ミナのデート 上編
1話に収めるつもりが下手をすれば3話になるかも・・・・・・・
※時間軸は前話と並行しています。
一応、アリスを監視に付けたがやはり不安だな。
流石に襲うことはないと思うが余計なことを吹き込まれるかもしれない。
フリュネなら貸し借りで扱えないことはないが天笠はフリッグ第一優先だけあって子とフリッグのことに関しては扱いが難しい。
『お兄ちゃん、今2人が出かけたよ。』
「それじゃあ、手筈通り空間転移で限りなく遠い距離で見張っていてくれ。」
『分かった。
その代わりに約束忘れないでね。』
「分かってるよ。」
監視を頼む対価はアリスのお願いを1つ聞く。
毎回毎回、何を言われるかびくびくしながら過ごすだが今回も例に漏れなさそうだ。
「お待たせ・・・・・・なにやってるの?」
さて、どうしよう。
ミナに嘘は通じないし、無駄な抵抗をして機嫌を損ねられても面倒だが、妹のデートを監視してるなんて言えるか?
少なくとも俺には無理だ。
かといって、誤魔化そうとしてもなぜかばれてしまう。
だが、諦めるわけにはいかない。
「ちょっとアリスから相談を受けてたんだ。
もう、解決したから気にするな。」
「・・・・嘘は言ってないみたいね。」
内心冷や汗だらけだ。
だが、それを表に出せば瞬時にばれてしまう。
頼む、誤魔化されてくれ。
「けど、隠し事はしてるわよね?」
・・・・・やっぱり無理だったか。
ここは潔く
「私とデート、そんなに嫌だった・・・・」
待て、なぜそうなる?
俺は別にいやというわけじゃないぞ。
むしろ、最近ミナとはゆっくり話す時間もなかったから楽しみにしてたと言っていいぐらいだ。
だが、それを言ってしまうとアリスのことを説明する必要がある・・・・
「ごめんね、一人で盛り上がっちゃって・・・・・・」
ミナってこんなキャラだったか?
もっと強気で誰に対しても勝気だっただろう。
「私、ちょっと頭冷やしてくるから・・・・・」
・・・・もう駄目だ。
こんな顔をさせてまで隠すことじゃない。
それにデートをしてる最中に連絡が入るだろうし説明しておくか。
「ミナ、別にデートが嫌ってわけじゃないん。
ちょっと説明するのが恥ずかしかったんだ。」
「えっ!?」
「今日、フリッグと天笠が2人になるだろう。
それが心配でアリスに監視を頼んだんだ。
さっきのはアリスからの報告だ。」
「・・・・・シスコン。」
ぐはっ!!
言われることは覚悟していたが予想以上にダメージがでかい。
だが、仕方ないだろ。
手のかかる妹なんだから心配するのは当たり前だ。
それに相手はフリッグを狙ってるんだぞ。
そもそも、フリッグはまだまだ子供なんだから彼氏なんて早いだろ。
そりゃ、俺もヤンデレから解放されるならとは思うが上手くやっていけるか心配だし。
・・・・・・・・もう開き直ろうかな。
「それじゃあ、デートは嫌ってわけじゃないのね?」
「ああ、最近ミナとゆっくり話もしてないしいい機会だ。」
しかし、なぜ今になって俺の意思を聞いてくるんだ?
いつもなら俺が嫌がろうが無理矢理引っ張りまわしてたはずだ。
「なぁ、何かあったか?」
「どうして?」
「ミナが俺の意思を聞こうとするし、何より俺が嫌だといったところで引っ張りまわすのがミナだろ?」
「それは・・・・」
これは地雷だったか?
いや、つい2日前までは普通だった。
2日で変わったことといえば、天笠か。
あの女、ミナに余計なこと吹き込みやがったな。
「ミナ、誰に何と言われようがミナはミナのままでいてくれ。
それが俺を苦しめていることになっても、それは必要なことだ。」
「はぁ、レンには隠し事できないわね。」
「ミナは妹みたいなもんなんだからいちいち俺のことなんか気にしなくていいんだよ。
兄は妹の我儘を聞いてやる義務があるからな。」
あくまでも俺ができること限定だけどな。
できるだけ、兄妹間に男女の問題を持ち込むのは止めてほしい。
「私の兄さんはジンだけよ。
レンは私の夫になるんだから。」
「それじゃあ、まずは妹から抜け出せるようにならないとな。」
最近は我ながら完璧に妹として見れてるからな。
それが妹として見れなくなったら即落ちるな。
こう言ってはなんだが俺が死んで悲しませないなんて無理だろう。
それくらい深くかかわりすぎた。
だからと言ってはなんだが、フリッグやアリスと違って俺が死ぬことを認めてくれるミナとなら付き合っても問題はない。
だがそうなると残った2人を悲しませてしまうからな。
俺が俺の意思でミナが好きになるまでは無理だな。
side ミナ
敵わないなぁ。
たぶん、今の私じゃあ一生レンに勝てない。
事実、レンに勝ったこともないしね。
気付けば好きになっていて、ずっと追いかけてきたけど全然振り向いてもくれない。
惚れた方が負けだっていうけど、本当に完全敗北ね。
今日だって、ちょっと言われただけで落ち込んで、レンに励まされて、また好きになって・・・・
レンに助けられて、支えられてるのは私。
