我が儘姫
昨日はいろいろと会って忘れていたんだが
「どうして帰らないんだよ!!」
「食事中に叫ぶな。
せっかくの食事が台無しじゃぞ。」
「フリッグって料理上手ね。
本当に美味しいわ。」
「すべてレンへの愛の証です。」
「お兄ちゃん、血貰うね。」
お前らは気にならいのか?
既に視察団は帰ってるんだぞ?
昨日の話だとこの街にしばらく住むことが決定してるんだぞ?
そもそも、どうして自然に俺の家に飯を食いに来てるんだ?
「大丈夫か、レン?」
分かってくれるのはお前だけか、ジン。
だが、なぜお前とミナまでここにいる。
「美味かったぞ。
さて、先ほどの質問じゃが興が乗ったとしか答えられぬ。」
「帰れ。」
そんな我が儘でただでさえ少なくなってる俺の平穏な時間を削ろうとするな。
俺を変えようと頑張ってくれている3人には感謝しているがそれとこれとは別だ。
適度な休憩がないと逃げ出したくなる。
「いいじゃないですか。
フリュネがミナの家に住み込むことになればより安全ですよ。」
「お前はいいのか?
これ以上俺の周りに女が増えても。」
あれほど嫌がっていたのにどういう心境の変化だ?
「フリュネはレンを狙いませんからいいんです。
もちろん、レンがフリュネを狙うというなら話は別ですけど。」
「それはない。」
「失礼な奴じゃな。
これでも妾はそこらの男なら通りすがるだけで見惚れるような美しさじゃぞ。」
それは分かるが自分で言うな。
そもそも、今現在で一番の問題を抱えている奴に惚れるほど俺はMじゃない。
「そう言うわけじゃ。
しばらく厄介になるぞ。」
お前の場合本当に厄介だから嫌なんだよ。
「はぁ~、もういい。
それより、今日は買い物に行くんだろ?
どこに行くか決めてるのか?」
「大体は決めてるわよ。
でも、最終的に決めるのはレンだけどね。」
やっぱり俺なのか・・・・・
「そういえば、いつデートしてくれるんですか?」
「は?
それはミナが引っ越す家に住むのを許す代わりだから、ミナが引っ越してこない以上約束は成立しない。」
「いいじゃないですか!!
日ごろお世話になってるお返しとしてデートくらいしてくれたって!!」
それは絵とネックレスを買ってやっただろ?
それに、お世話になってる分俺の精神的な負担になっていることを忘れるな。
「却下だ。」
「いいんですか?
もうご飯作りませんよ?」
「別にお前が作ってくれなくても自分で作れるから問題ない。」
そもそも、家事は分担しようと前から俺は言ってる。
「その時はアリスも手伝うね。」
「本当にアリスはいい子だな。」
「もっと褒めて。」
ああ、アリスには本当に癒される。
「私の前でいちゃいちゃしないでくさい!!
記憶を消しますよ!!」
朝っぱらから物騒なことを叫ぶな。
最初のころは虚ろな目になるから分かりやすかったが最近は自然にスイッチが入るから困る。
「レンの食事を作るのは私の役目です。
だからレンは私が作った物以外食べたら駄目です。」
相変わらずの暴論。
しかも、これを無視するとまたスイッチが入るから手に負えない。
「とりあえず買い物に行くとするか。」
「そうね、それじゃあ行きましょうか。」
side フリッグ
まったく、レンには困ったものです。
だいたい、最近私に対する態度が酷くなってる気がします。
・・・・・・・思い出し見ればそんない変わってませんね。
でも、その分たまに見せてくれる優しさでますます好きになっちゃうんですけどね。
「こういうのを俺に任せるなよ。」
それにしても、レンが私以外の女のことで悩んでいる姿を見ると黒いものが湧きあがってきますね。
具体的には監禁したいとか記憶を消して2人で新しく始めようとか私になびくように精神をちょっとだけ傾けさせるとかです。
「なぁ、ジン、これはいいと思うか?」
「ミナに送るものだろ?
それはやっぱりレンが決めてようがいいと思うぞ。」
それにしても、レンは私の限界を知ってるような立ち振る舞いですね。
ジンに聞いたことを私に聞こうものならアウトです。
「それじゃあ、アリスにはどうだ?」
「いいんじゃないか?
センスがないと言ってもレンは十分にあるんじゃないか?」
それに最近はアリスが本気で甘えてます。
アリスに弱いレンがそれを断れるわけもありませんし、相手がアリスだけに私も強く言えません。
今はまだいいですが後5年後はまずいですね。
今は妹としてしか見ていないからいいですが5年も経てばアリスも成長して立派な美少女になるでしょうし。
その時、レンがまだ妹として見られるか・・・・・・・
見るかもしれませんね。
というかレンがアリスを妹以外で見ている事態が想像できません。
でも、油断はできません。
レンがどう見ていてもアリスが押し倒さないとは限りませんからね。
そうなる前に私が押し倒しておくべきでしょうか・・・・・・
side out
っ!!
