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生命の結晶

「明日から私も行きます。」


「私は忙しいから行けないから頼むわよ。」


もうお決まりのパターンと化してるが俺が明日も行くと言ったらこうなった。

ちなみに今日のことも3人に許可をもらってから行ったぞ。

そうでもしないと勘違いされて酷い目にあわされることは目に見えてる。


「あっ、レン、3日後は空けといてね。」


・・・・・もう嫌な予感しかしない。


「一応聞いておくが、なぜだ?」


「デートするからに決まってるでしょう。」


フリッグが何も言ってこないってことは懐柔済みか。

どうやって懐柔したか聞いてみたいな。


「拒否権は?」


「そんなものないに決まってるでしょう。

それともフリッグとアリスにはサービスできて私にはできないって言うの?」


そう言われると何とも言えない。

まさか、フリッグをちょっと無視しただけでここまで話が広がるとは・・・・


「それじゃあ決まりね。

デート先は行ってからのお楽しみよ。

念を押しとくけど、邪魔はなしよ。」


「分かってます。

私はレンに必要だって言われたんですから、デートの一つくらいどうってこと・・・・・」


ここまで言ってることとやってることが違うってのは初めて見る。

空気が重くて窒息しそうだ。


「いいですか、絶対に手を出してはいけませんよ!!

レンが抱いていいのは私だけなんですからね!!」


これは邪魔に入らないのか?

・・・・・まぁ、これくらい日常茶飯事か。


「もちろん私は手を出しても一向に構わないわよ。」


2人ともこう言ってるけど実際になったら真っ赤になっておとなしくなるんだろうな。

からかってやりたいんだが逆上して押し倒されるだろうからしないが。

それにしてもこれだけ騒いでいても黙々と血を飲んでるアリスはすごいな。


「とにかく、レンは私の物なんです。

私は浮気なんて絶対に許しませんよ。

もし、浮気なんてしたら監禁して、記憶を弄って、私に傾くように感情を操作して、二度とほかの女に目が向かないよう調教しますからね!!」


恐ろしい言葉のオンパレード。

これだからヤンデレは・・・・

しかも、それを実行できる能力があるから本当に怖い。


「とりあえず明日はフリッグも来るってことでいいんだな。

そうなるとアリスは「アリスも行くよ。」分かった。」


血を飲んでても俺にだけは反応するんだよな。

これは意外と嬉しかったりする。


「で、今日は3人で来たと。」


「こればかりは俺ではどうしようもないから諦めてくれ。」


フリッグのことを知ってるなら別にいいんだが、知らない奴に事情を説明すると尻に敷かれてるとしか思えないな。

・・・・実際そうだな。


「私は構わないよ。

賑やかな方が気がまぎれる。」


表向きは立ち直ってるように見えるが、やはり根は深いようだな。

これで祭りの最後を飾るのは無理か。


「それにしても、風峰の周りは綺麗どころばかりだ。

あの姫といい彼女たちといい、もしかしたら私も狙ってるのかい?」


「馬鹿を言うな。

そんなことをしたら俺は二度と光を見れないかもしれないんだぞ。」


だから、今すぐにその殺気を抑えろ。

明からな冗談にまで反応するな。


「言っておきますが、レンは私の物です。

レンを誘惑したらただでは済みませんよ。」


「と、彼女は言ってるが。」


「あながち否定できないところが怖いな。

一応この2人は俺の妹ということになってる。」


よくよく思い出すとフリュネには引っ張りまわされ、ミナの旅行には連れて行かれ、アリスに血を与えたり、女が関わると3人というかほぼフリッグに許可を取る必要がある。

俺の平穏はどこに・・・・


「心配しなくても今のところそんな感情はない。

あまり余裕があるわけじゃないから。」


「『今のところ』ですか・・・・」


分かってるから睨むな。

こいつわざと言いやがったな。


「とはいえいつまでもこうしているわけにはいかないから、近いうちに答えは出すつもりだよ。

あまり風峰を独占していては恨まれそうだ。」


いちいち皮肉ったことを言いやがって、これで落ち込んでいる状態なら立ち直った時が怖い。

まぁ、立ち直ったら関わりがあるかどうか分からないがな。


「そういえばそこの小さい子は随分静かだけど具合でも悪いのか?」


「アリスは人見知りなんだ。

気にしないでくれ。」


半分はそれであってるんだが、もう半分は俺の膝の上に座ってるからだろう。

アリスにとって俺に引っ付いている時間は至福の時らしい。

・・・・・自分で言ってて恥ずかしくなってきた。


「そういえば、リンネはここに来るまで何をやってたんですか?」


こいつの空気を読めないとか、気遣いのできなさには思わず脱帽したくなる。

顔をうずめてたアリスでさえも信じられないって顔してるぞ。


「ええと、私何かまずいこと言っちゃいました?」


頭は悪くないはずなのにこれが神と人の差なのか?

