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胸騒ぎ

「どうだった?」


「レンの予想通り、いかにもって連中が十人以上はこの街に来てるわ。」


フリュネはこの視察にはついてきたと言っていた。

つまり、それを知っている者は絞られてくる。


「姫様も大変ね。

身内からこうも露骨に狙われるなんて。」


大変なのはこっちだ。

何が悲しくて王族の相手を敵味方両方ともしなけりゃいけないんだ。


「ところで、アリス、いい加減に機嫌を直してくれ。」


「アリスに構ってくれないお兄ちゃんなんて嫌い。」


アリスに嫌いといわれるのは心に突き刺さる。

だが、アリスをフリュネに近づけるわけにもいかないし、これも仕事の一環だから個人的な事情で長く離れるわけにもいかない。

くそ、これもあのわがまま姫が来るから!!


「本当にレンってアリスには弱いわよね。」


悔しいがアリスの為ならシスコンと呼ばれてもいいと思う俺がいる。

もちろん、そこにやましい感情なんて一切ない。

純粋な家族愛だ。


「分かってくれ、アリスがフリュネに近づくとまた体調を崩すかもしれないんだ。」


頭が悪くないから理解していると思うんだが女心は難しいな。


side アリス


「分かってくれ、アリスがフリュネに近づくとまた体調を崩すかもしれないんだ。」


お兄ちゃんがアリスのことを想ってくれてることは分かるけど、3日もお兄ちゃんと離れるなんて絶対に嫌。

アリスがこうしてれば少なくともお兄ちゃんはここにいる。

だから、絶対に許してあげない。


「後で埋め合わせは必ずする。

だから今回は許してくれ。」


うっ、お兄ちゃんが本気で困ってる。

で、でもお兄ちゃんが悪いんだよ。

お兄ちゃんがたくさんの人に好かれるから・・・・・・・

アリスだってもっと甘えたいのに。


「じゃあ、アリスを妹じゃなくて女の子として見てくれるなら許しあげる。」


side out


「じゃあ、アリスを妹じゃなくて女の子として見てくれるなら許してあげる。」


くっ、そう来るか。

正直言ってアリスを妹以外で見ることなんて不可能に近い。

まず、見た目が10歳の幼女だ、手を出そうものなら即通報される。

それを除いてもこの構ってやりたくなる空気を出してるアリスを妹以外で見るなんて・・・・


「お兄ちゃんの馬鹿!!」


ぐおっ!!

なんだこの痛み!?

これに耐えてたジンはとんでもないな。


「本当にアリスに弱いわね・・・・」


仕方ないだろ!!

あの容姿であの性格だぞ!!

シスコンにならない方が不思議だ!!


「仕方ないわね。

アリスは何とかしておくからレンは早く姫様の所へ戻りなさい。」


side アリス


「仕方ないわね。

アリスは何とかしておくからレンは早く姫様の所へ戻りなさい。」


そう言ってアリスを揺さぶろうとしても無駄だよ。

お兄ちゃんがアリスから離れるわけ


「・・・・・ごめんなアリス。

ミナ、頼んだ。」


えっ!?

お兄ちゃん、どうして!!


「これで3つ目、素敵なお返しを期待してるわよ。」


「期待せずに待っててくれ。」


「駄目!!」


side out



心苦しいがここはミナに任せておいた方がいいだろう。


「・・・・・ごめんなアリス。

ミナ、頼んだ。」


「これで3つ目、素敵なお返しを期待してるわよ。」


ちゃっかりしてるな。


「期待せずに待っててくれ。」


「駄目!!」


っと、抱きとめられてよかった。

反応が遅れればそのまま押し倒されてたな


「お兄ちゃんが行くならアリスも行く!!」


「だが、フリュネに近づくと体調が「それでも行く!!」」


どうしてものか・・・・

アリスを力ずくで引き剥がそうとして出来る奴なんてフリッグくらいなものだろうし、このまま行ったらアリスが体調を崩すだろうし・・・


「後でいっぱい構ってやるから、我慢してくれ。」


「・・・だもん。」


これはフリュネの方をどうにかするしかないな。


「寂しいんだもん。」


「ごめんな。」


side アリス


アリスが吸血鬼だって知って、それでも構ってくれたのはお兄ちゃんだけ。

お姉ちゃんもミナお姉ちゃんもジンさんも大好きだけどやっぱり最初はアリスを受け入れてくれなかった。

でもお兄ちゃんだけは最初から受け入れてくれた。

アリスの居場所を作ってくれた。


「寂しいんだもん。」


寂しい・・・・

お兄ちゃんから離れたくない。

もっといっぱい甘やかして欲しい、もっといっぱい甘えたい。

大好きなお兄ちゃん


「ごめんな。」


やっぱり駄目なの?