なんださっきの悪寒は!!
「どうかしたか?」
限界を見誤ったか?
俺の見立てではまだ大丈夫な範囲だと思っていたんだが。
どこかで一度発散させる必要があるな。
だが、デートなんてやってしまったらミナとアリスともするはめになってしまう。
そうなれば意味がない。
世界って本当に理不尽だな。
「何があったか知らないが、頑張れ。」
優しさが目にしみる。
目の前が霞みそうだ。
「ふむ、確かに悪くないセンスじゃの。」
本当にこの我が儘姫は帰ってくれないかなぁ。
「なにか言いたいかはだいだい分かっておる。
故に言っておこう、妾は帰らぬぞ。」
いちいち希望を打ち砕くようなことを言いやがって。
「希望を持たせるぐらいなら早めに諦めさせておく妾の優しさじゃ。」
そんなところで気を使うくらいならさっさと帰れ。
「まぁ、そんなことはどうでもよい。
それより、もう少しフリッグに気を使ってやたっらどうじゃ?」
「あいつは加減が難しんだよ。」
日ごろの感謝と言って下手に気を使うとそのまま押し倒されてバットエンドだ。
だから、基本的に突き放すくらいでちょうどいいんだよ。
「それにしても分からぬの。
あれほどの美人どころがそろっておるというのにキス以上のことはしておらぬのじゃろう?
そのキスもその場を収める為か向こうからだけと来ておる。
もしやと思うが男がいいとは申さぬよな。」
「ああ~、そういえばフリュネはまだ知らないんだな。」
言っておくが俺はノーマルだ。
間違っても男になんて欲情はしない。
俺が手を出さないんじゃなくて出せないんだよ。
「なにを知らぬというのじゃ?」
「俺たちと一緒にいればその内分かるさ。
とりあえず知っておいて欲しいのはフリッグの前で俺と仲良くするのは止めた方がいい。」
俺としては分かるような状況になって欲しくないんだがな。
「ふむ、こういうことかの?」
この馬鹿!!
あいつ冗談は通じないんだぞ!!
「・・・・・・レン。
どうしてフリュネと腕を組んでるんですか?
いったい何度言えば分かるんですかね?
それとも監禁して欲しんですか?」
・・・・・・・・終わったんじゃね?
ただでさえ我慢ぎりぎりのラインを保ってきたってのに。
言うなれば、爆弾にギリギリ引火しない距離に火を置いていた状況の所に爆弾を放り込んで誘爆させたようなものだ。
「俺の弁解を聞いてくれるか?」
「聞きましょう。」
「まずフリュネがなぜ俺がお前たちに手を出さないか聞いてきたんだ。
俺が手を出さない理由はフリッグが知ってるだろ?
それをはっきり言わなかったから、フリュネがどういうことか試すために腕を組んだだけでそこに何1つとして特別な感情は無い。」
「す、済まぬ。
妾も度が過ぎたようじゃ。」
「今度デートをしてくれるというなら許してあげます。」
「わ、分かった。」
それで記憶リセットされるよりはましだろう。
「フリュネもこんなことをしては駄目ですよ。」
優しく言ってるように聞こえるが、まず目が笑っていない。
久しぶりに見る虚ろな目は洒落にならない恐怖だ。
「き、肝に銘じておこう。」
「そうですか。
では、私はもう少し向こうを見てますね。」
・・・・・・・・・行ったか。
背中が冷や汗でびっしょりだ。
「分かったか?
あれに手を出したらどういう末路をたどるか?」
「済まぬ。
確かにあれを見せられたら手を出せぬ。」
もし、フリッグに手を出すならとりあえず一生縛り付けられることは当然として、ちょっとでも他の女に目を向けたら酷い目に遭わされる覚悟必要だ。
「あれを見ても引こうとせぬ、ミナやアリスは凄いものじゃ。」
本当だよ。
フリッグが神じゃなくてもあれを見せられたら普通に諦める。
「フリッグも俺が関わらなければいい奴だから仲良くしてやってくれ。
あいつは俺たち以外の関わりが薄いからな。」
「それは約束しよう。
神としてではなく人としてでよいのじゃな?」
「それがあいつも喜ぶだろう。」
もう少し他に目を向ければ少しはましになるかもしれないし、友達がいないってもつらいものだろうしな。
また予約投稿を間違えてしまいました。
明日の投稿は無理です。