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久しぶりの・・・・

「ちょっとは落ち着いたか?」


「うるさい!!

私は、私はずっとあの日の為に・・・・」


夢半ばで理不尽にその夢を閉ざされる。

ありふれた悲劇だがその苦しみを知ってる者はどれほどいるんだろうか。

俺は死という願いをフリッグに壊されたが壊れたものは直せる。

だが、失ったものはどうしようもない。

だからと言ってこのまま暴れさせておくわけにもいかないんだけどな。


「なぁ、よかったら帰りたかった理由を教えてくれないか?」


「・・・・うるさい。

もう終わったんだ、終わってしまったんだ!!」


「っ!!」


第六感も案外捨てたものじゃないな。

見えない攻撃でも躱すことができた。

そう何度もやれと言われてできると思えないがな。


「仕方ない。

少々荒療治になるが無理やり落ち着いてもらうぞ。」



side フリッグ


はぁ~、レンとキスしたかったですね・・・・

ムスペルヘイムでしたと言えばしたんですがあの時は私もどうかしてましたからゆっくりキスを堪能することもできませんでした。

そう考えると最後にキスしたのはニヴルヘイムのデートの時ですか。

また、あの時のようなキスがしたいです。


「いったいレンは何をするつもりなのじゃ?」


「分かりません。

ただ、私が怒るようなことをするつもりみたいですけど。」


はっ、もしかして無理やりキスして落ち着かせようとしているのでは!!

もしそうなら許しませんよ。

約束なんて知ったことではありません。

手始めにレンを監禁して1日中キスしましょう。

ふふっ、覚悟はいいですね。


「ごぶっ・・・・」


・・・・・・え?


「レン!!」


あの女!!


「落ち着くのじゃ!!」


「離してください!!

よくもレンを!!」


殺す

レンを傷つける者は例外なく殺す


「落ち着かぬか!!

レンとの約束を忘れたか!!

それにレンならばフリッグの加護で死ぬことはないじゃろう!!」


「・・・・っ。

すみません。」


「落ち着いたのなら少し神力を抑えよ。

流石に妾がやったといっても無理がある力じゃ。」


「・・・・・はい。」


レン、あとでしっかりと説明してもらいますよ。


side out


ああ、そういえばまともに死を実感するような痛みを味わうのはアリスと戦った時以来か。

痛いことは痛いがこの程度で死ねるのならと思ってしまうな。

死に伴う痛み、それが怖くて自殺を踏みとどまる人も多いが俺はその程度じゃ止まれないな。


「・・・おい、おい、嘘だろ?

返事をしてくれ。」


どうやら作戦も成功のようだな。

人を殺したこともない奴が故意的にではないとはいえ人を殺してしまったら流石に動揺する。

これで早々暴れだすことはないだろう。


「死なないでくれ、お願いだ、返事をしてくれ!!」


そろそろ起きるか。

あまりやりすぎると次は自暴自棄になって自殺しかねない。


「少しは落ち着いたか?」


「お前生きて・・・・」


あれだけ血を流せば普通なら死ぬな。

今でも信じられないといった顔をしてるし。


「詳しい説明は省くが俺はあれくらいじゃ死ねない。

めちゃくちゃ痛いがな。」


「よかった、本当に良かった。」


どうやら悪い奴ではないみたいだな。

これなら力に溺れるようなことはないだろう。


「レン!!」


ああ、絶対に怒ってるな。

乱入してこなかったってことは多少落ち着いているようだがあとでどんなことをさせられるか・・・・・


「説明してくれますよね?」


疑問形だが目が説明しろと言ってる。

美少女なだけに睨まれるとかなり怖い。


「説明するのはいいんだがとりあえず城を直せ。」


「嫌です。

レンがキスしてくれたら直してあげてもいいですよ。」


「レン、何をしておる、早くキスでもなんでもせぬか。」


もう放っておこう。

彼女の方も気になるしな。


「落ち着いたか?」


「ああ、すまない・・・・」


かける言葉が見つからない。

なにせ、生きる目的を失ったんだ。

俺のような生きる目的を持とうともしない奴が何を言ってもただの綺麗事だ。

彼女より酷いことを経験した奴が言えば効果はあるだろうがないものをねだっても仕方がないか。


「私はこれからどうすればいいんだろう・・・・」


「無視なんてしてもいいんですか?

本当に直してあげませんよ?」


空気を読め。

この空気の中そんなことを言えるってのは逆に凄い。


「俺からは何も言えない。

もし、死を望むなら俺が幕を引いてやる。」


できれば選んでほしくないが俺には止める権利なんてない。

その時は・・・・


「あの~、レン?

