寄ってくるものはおらぬじゃろう。

それに、完全とは言わぬがレンのことを認めるものも出てくる。

いつのまにか、すべての問題が解決されておる。

これが本当に偶然なのか?

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