終結
終わったか・・・・
「また一から振り出しですか。
この計画は3年かけてここまでやってきたというのに。」
最後の最後まで嫌がらせのつもりか?
まぁ、確かに罪悪感は感じるが今回はいつもよりましだ。
これもこいつ等のおかげか。
「これに懲りたらこんなことはもう止めることだな。」
「それはありえませんよ。
私が私でいる限り止まることはないでしょう。」
こいつが死ぬまで一生付き合い続けなきゃいけないのか。
フリッグに記憶を消してもらうってものも1つの手だな。
「嫌でも止まってもらう。
未来を視る力だけでそう簡単に脱獄はできないだろう?」
投獄はこの3人がいる限り避けようのないものだからな。
「ええ、簡単には出来ないかもしれませんが不可能ではありませんからね。
いずれまた会いましょう。」
「俺は二度と会いたくなんてないな。」
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宝探しの一件から早一週間、そろそろ次の旅先が決まるころだな。
あの後、あの男は投獄。
フリュネは『スルト』を壊滅及び『ニーズヘッグ』構成員に加え幹部に近い奴も捕まえて評価は鰻登り。
他の継承候補は読み通りやっきになって手柄を立てようとしているから犯罪組織もより一層表には出にくくなっただろう。
「レン、どうやらあの男が脱獄したようじゃ。」
「いくらなんでも早すぎないか?
あいつを投獄した監獄は誰も出したことないところだろう?」
「どうやらと動く前から仕掛けられておったらしく簡単に逃げられたそうじゃ。」
未来が視えるんだから確かにそれくらいの前準備くらいはやってるか。
「心配せずとも、また現れれば倒せばよいことじゃろう。」
「簡単に言ってくれる。」
もしあの男がフリュネやアリスと同等の駒を手に入れたとしたら簡単には勝たせてくれないだろう。
それでも負けてやる気はないがな。
「レン、フリュネ、朝ごはんですよ。」
「行くか。」
「そうじゃの。」
俺は俺の出来ることでこいつ等を守って行こう。
後99年と半年、俺が死ぬまでは・・・・・・
俺がこんなふうに思えるようになるとはちょっとまで前は思わなかった。
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「それじゃあ次の旅先を発表するわよ。
次はムスペルヘイム、ニブルヘイムの反対にある常夏の街よ。」
ムスペルヘイム、確か常夏の街ってことでリゾート地みたいなところだったな。
近くにはもちろん海があるしいろいろな娯楽施設なんかもあったりするそうだ。
付いた2つ名はそのまま娯楽の街。
「たまにはのんびりするのも悪くないと思ってね。
それについ最近、大きい問題が起きたから今回はちょっとした羽休めよ。」
「ミナ、熱でもあるんじゃないか?」
「・・・・私そんなにおかしなこと言った?」
「大切なミナが熱を出したかもしれないんだぞ?
そりゃ心配するだろう。」
宝探しの一件でミナをいじめるどころじゃなかったからな。
俺は恨みは忘れないんだよ。
「えっ!!
そ、その大切に思ってくれるのは嬉しいけど、なにもこんなみんなの前で言わなくても・・・・」
くっ、やはりフリッグとアリスからとんでもないプレッシャーが掛かってくる。
だが、ミナの真っ赤に染まった顔を見られればこれくらいは・・・・
「何を言ってるんだ、俺とミナの仲だろ?
そんなこと今更気にするな。」
「レ、レン・・・・」
そろそろ落ちをつけるか。
もう少しからかってもいいんだがいい加減2人からのプレッシャーがやばい。
「ミナはジンの妹なんだから俺の妹みたいなもんだしな。」
「そ、そうよね。
レンにとって私は・・・・・・え?」
「だから親友の妹で俺もミナのこと妹みたいに思ってるからな。
大切な家族が熱を出したら心配するだろ?」
「え?」
「どうしたんだ?
もしかして他のなにかと勘違いしたのか?」
ああ、これだこれ。
この羞恥で真っ赤に染まった顔でおろおろしてるこれが見たかったんだよ。
「レ、レンの馬鹿ぁぁ!!!!」
「行っちゃいましたね。」
「少しからかいすぎたか?」
フリッグとアリスがいなければもうちょっといじめられたんだが、やりすぎると幼児退行するからこれくらいでちょうど良かったのか?
「悪趣味な男じゃの。」
「お前にだけは言われたくない。」
お前こそ俺が上手くたちまわってなんとか均衡を保ってる関係を面白がって崩そうとするだろうが。」
「で、ムスペルヘイムにはいつ行くんだ?」
「いつもと同じ一週間後です。
移動もいつもと変わらずミナの車で、それと今回はジンも同行するそうです。」
最近は彼女の方に飯を食いに行ってるらしいからこの場には来なくなったんだよな。
「ちなみにジンの彼女さんも来るそうですよ。
なんでも婚約関係で婚前旅行に行くらしいです。」
俺が知らない内にそこまで進んでいるとは・・・・
しかし、これはまずいな。
ジンとその彼女がいちゃついてることを見てフリッグたちが刺激される可能性がある。
このタイミングでミナをいじめたのは失敗だったかもしれないな。
「結婚ですか、羨ましいですね。」
この流れはやばいな。
「そういえばあの男の名前ってなんだったんだ?」
「ふむ、式は妾が開こう。
アースガルドにはいい教会があるからの。」
この野郎、話を逸らそうとしてるってのに・・・・
「レ「フリッグ、この前頼んだことはやっておいてくれたか?」」
「・・・・はい。
まさか、あそこまでしつこいとは思いませんでした。」
よし、なんとか逸らせたか。
「っち、あの男の名はアニム・メストじゃ。」
舌打ちしやがった。
分かってはいたがここまで露骨に態度に出されると流石に殺意が湧くな。
side アニム
「ふふっ、『妖精の導』が破壊されることを知っていて本物の近くで人を集めるわけありませんよ。」
偽物が壊された瞬間に本物の方に集めた魔力が行くように仕掛けを打っておけば私が脱獄した後起動できますしね。
流石の彼もここまでは読めないでしょう。
「さぁ、私に新しい物語を読ませてください『妖精の導』よ。」
新しい流れが紡ぐ物語を。
「・・・・・・これは。」
『残念だったなこの詐欺師。
あれが偽物だったことはお前が堂々と『ニースヘッグ』を襲撃した時に分かってたんだよ。
だから、お前が投獄された後魔力の流れをたどって破壊させてもらった。
あんたの願いは悉く俺が壊してやるよ。
レン・カザミネより』
「ふふっ、これは一本取られましたね。
しかも、その場で破壊せずにわざわざ脱獄した私が見ることを予測してこの手紙を置いておくとはなかなか鬼畜なやりくちじゃないですか。」
いいでしょう、レン・カザミネ。
「次の舞台で再び会いましょう。
楽しみにしていますよ。」
side out
次話はミナのターンです