軽くでいいんですよ、触れるだけのキスでいいんですよ。」


「私がここに連れてこられたのはただの偶然なんだろう?

誰も悪くない、それは分かってる。

なら、私はこの感情をどこにぶつければいい?」


これが誰かの仕業なら復讐という目的を、やり場のない感情を向けることができる。

だが、実際は召喚した人たちも純粋に祭りの行事で召喚しただけ。

俺が止めてしまった以上、次に暴れだしたらもう殺す以外では止まらないだろう。

だが、逆の道をとるとなると夢が閉ざされたことを認め、受け入れなければならい。

それがどれだけつらいことか、俺も似たような経験をしたがその比じゃないだろう。


「なぁ、教えてくれ、私はこれからどうすればいい?

何を支えにして生きていけばいいだ?」


「これ以上無視するなら大変なことになりますよ。

いいんですか?

本当に大変なことになりますよ。」


「俺は死にたがりだ。

そんな俺が他人に生きる目的なんて見つけてやれない。

もし、生きる目的を見つけられたなら協力くらいはしてやる。

・・・逆に死にたくなった時もな。

俺は死ぬなとは言わない。

死は一番確実な逃避だからな。」


死んでしまえばすべてから解き放たれる。

痛みからも苦しみからも


「・・・・・少し考えさせてくれ。」


「ああ、しばらく俺たちはこの街にいるだろうから考えがまとまったらいつでも声をかけてくれ。」


最悪の事態は避けられたか?

いくら本人が望んでいるとはいえ人殺しはやりたくない。


「そんなわけだフリュネ、しばらく部屋を貸してやってくれ。」


「それはいいのじゃが・・・・・」


ん?


「ぐずっ・・えぐっ・・・」


・・・・・・まだ生きてたのか泣き虫設定

いい加減安定してきたと思ってたんだが情緒不安定なのは相変わらずだったか・・・


「うっく・・・レン・・・レン・・・」


「俺が悪かった。

だから、泣き止んでくれ。」


俺も相変わらず女の涙には弱いな。


「ぐすっ・・・いいですか、私は寂しいとすぐに泣いちゃうんですからね。

もう、無視なんてしないでください。」


「分かった、分かった。」


「もうちょっとぎゅっとしてください。」


ここはおとなしく従っておくか。

わざとではないといえ、泣かしてしまったわけだしな。

しかし、罪悪感を感じる反面、もうちょっといじめたいと思ってしまった。

やっぱり俺はSなのか?


「はぁ~、レンの匂いは安心します。」


フリッグは確かに美少女なんだがこうやって抱きしめててもまったく動揺も興奮もしない。

それ自体はいいことなんだがここまでなんともないと逆に怖い。

俺はノーマルだよな?

フリッグは妹だから興奮しないだけだよな。

うん、きっとそうだ。

・・・・そうだよな?


「・・・んっ、レン、私変な気分に・・・」


こいつは・・・


「痛っ、女性に暴力は感心しませんよ。」


「馬鹿なことを言うからだ。」


side フリュネ


「この部屋じゃ。」


「すまない、城を壊したのにここまでしてもらって。」


「気にするでない。

城はフリッグが直して帰りおった。

それにレンには借りがあったからそれを返済できて妾としては大助かりじゃ。」


それに、この者を押さえつけたということで妾の株も上がるしのう。


「そのレンとはどういう奴なんだ?」


・・・・これはまずいかのう。

これ以上レンに負担をかけては妾の部下としての仕事に支障が出るかもしれぬ。

それを抜きにしてもこれ以上周りに女が増えればフリッグだけでなくミナやアリスもいい気はせぬじゃろう。


「妾の部下になる予定の者じゃ。

詳しいことは本人から聞くがよい。

そして、これは忠告じゃ。

あまりレンに関わりを持たぬことじゃ。」


とは言ったもののもうすでに遅い気がするのう。


「それはどうしてだ?」


「今のお主は支えがなく何かに縋りたいはずじゃ。

そこに体を張って止め、こうやって落ち着かせたレンを男して見てしまわぬと断言できぬ。

それは何よりレンを苦しめることになる。」


それにこの者フリッグと同じ感じがする。

周りに頼れるものがなく誰にも頼らず生きてきたフリッグと同じような境遇を過ごしてきたような雰囲気。

そんな者をレンは放っておけぬ。


「言いたいことは分かった。

その忠告は受けっておく。」


「そういえばお主の名はなんというのじゃ?」


天笠鈴音(あまがさ りんね)だ。」


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