ムスペルヘイム その② 囚われのレン
「だから、俺は連れの人が絡まれて助けようとしただけだって言ってるだろう。」
「嘘をつくな!!
お前が怪我をさせた男たちは少し話を聞いていたらいきなり殴られたと言っているぞ。」
「それじゃあ、証人を連れてくればいいだろう。
それではっきりする。」
「あの女性も同じことを言っている。」
話しにならない。
どうやっても俺を犯罪者に仕立て上げるつもりか?
「今日はここまでにしておいてやる。
続きは明日だ。」
はぁ、どうしたものか・・・・
side ミナ
「はぁ!?
レンが連れてかれたですって!!」
まさか、本当に巻き込まれるなんて。
「はい。
私が弁明しようとしても門前払いで・・・・」
ただ連れて行かれたってわけじゃなさそうね。
でも、レンを犯罪者にしてどうするつもりかしら?
「こういう時こそ権力の出番よね。
そんなわけで頼むわよフリュネ。」
「いいじゃろう。
レンには借りを返さねばならぬからの。」
「そんなわけだからそこの2人は落ち着いて。」
さっきから本気で切れかけてる。
特にアリスはレン至上主義だから下手すれば強引にレンを連れ出すかもしれないわね。
そうなれば今度は本当の犯罪者だ。
「分かってます。
アリスも落ち着いてください。
フリュネがなんとかしてくれますから。」
「・・・・・うん。」
ほっ、フリッグがまだ冷静でいてくれて助かったわ。
あの2人が暴れ出したら誰も止められないでしょうし。
「とりあえず行きましょうか。」
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「すみません。
いくら姫様の指示でも容疑者を解放することはできません。」
「妾の言うことが聞けぬと申すか?」
「申し訳ありません。」
まさか、フリュネの言葉を聞き入れないなんて。
もしかして・・・・・
「ねぇ、これって・・・」
「十中八九、王族が絡んでおるな。」
それもフリュネと同等の地位にいる存在。
レンが聞いたら嘆きそうな事実ね。
「どうするつもりですか?
このまま何もしないというなら記憶を操作してレンを連れ出しますが。」
私は別にそれでいいんだけど、それを知ったレンがどう思うかよね。
「本当にごめんなさい。
私を助けたばっかりに。」
「ユーリアさんは気にしなくていいんですよ。
レンがそんな場面を見たら助けないはずありませんから。」
それに、レンが助けなかったら兄さんが酷いことになってただろうしね。
『ああ~、聞こえるか?』
「「「「レン!!」」」
そういえば非常用に渡してたんだった。
『悪いんだが、フリュネの権力で出すよう言ってくれないか。』
「それじゃが、どうにも王族が圧力をかけておるようで妾でも出来ぬようじゃ。」
『俺を捕まえてフリュネの評判を落とすつもりか?
