初めての仕事
とりあえず今の気持ちを一言でいうと逃げたいだな。
よく考えればギルドの仕事って荒事がメインなわけで基本的に野郎しかいないわけだ。
なにが言いたいかというとそんな中、俺みたいな若造が女を引き連れて来ると視線で人を殺せるんじゃないかというくらいの冷たい視線が突き刺さってくる。
「どうしたんですかレン? 早く仕事を貰いましょう。」
お前はこの視線が気にならないのか?
さっきから俺の精神がガリガリ削られてるんだが。
「最初は簡単なのにしますか? 自分がどれくらい戦えるか知る必要もありますから。」
「あ、ああ、その辺はお前に任せる。」
「はい♪」
視線が背中に突き刺さってる。
視線って物理的に来るなんて初めて知った。
「申請も終わりましたし、行きましょう。」
ようやくこの重圧から解放
「女連れていい身分だなぁ~。」
されなかった。
それどころかめんどくさいのに絡まれた。
さて、どうやって切り抜けたものか・・・・
「おい、聞いてんのか?」
こういうタイプは反応すると逆につけあがるから冷めた反応を返せば興味を無くすはず。
「何か用d「レンを馬鹿にすると許しませんよ。」・・・・」
やりやがった。
俺が一番恐れていた事態、こいつが前に出ると
「はっ、女に庇われてやがるやつを馬鹿にして何が悪い。」
こんなふうになって、この馬鹿女は
「レンはあなたたちなんかよりずっと強いです!!」
言うと思ったよ。
こうなるともうどうしようもないな。
逃げたらこの街での仕事が取りにくくなるし、そもそも周りが逃がしてくれそうにない。
こうなったら開き直った方が得策だな。
「お前らこそ女に言い負かされる程度なのか?」
「てめぇ、女ともども殺されてぇのか。」
ちょろいな、あの程度の挑発にこうも簡単に乗ってくれるとは。
「死ぬのはお前らになるんじゃないか? 見た目でしか判断できない飾りの目を持ってるんだからな。」
「ぶっ殺してやる!!」
これだから馬鹿は単純で助かる。
「目がぁぁ!!!!」
考えなしに突っ込んでくる馬鹿は閃光弾1つで無力化できる。
それで駄目なら次はスタングレネードで聴覚奪ってしまえばあとは簡単だ。
知ってるか三半規管を潰してしまえば平衡感覚が狂ってかなり動きが鈍るらしい。
「飾りの目なんていらないだろう。
今潰してやる。」
目が見えない状態で相手に剣を突きつけられれば流石に噛みついてはこないだろう。
下手をすれば自分で目をぶすりだ。
「行くぞ。」
「はい♪」
はぁ、疲れた。
「で、結局どんな仕事なんだ?」
とりあえずホームギルドから出て、こいつのいく方向へついていってるがどんな仕事なのか聞いていない。
「薬に使う野草を採取する仕事です。
野草の生息する地域には魔物がうろついているそうなので実力試しの為にもちょうどいいと思いまして。」
「悪くないチョイスだな。
その場所はここから遠いのか?」
「ここに来るときに通った森です。
すぐに見つかればすぐに終わると思いますけど、見つからなかったらかなり時間がかかりますね。」
いざとなったらこいつがなんとかするだろう。
そう考えると面倒になってくるな。
「行きましょうレン。」
仕方ないか、はぁ。
side ???
傷1つつけずに無力化したさっきの男、それに付き添いの女、退屈な街だったけどあの2人が手に入ればきっと楽しくなる。
「兄さん、さっきの2人を仲間にしよう。」
「突然なにを言ってるんだ。
確かに手際は良かったがあれはまるっきりの素人だぞ。」
「鍛えれば伸びるよ・・・・たぶん。」
そんなことよりもあの2人といると面白いことが起こりそうな気がする。
「俺は反対だ。
お前がそんなことを言った時はたいていろくなことが起きん。
それに・・・・」
またか・・・
これさえなければ尊敬できる兄だというのに
「俺の可愛い妹をどこぞの誰とも知らん奴に渡すわけにはいかん。」
「いい加減妹離れしようよ。」
「お前に相応しい貰い手が見つかるまでな。」
そういって悉く男を撥ね退けるくせに。
とりあえず兄さんは無視して2人を追いかけよう。
「あれ? 兄さんあの2人どこに行ったか分かる?」
「魔力をたどれば分かるだろう。」
「その魔力を感じないんだけど。」
「・・・・・確かに。
ここまで完璧に隠蔽できる者など滅多におらんぞ。」
魔法が得意なエルフの民である私たちの索敵から逃れるなんて・・・・
今度見つけたら絶対に捕まえよう。
兄さんの意見は・・・・・・・・まぁいいか。
side out
「ようやく諦めたみたいですね。」
「俺はまだ諦めてないぞ。」
お前が俺に飽きて死なせてくれれば百年も生きずに済むからな。
「違いますよ。
ホームギルドにいたエルフの1人が私たちを見張ろうとしていたみたいなのでレンの魔力を隠蔽して諦めてもらったんです。
ちなみに私はレンを死なせるどころかレンが望んでくれれば永遠に生きて欲しいです。」
絶対にごめんだ。
それにしても俺たちをねぇ、こいつの正体に気付けばそうしようと思う気持ちもわかないではないがあの程度のことでいちいち見張ろうなんて思うものなのか?