これじゃあ妹扱いされても仕方がないわね。
よし、頑張ろう。
レンに必要とされるんじゃなくて必要不可欠な存在になってレンを見返そう。
とりあえず今日のデートね。
いつもみたいに思いっきり振り回してあげよう。
side out
「それで、今日はどこに連れて行くつもりだ?」
「そういえばまだ言ってなかったわね。」
どうやら持ち直したみたいだな。
それはそれで大変なんだが顔を曇らせているよりはましだ。
「私の家よ。」
最近はよく耳が悪いんじゃないかと思うことばかり聞いてる気がするな。
言い換えれば現実逃避をしたくなるようなことということだ。
「もう一回言ってくれ。」
「私の家よ。」
やはり聞き間違いではないらしい。
別にミナの家なら何度か行ったことはあるが、今回はミナの私室ということだろう。
ちなみに、俺は今までフリッグやアリスの私室にすら入ったことはないぞ。
入った瞬間、押し倒される可能性が高いからだ。
ミナなら大丈夫だとは思うが前例があるからな。
「心配しなくても押し倒したりはしないわよ。」
嘘を言ってるようには聞こえない。
だが、ミナはこれで感情の起伏が大きかったりするからな。
何かの拍子にスイッチが入るかもしれない。
「信用できないなら拘束しておいてもいいわよ。」
「俺にそんな趣味はない。
・・・・・分かった、信じるよ。」
いざとなってもミナなら抑え込むことくらいできるだろう。
いくら古代魔法を使えるといってもあれは狭い部屋の中で使えるものじゃないしな。
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「それで、ここで何をするつもりなんだ?」
読み通りというか当然の成り行きでミナの部屋に通された。
ミナの部屋は、なんというか本棚に難しそうな本ばかりあって社長の部屋みたいだ。
それに、部屋一つに風呂やトイレなんかも完備してる。
総じていうと年頃の女の子の部屋じゃないな。
「それより、飲み物は何がいい?」
「適当に頼む。」
「それじゃあ、紅茶でいいわね。」
部屋は整頓されているし、こまめに掃除はされてる。
家事全般できるって言ってたくらいだから自分でやってるのか。
・・・・・って、いつもの癖で周りの情報を集めようとしてしまうな。
それで、助かった時もあるから止めるつもりないが流石に妹の部屋にまでやることじゃないか。
「お待たせ。」
こういうことを自分でやれるってとこがお嬢様らしくないよな。
そのあたりもミナらしいと言えばらしいんだが。
「結局、今日は何をするつもりなんだ?」
「レンに私のことを知ってもらうと思って。
レンなら部屋を見ただけである程度のことがわかるでしょう。」
部屋の中を見回していたとこばれてたか。
「ねぇ、レンは私のことどんな風に思ってる?」
「そうだな、頭はいいし、運動能力も低いというわけじゃない。
何でもそつなくこなすし、自分ができることの範囲をわきまえてる。
その反面、感情の起伏が大きく一度冷静を欠くとなかなか冷静になれない。
いつもは勝気な分、冷静を欠くと熱くなったり、逆に極端に落ち込んだり幼児退行したりするな。」
とくに、俺に関することについては冷静になりにくい。
今日がいい例だな。
「まとめると頼りになるけど、どこか危なっかしい妹だな。」
「喜んでいいのか微妙な評価ね。
そういえばレンのタイプってどんな娘なの?」
ミナのことを知ってもらうために呼んだんじゃなかったのか?
いつの間にか俺への質問に変わってるぞ。
まぁ、いいか。
「俺も男だから容姿は良い方がいい。
体形は極端に太ったり痩せたりしてなければ大丈夫かな。」
「範囲が広すぎるわよ。
もうちょっと絞れないの?」
確かにはっきりしたことは1つも言ってないな。
「ミナはその範囲に入ってるから心配するな。」
「~~~~~っ!!」
おお、面白いくらい真っ赤になっていく。
このあたりが見ていて飽きないというか、可愛い妹に見えてしまうんだよな。
「・・・・・ずるい。」
そんな顔で睨まれても可愛いだけだぞ。
『お兄ちゃん、お姉ちゃんが!!』
「どうした!!」
あの女、フリッグに何かしやがったら俺の持てる力のすべてを持って地獄に叩き落としてやる。
「・・・・・・シスコン。」
そんな冷たい目で見るな。
本気でいたたまれなくなる。
「それで、何があったんだ?」
『お姉ちゃんがお姉さんに抑え付けられて何か言ってるみたい。』
アリスでも気配を悟られない位置からじゃあ音は拾えないか。
『き・み・を・わ・た・し・の・も・の・に・し・た・い。』
「アリス、何を言ってるんだ?」
『読唇術だよ、ギルドのお姉さんに教えてもらったんだよ。
流石に何をしゃべってるかは雑音で聞こえないけど唇の動きは見えるから。
それで、何を言ってるかある程度分かると思う。』
本当にあの人はアリスに何を教えてるんだ。
それにしても天笠の奴本気だな。
これってデートになるんですかね?