どこまで暇な連中なんだ。』
本当よね。
私たちのような街の長の子息子女でさえも経験を積むためにいろいろな仕事をまわさてるのに王族は遊んでばっかりだもの。
『フリッグ、アリス、絶対に強硬策に出ようなんてするなよ。
そんなことをしたら本物の犯罪者になってしまうからな。』
「あと2日待ちます。
それまでにレンが出て来れないというのなら無理矢理にでも連れ出します。」
「アリスもお姉ちゃんと同じ。」
『分かった。
俺が出るまではミナかフリュネの指示に従って動いてくれ。
出来る限り俺も手を貸すが見張りが来てる時に使えないからな。』
後2日、別にフリッグたちならお尋ねものになっても誰も捕まえられないと思うけどそんな物にならないにことしたことはないわね。
『とりあえず、ユーリアさんに絡んでいた連中を見つけてくれ。
そいつらに本当のことを吐かせれば俺の無実は証明できる。』
「でも、あの場にいた人は全員連れて行かれたはずよ。」
『牢屋に入れられる時に一通り見てみたがそれらしい奴等はいなかった。
王族が絡んでいるとなると俺に罪をかぶせる為に雇われた奴らだろう。
最悪殺されている可能性はあるが探してみてくれ。』
死体に口なし、余計な事を喋られる前に殺されてる可能性の方が高い。
アビスやあの詐欺師なら確実に殺してるわね。
「しかし、顔を知っているのはユーリアだけじゃ。
全員で行動しては見つからぬかもしれぬぞ。」
『それについては考えがある。
俺としてはあまりお勧めしたくはないんだがな。』
side out
後はあいつらに任せるしかないか。
それにしても、つい先日に見方を変えれば世界を救ったともいえることをしたってのに今度は犯罪者か。
まったく、人生なにがあるか分からないな。
「出ろ。」
「随分早い出所だな。
俺が無実ってことが分かってくれたのか?」
こんな最初にヤがついてる職業みたいな奴がここにきてる時点でそれは無いと思うがな。
「で、俺をどうするつもりだ?」
「・・・・・」
何も喋らないか、出来るだけ情報を引き出しておきたかったんだが無理っぽいな
だからと言って何もしないわけじゃないんだがな
「これは俺の推測だが俺を犯罪者に仕立て上げたいのは王族の誰かだ。」
「・・・・・」
「俺が問題を起こせば俺が仕えてるフリュネの評判を落とすことになる。」
「・・・・・」
「しかしだ、それを狙っていてもなかなかぼろを出さないことに痺れを切らし、さらにフリュネがさらに功績を立ててることに焦り無理矢理行動を起こした。」
「・・・・・」
「だが、無実の俺を無理矢理犯罪者にするにはどこかで必ずぼろが出る。
なら、ぼろが出る前に俺を裁き公表する必要がある。」
「・・・・・」
「だがこれにも問題がある。
俺を裁くと言っても、まず証拠がない。
今でこそ適当なことを言って拘束はしているものの詳しく調べられれば真実なんてすぐに明らかになる。
俺を嵌めた男たちを証人に連れたところでユーリアさんが否定すればそれで終わりだ。」
「・・・・・」
「そうなると、俺を裁くには自白させるしかない。
つまり、俺が連れて行かれる場所は拷問部屋ってとこか?」
「そこまで分かっておきながらえらく余裕だな。」
やっと反応してくれたか。
もしかしたら推測が外れて見当違いのことを自慢げに話してる痛い人になるところだった。
「そうでもないさ。
自白させるつもりだってことは分かっていたから心構えが出来ていただけだ。
それよりも、こうも早く行動を起こすってことはどうやらこの状況をひっくりかえせるジョーカーがあるみたいだな。」
「俺はお前を自白させろとしか聞かされていなんでな。」
なるほど。
つまり、外部から雇ったってことか。
フリッグ達は無駄骨だな。
「それなら今言ってやる。
俺がやった。」
「・・・・・どういうつもりだ?」
「拷問のプロ相手に俺が耐えられるはずがない。
それなら痛い目を見る前に白旗をあげた方がいいだろう?
それにあんたも無駄な苦労をかけずに済むしな」
いくら死なないとはいえ痛みを感じないわけじゃない。
拷問なんて受けたら5分で白旗を揚げる自信がある。
「いいのか?
これでお前は犯罪者だぞ。」
「確かにこのままいけばな。
例え俺の自白があったとしてもジョーカーを手に入れれば引っ繰り返せるかもしれない。」
それに言ってしまえばジョーカーは一枚じゃないんだよ。
俺はすでにこの状況を引っ繰り返すことができるジョーカーを持ってるからな。
「いいだろう。
後でクライアントの前で自白してもらう。」
「ああ、ご苦労様。」
もう一枚のジョーカー、これはたぶんあの男たちのことじゃないな。
あんな物騒な連中を雇ってるくいだからすでに始末されてるだろう。
「なら、ジョーカーは・・・・」