「そういえばさっきおれの魔力を隠ぺいって言ったよな、お前には魔力はないのか?」
「本来神には魔力は存在せず神力が存在します。
神力は神にしか感知できないはずですから問題ないんです。
まぁ、私は特別なので魔力を持っていますがこれでも神の端くれなので千年も生きていない人には見つかりませんよ。」
千年って、エルフは長寿ってのがお約束だけどそこまで長生きするものなのか?
俺なら頑張っても50年が限界だな。
「レン、このまま進むと30メートルほど先に魔物がいます。
さほど強くないみたいですがどうしますか。」
流石は神様か木が生い茂って先なんて見えないのに。
こいつがいれば奇襲なんて無意味だな。
「練習相手になってもらおう。
案内してくれ。」
「分かりました。」
武器は銃が一番だな。
銃には詳しくはないが造ったやつは引き金を引く度に発射されるセミオート。
ちなみに引き金を引きっぱなしで引いている間弾が発射され続けるのをフルオートって言うらしい。
威力も自由自在ということでとりあえず警察なんかがもってる位の威力で。
「いました、あれです。」
RPGでいかにも初期に出てきそうな狼のような魔物だな。
とりあえず撃ってみるか
「レン、どこを狙ってるんですか?」
もちろん純粋な日本人の俺に射撃の経験などあるわけがない
「初めてなんだよ。
何度か撃ってればそのうち慣れるだろう。」
痛い思いをしたくないので近づきたくはないが近づかないと当たらないからな。
まぁ、こっちが近付くまでもなく向こうから近づいてきているんだが
「って、くんなこの野郎!!」
数うちゃ当たる。
まぁ、直線的に向かってきたところに乱射されればかわせないよな
何発か当たって動きは鈍ったが火力足りないな。
今度からは毒でも塗って撃とう。
今は、弾の大きさを変更して火力もあげるか。
「レン、手助け必要ですか?」
「いらん。
次は威力をあげたからこれなら行けるだろう。」
予想通り一発で眉間を貫けた。
最初みたいに動かれた当て切れなかったがあれくらいならいけるな。
最初はフルオートの銃で動きをにぶらせた後、威力の高い奴で撃つ。
これが基本戦術になりそうだな。
「お疲れ様です。
目的の野草は採取してきましたから帰りましょうか。」
いつのまに・・・・
まぁいいか。
「帰るとするか。」
とりあえず初めての仕事は無事終了・・・・
「おい、あれはなんだ・・・」
「大きい狼ですね。」
こいつはこんなふうに言ってるが大きいなんてもんじゃない。
本とかで見る狼の5倍以上の大きさはあるぞ。
普通に丸呑みされそうだ。
その場合って俺あいつの胃の中で生きるのか・・・・
「おい、あれをどうにかしろ。」
「レンは戦わないんですか?」
「俺は初心者だ。
いきなり中ボスみたいなやつに勝てるわけないだろう。」
「レンならなんとかしそうですけど。」
確かに倒そうと思えばいくつか考えはあるがやっぱり痛い思いはしたくない。
「ちょっとだけ戦ってみませんか?
危なくなったらすぐ助けますから。」
「どうしてそこまで戦わせたがるんだよ。」
俺は戦闘狂でもないし自衛のための最低限の力さえ持っていればそれ以上強くなりたいとも思わん。
「戦ってるレンを見たいから・・・・」
人が命がけで戦ってる姿を見たいからだと・・・・・・・死にはしないが。
そんなくだらない理由でこんな化け物と相対しろってのか・・・・
「駄目ですか?」
くっ、なんだかんだ言ってもこいつはかなりの美少女だ。
こんなふうに頼まれた断りずらい、自覚してないのが唯一の救いだな。
自覚してやってるのならすぐに断るが。
「分かったよ。
そのかわり危なくなったらすぐに助けろよ。」
「はい!!」
はぁ、甘いな俺。
美少女の笑顔を見れただけまだましか。
眼福、眼福。