ミナのデート 下編
『どうするのお兄ちゃん?
言ってくれればすぐにでも止めてくるけど。』
俺個人の意見としてはすぐにでも引き離してやりたいんだが・・・・・
「悪いがもう少し様子を見てくれ。」
「どうして助け出さないの?
レンが責任を持てって言ってるんだから碌な抵抗できないはずよ。」
そんなこと分かってる。
「これはフリッグに必要なことだ。
あいつも成長していくんだから。」
だから、負けるなよ。
頑張れとは言わない、負けたらアリスに助けてもらうだけだ。
ただ、フリッグが変わりたいというのなら負けるな。
『・・・・・・・・・・君はいつまで正気を保っていられるかな?』
「レン、これ本当に放っておいてもいいの?」
「・・・・・・助けるならいつでもできる。
あいつは変わりたいと言ったんだ。
だから、ぎりぎりまで待つ。」
本当ならフリッグの意思なんて無視して助けてやりたい。
だが、それは結局俺の自己満足でしかない。
俺の妹であってほしいと俺が守らなければならないものであって欲しいという俺の勝手な我儘を押し付けるだけだ。
『・・・・・・・・・あれほど疑り深く、この世の何も信じようとしない風峰がそれを信じていられると思うか?』
っち、この話はアリスやミナには聞かれたくなかった。
いや、ミナはすでにこの話を聞いてるのかもしれない。
ミナは乗り越えた、アリスにはあとで言ってやらないとな。
side ミナ
これは私が聞かされた話。
私はレンがいたから乗り越えられたけど、好きな人を好きでいることが苦しめているなんて普通なら受け入れられない。
まだ、子供のフリッグにこの事実は重すぎるってことくらいレンが一番わかってるはずなのに。
『・・・・・・・・・・・守るべきものを疑い、恐怖しなければならない苦痛が。』
「レン、もう十分でしょう!!
確かに変わりたいと言ってもこんな言葉に耐えられるほど急激に変われるわけないわ!!」
親友があんなに怖がってるのに放っておけない。
あれじゃあ本当にフリッグの心は壊れる。
「それでもだ。
フリッグがこれからも俺と一緒にいるつもりならこれ以上のことなんていくらでもある。
いつまでも子供でいられるわけじゃないんだ。」
「っ、アリス!!」
『アリスはお兄ちゃんが行けと言ってくれた行くよ。』
「~~~~っ、分かったわよ!!
見ていてやるわよ!!
そのかわり、負けたら許さないわよ!!」
レンだって、助けたいに決まってる。
前のレンだったら間違いなく助けてたはず。
最終的には駄目にしてしまうその場を逃れるためだけに甘やかすレンの自己防衛。
でも、今は自分を守ることじゃなくてフリッグの為に頑張ってる。
だから、私は見守ろう。
それがきっと私の役目だ。
side out
『・・・・・・・・・愛すべき人が傷つくことがわかっていて止めないわけがないだろう。』
ああくそ、あの女、俺が聞いてること分かってんじゃないだろうな。
俺がフリッグを助けに行くことで俺にフリッグの成長を諦めさせる為に。
そうなれば俺はフリッグを保護すべき存在以外で見ることなんて無理だ。
天笠からすれば大喜びすることだろう。
『・・・・・・・私は君のすべてを受け止めよう。』
血管がぶちきれそうだ。
ジンはよく俺にミナを預けられたな。
俺なら血管が破裂して出血死する。
『・・・・・必要だって言ってくれたんです。』
・・・・やっとか。
本当に待ちくたびれたぞ。
『私はレンを信じます。
きっとレンは私を信じてくれる。
何よりレンはそんなことで潰れるような弱い人ではありません。』
ここまで言われたら俺も負けるわけにはいかないか。
実際、天笠の言うことはかなり的を射ている。
だが、可愛い妹がここまで言ってくれてるんだ。
俺がいなくなっても強く生きていることを信じれるように俺自身も頑張らないとな。
『・・・・・・・人とは君が思っている以上に脆く壊れやすいものだよ。』
そろそろ諦めろよ。
俺は絶対にお前なんかに妹は渡さないからな。
『私の音如きが私の大切な人を侮辱するな。』
これならもう大丈夫だろう。
頑張ったなフリッグ。
「アリス、もういいぞ。」
『それじゃあ、ギルドのお姉さんのところに行ってくるね。』
「ああ、アリスは大丈夫なのか?」
『アリスはそんなに弱くないよ。
そもそもお兄ちゃんを生かそうとしている時点でお兄ちゃんを苦しめてるんだから、今更アリスは止まらないよ。』
一番年下だというのに一番しっかりしてるのはアリスかもしれないな。
『それに、お兄ちゃんを苛めてるってちょっと気持ちいし・・・』
ちょっと待て、ボソッと恐ろしいことを口にしなかったか!!