これは一度言っておく必要があるな。


「いや、何もおかしなことはないよ。

気になるのは当然だ。

・・・・・そうだな、君になら教えてもいいか。」


まさかの展開、やっぱりこいつはこののままにしておこう。


「風峰、これから私は彼女に教える。」


つまり、聞かなかったことにしろと。

そこまで念を押さなくても最初に言われたからどうする気もない。


「さて、話自体はありふれたものだと思うよ。

私にはヴァイオリンと言っても知ってるかわかないけど、そういう楽器を弾いている母がいてね。

それも、世界でそこそこ名が売れているほどの腕前だ。

その影響からか私も小さいころからヴァイオリンを習い始め、いろいろな賞を貰ったりもした。

ここまでは平和で幸せな時間だった。

私が15歳になるころ母が病気で入院、もうヴァイオリンが弾けないくらい衰弱し、一つの夢を私に託した。

内容はあるコンクールで一番になること。

それから私は一心不乱にヴァイオリンを弾き続けたよ。

あらゆる物を捨ててまで母が願った夢を生きている間に叶えてあげたいと。

でも、現実は優しくはなかった。

1年後、母は他界、それでも私にはもうヴァイオリンしかなかった。

せめて、母の願いは叶える、それだけが私を生かしていると言っていいくらいにね。

そして、それか1年後、努力の甲斐あってようやくそのコンクールに出られることになった

が、その一週間前に突然この世界に飛ばされ、あとは君たちが知ってる通りだ。」


俺は聞いてないことになってるから何も言えない、言えたとしても何を言えばいいか分からないがな。

さて、フリッグはどうするか見ものだな。


side フリッグ


ええと、なんでしょうこの重い話は・・・・

レンに助けを求めたいんですがレンは口を出せませんし。

かといって黙ってるわけにもいかないです。

今更ながら聞かなければよかったです。


「別に気の利いたことを言わなくてもいい。

ただ聞いてくれただけで十分だ。」


そ、そういわれましても、はいそうですかというわけには・・・・・

何か、何か・・・・


「そ、そのヴァイオリンを弾いてくれませんか?」


「残念だが肝心の楽器がなくては弾けない。

この世界にあるかもわからない。」


ええと、リンネの世界から情報を読み取って・・・・・・

あっ、これですね。

いろいろありますが、一番高そうなものでいいでしょう。

これを複製して・・・・


「これでいいですか?」


「これは・・・・これをどうやって手に入れたんだ?」


そういえばリンネは私が神だって知らないんですよね。

レンからはできるだけ知られないようにって言われてますから


「えっと、秘密です。」


「まぁいい、何かリクエストは?」


「お任せします。」


「それじゃあ一曲。」


ふぁ、言葉に表せないくらい素晴らしいです。

これがリンネの生きてきた証。

やっぱり、人とは素晴らしい生き物です。


「ふぅ、どうだった?」


「凄いです!!

上手く言葉にできませんけどとにかく凄かったです!!」


「ありがとう。

だが、もう弾くことはないだろうけどね。」


「どうしてですか?」


あんなに素晴らしいものはもっと多くの人にも聞かせるべきです。

それなのに


「もう、私には弾く理由がない。

以前の私ならヴァイオリンが好きで弾けていたが、今の私にとってこれは生きる目的を果たす道具でしかない。

そして、その目的を失ってしまった今、その役割も失ってしまった。」


「それなら私の為に弾いてください。

私に聞かせることを目的にして、これからも弾き続けてください。」


私にこの音を捨てさせることなんてできません。


「君の為にか・・・・

確か、フリッグといったな。

私にとってヴァイオリンは目的を果たすための道具であると同事に天笠鈴音そのものだ。

ヴァイオリンがない私は私ではない。

フリッグの為に弾き続けるということは私のすべてを背負うことになるぞ。」


リンネの歳は知りませんが20歳もないでしょう。

たった20年、神である私にとって刹那の時と言っていい程の時なのに重いです。

これが命の重さですか。


「背負って見せます。

その音を私の為に奏でてください。」



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