宝探しに行こう
平和だ。
一週間前にフリュネに拉致られた事を除けば怖いくらい平和だ。
だが、それを口にはしない。
その行為は明らかにフラグを立ててしまう。
だから俺は次の旅行まで静かにこの平穏を満喫しなければならない。
「平和ですね。」
「フリッグ、フラグという言葉を知ってるか?」
「レン、宝探しに行くわよ!!」
まるで計ったようなタイミングだな・・・・・
「一応聞いておくが拒否権はあるのか?」
「そんなものないに決まっておるじゃろう。」
「帰れ。」
「こんな鉄の塊で妾を倒せるとでも思うておるのか?」
俺の世界では銃弾を素手で掴む奴なんていないんだよ。
まぁ、だからこそ遠慮なく撃てるんだがな。
次は、ロケットランチャーでも試してみるか。
「本題なんだけど、最近何も起きないじゃない?
でも、二ヴルヘイムの時もこっちから動けば何かしら起きるみたいだから今回も何か行動しようと思ったのよ。」
「まて、お前等はなにもなかったかもしれないが俺はフリュネに拉致されて面倒な集会に参加させられるというしっかりとした面倒事があったぞ。」
「あれくらいでぐちぐちと、器の小さい男じゃの。」
最近本気でフリュネに殺意が湧くことが増えてきた。
いったい誰のせいでここ最近俺が疲れてると思ってるんだ。
「私が楽しくなければ意味がないのよ。
そこで、前々から噂になってた『妖精の導』って言う水晶を探しに行きましょう。
なんでも、未来が見えるようになるって言われてるらしいわよ。」
とりあえずフリッグがいないときにミナはいじめよう。
これだけ振り回されてるんだ、それくらいは許されるだろう。
「その噂の出所は確かなのか?」
「さぁ、レンがこっちに来る前からあった噂で、結構な人が探しに行ってるみたいよ。
でも、そこって魔物が強いから半端な人は近づけないし、強くても長居はできないそうで誰もまだ見つけられてないそうよ。」
胡散臭い。
誰も見たことないのに随分具体的な噂だな。
誰かが適当なデマを流しただけじゃないのか?
「例え噂だけだとしても行動を起こせば何か起こるはずよ。
私の勘では結構大きな問題が起きるっぽいし。」
なぜ、そんな洒落にならないフラグを次々立てて来る。
行きたくないなぁ・・
生きたくないなぁ・・・
「言っておくが俺はお前等が何を言おうと俺は行かないぞ。」
拒否権がないなんて知ったことか。
少しは俺を労われ。
「私はどっちでもいいですよ。」
「アリスはお兄ちゃんが行くならいく。」
今のところ賛成が2票、反対2票かここは確実フリッグを引き込む。
「フリッグ、新しい料理をいろいろ教えてやるから宝探しなんて行ってる暇ないぞ。」
「本当ですか!!
それなら済みませんが私も反対です。」
勝った。
「これで3対2だ。
多数決には従ってもらおう。」
「フリッグよ、妾に力を貸してくれぬか?」
「・・・・・フリュネの頼みならば仕方ありませんね。」
くっ、この我が儘姫め、俺にとって迷惑極まりないことばかりしてるくせにしっかりとフリッグには借りを作ってやがる。
「3対2じゃな。
レンの負けじゃ。」
この我が儘姫、俺が多数決の話を持ちかけるのを読んでやがったな。
俺が勝ちを確信して多数決の話を持ちかけ、確実な言質を取った後フリッグを引き抜くとは・・・・
「お前は絶対にいつか泣かしてやる。」
「妾はいつでも受けてたつぞ。」
「話はまとまったみたいね。
場所はアースガルドの近くにあるそうで、そこに近くに小さな町があるそうだからそこを拠点にして宝探しに行くわよ。」
ミナはその内泣かせよう。
いや、でも幼児退行されたら面倒だな。
適度に手加減しながらからかうとしよう。
「出発は明日ね。
出発と言ってもアースガルドには空間転移でいくからアースガルドからなんだけど。」
前回行ったときに人気のないところに目印を置いてきたらしい。
便利なものだ。
「それじゃあ、私は準備があるから。」
「ふむ、妾も帰るとしよう。」
二度と来るな。
「すみません、レン。」
「気にするな。
俺としては借りたものを返さない奴の方が嫌いだ。」
だから、別にフリッグを恨んだりはしない。
恨むべきはあの我が儘姫だからな。
「ありがとうございます。
でも、いつか料理は教えてくださいね。」
「その内な。」
さて、俺も準備に取り掛かるか。
「お兄ちゃん、最近アリスに構ってくれない。」
服を摘ままれてるだけなのに動けない。
これ以上したら服が破けるし、アリスが寂しそうだな。
「俺だって構ってやりたいんだがなかなかな。」
厄介事には巻き込まれるしアリスばかり構ってるとフリッグとミナがうるさい。
「なら、今ならいいよね。」
そういえばフリッグは買い物に行ったんだったな。
「別にいいが、俺は何をすればいいんだ?」
「なにもしなくていいよ。」
「んっ!!」
やばい、ついに恐れていた事態が!!