それもあの人の影響なのか!!
『だから、アリスのことは気にしないで安心して苦しんでね。
そして、ずっと一緒にいようね。』
「アリスは強いな。」
『惚れた?』
「アリスはすごいな。」
『惚れた?』
「アリスは尊敬に値するな。」
『お兄ちゃん、そろそろデレてよ。
アリスはお姉ちゃんみたいにMじゃないだからあんまり焦らすとがぶっといっちゃうよ。』
「アリスはいつも俺の血を飲んでるだろ?」
『お兄ちゃん、恍け方が苦しいよ。
それともお兄ちゃん誘ってるの?』
「俺が悪かった。
それよりも遅くならないように帰ってくるんだぞ。」
『うん、お兄ちゃんも約束忘れないでね。
何をお願いするか相談しなきゃ。』
「待て!!
そんなことあの人に相談するんじゃない!!」
『・・・・・・・・』
本気で心配になってきた。
俺、何させられるんだろう?
今までアリスの情緒教育をやってきてもらったのは今日のことで適任だと言わざるを得ないがアリスが変な趣味に目覚めるのは困る。
「ミナ、アリスをどうするべきなんだろうか・・・・」
「普通、好きって言ってる女の前で他の女の話する?」
それは分かるが、アリスはみんなの妹だろう?
アリスが真っ当な大人になる為にもこれは重要なことのはずだ。
「私としてはレンが兄さん以上のシスコンにならないか心配だわ。」
いくら俺でも軟派したくらいで街中を探し回るようなことはしない。
俺なら、情報を集めて的確に追い詰める。
「何を考えているか知らないけど、いや、知りたくないけど、ほどほどにしなさいよ。」
「それにしてもこれがデートでいいのか?」
妹のデートをデート中に監視するって男というか人として最低だな。
うわ、言い訳のしようもないな。
「いいのよ。
私のことを知ってもらえて、私もレンのことを知れたんだから。」
本人がいいって言ってるんだからいいんだろうがすっきりしないな。
「不満そうな顔してるわね。
・・・・・そうね、それじゃあキスしましょう。
それで、この件はチャラにしてあげる。」
・・・・・・仕方ないか。
「んっ。」
「それじゃあ、今日はありがとう。
まぁ、楽しいとは言えないけど、なかなか実のある日だったわ。」
くっ、こういうことをすると嫌でも女としてしみてしまう。
しかも、ミナの部屋でだ。
嫌でもこの後を意識させられる。
「それじゃあ、俺は帰るな。」
「あっ、私も一緒に行くわ。」
早く出ないと気が狂いそうだ。
そもそも、男を部屋に入れるなんて無防備すぎるだろう。
誘ってるって言ってるようなものだ。
まぁ、実際そうなんだろうけどな。
「それじゃあ行きましょうか。」
「っ、腕を組むな!!」
腕に柔らかいものが!!
「私は妹なんでしょう?
なら、別にいいじゃない。」
くっ、いつもの仕返しのつもりか。
いいだろう、そっちがそのつもりなら・・・・・
「ミナ。」
「何・・・・・きゃ!!」
「ミナは女の子なんだから気を付けないとだめだろう。」
「え? その、もしかして・・・・・」
やっぱり、ミナはこうじゃないとな。
「ああ。」
真っ赤な顔に潤んだ瞳、その気がなくてもその気にさせられそうだ。
少し早いが落ちをつけるか。
「ほら、ゴミがついてるぞ。
女の子となら身だしなみには気を付けないとな。」
「~~~~~っ、レンの馬鹿ぁーーーーー!!」