恐れていた事態とは普通に押し倒されることだが、力で俺がアリスに勝てるはずがない。
つまり、アリスがやりたいようにされてしまう。
「お兄ちゃん、アリスはこんなにお兄ちゃんのこと好きだよ。
キスだけでこんなに嬉しいし、幸せになれる。
お兄ちゃんはどう?」
また答えずらい質問をしてくれる。
確かに気持ちいいことは気持ちいいんだがそれを表に出すわけにはいかない。
だが、あまり時間をかけてるとフリッグが帰ってくる。
この状況を見られれば俺だけでなくアリスまでまずいことになる。
「アリスはお兄ちゃんがいてくれればそれでいい。
お兄ちゃんがいてくれればなにもいらない。」
男としてここまで想われてくれていることは嬉しいんだがアリスの為にも俺は今応えるわけにはいかない。
「それは駄目だぞ、アリス。
今のアリスにはフリッグやミナ、ジンにフリュネだっている。
アリスはもう1人じゃないんだ。
だから、そんな寂しいこと言うな。」
「でもそれはお兄ちゃんがくれたものだよ。
お兄ちゃんがいなくなったら、また1人になっちゃうかもしれないよ。」
「もっと、他の奴のことを信じてやれ。
みんなアリスのことが大好きなんだ。
もちろん俺もアリスのことは好きだし出来るだけ傍にいる。」
しっかりしてると言ってもアリスはまだ10歳程度だ。
まだまだ、誰かに甘えたいに決まってる。
だが、それを俺一人にしてしまってはアリスの為にならない。
「アリスだってみんなのことは好きだよ。
でも、やっぱりお兄ちゃんは特別。
世界で唯一、アリスのことを助けてくれた人。」
困ったな。
意外と根が深いらしい。
この空気ならこれ以上のことはないが今のアリスを放ってはおけない。
そもそも押し倒されてる時点で動けないんだがな。
「アリス、俺がアリスの物になったらもう寂しくないのか?
そこにみんながいなくても。」
「寂しいと思う。
でも、それでお兄ちゃんがアリスだけを見てくれるならそれでいい。」
「なら、みんなに祝福されればそれが最高だよな。
俺がいて、みんながいる。
それが一番だろ?」
「うん。」
「それじゃあ、こんなことはしちゃ駄目だ。
待たせてる俺が言うことじゃないがな。」
「ごめんなさい。」
「うん、いい子だな。」
とりあえず何とかなったか。
これからはアリスが寂しがらないように出来るだけ構ってやらないとな。
「お兄ちゃん、大好きだよ。」
おい、相手はアリスだぞ、妹だぞ。
そのアリスにどうして見惚れてるんだ。
「お兄ちゃん、最後にキスしていい?」
「あ、ああ・・・」
「んっ・・」
やばい、アリスが滅茶苦茶可愛く見えてきた。
いや、今までも可愛かったがそれは妹としてだ。
今は女の子として見えてしまう。
「大好き。」
妹だからといって油断しすぎてた。
まぁ、妹と言っても血の繋がりなんて全くない義妹だから、むしろ良くここまで完全に妹として見てこれた俺も凄いが、これからは妹としてはもちろんだがもう少し女の子ということも視野に入れておこう。