「寂しがらせてごめんな。

出来るだけ寂しくないように一緒にいてやるから泣かないでくれ。」


「うん。」


温かい

ここがアリスの居場所


side out



「どうしてアリスを連れてきたんですか!!」


「フリッグ、アリスが耳元で寂しいと言ってきて置いて行けるか?」


「無理です。」


あれで置いて行ける奴がいたらそいつは人じゃないな。


「アリス大丈夫か?」


「ちょっと気分悪いけど大丈夫。」


ちょっとという割には顔色が悪い。


「アリス、魔力を体中に纏わせてください。

そうすればかなり楽になるはずです。」


確かに顔色がよくなってきた。

これなら大丈夫か


「最初は会談だったな、とりあえず城に行くか。」


それにしてもフリュネを相手取るにしては十人程度では少なすぎる。

なにかあるのか?


「どうしたんじゃ?」


「街に厄介な連中が入り込んでるそうだ。

俺たちがいるから大丈夫だと思うが気をつけといてくれ。」


「ふむ、まだ懲りぬ輩がおるようじゃの。」


恐らく今回の敵は王族からの刺客だろう

フリュネのことを知らないならともかく知っていてなお無駄な手を打つはずがない。


「いままで、身内から襲われることはあったか?」


「もちろんじゃ。

次の王になるには十人以上の中で一位にならねばならぬ。

そのためなら、どんな手段を使っても許されておる。」


とんでもない決め方だな

気を抜いた瞬間に蹴落とされるってわけか


「まぁ、心配せずとも妾に勝てる者などおらぬから大丈夫じゃよ。」


アリスが近付くだけで体調を崩すような神力を持っているフリュネを正攻法で倒そうと思えばそれこそ神を呼んでくるくらいのことをしないと無理だ。

だが、フリュネがここにいるということを知っているということは王族という可能性が高い。

それなのにたった十人程度の刺客しか来ていない。

こんなことをするってことは相当の馬鹿なのか、もしくは


「なぁ、対神力の方法って存在するのか?」


「少なくとも妾は知らぬ。」


「あるにはありますけど、ここで起こすには難しいですよ。」


「説明してくれ。」


「神力は端的に言ってしまえば聖なる力です。

なので、周りが負の感情なんかで穢されてしまえば神力は弱まります。」


確かにそれは難しい。

こんな街中でそんなことを起こそうと思えば大災害レベルのことを起こさない限り無理だろう。

それに、それだけのことを起こしたとしてもフリュネの神力を抑えることができるかどうか分からない。

それなら、ミナが言っていた奴等はただの偶然?


「レン、着きましたよ。」


「では、少々待っておれ。」


考えながら歩いてても、人とぶつからないって凄いな。


「フリッグ、他の神力を抑えられる方法ってないのか?」


「私はもともと魔力ばかり使っていましたからあんまり詳しくないんですが生半可な方法では神力を封じることはできません。」


となると、やはり俺の考えすぎか山賊まがいのことをやるつもりなのか馬鹿なだけか・・・・・


「ちなみに穢れってのはなんだ?」


「簡単に言ってしまうと負の感情が長く一定の場所に多く存在してしまうと人の生気が下がりますよね。

例えば、一つの村で流行り病が流行し多くの人が病死すれば悲しみや恐怖なんかで村が覆われてどんどん穢れは大きくなりその穢れが新しい病を運んできたり悪霊や悪魔なんかを呼んだりします。」


嫌な予感がしてきたな。

病をばらまいたところで負の感情が街を支配するには時間がかかりすぎるし、なによりフリュネが率先して治療するはずだ。

だが、死霊使いみたいなものがこの世界に存在するとすれば


「レンの嫌な予感は当たってるみたいです。

この嫌な空気は悪霊のようです。」


死霊使いが10人以上いるとすれば、一時的にでも空気を穢すことくらいはできるだろう。

それに、悪霊を使役できれば戦力に支障はない。

さらに言えば悪霊をどうにかする為に街の警備団は使えないと言っていい。

考えられた作戦だが残念だったな。


「フリッグ、いけるか?」


「悪霊程度では私に傷一つつけられませんよ。

それに私の神力を封じたければ世界全体でこの現象を起こしでもしない限り無駄です。」


流石は最強クラスの神だな。


「アリスもいるよ。

あの程度の悪霊ならすぐに祓える。」


仕掛ける場所を誤ったな。

これが他の街なら成功していただろうがアルフヘイムでは通用しない。


「とりあえず、フリュネと合流するぞ。

1人で動かれた敵の思うつぼだ。」


なんだ、この胸騒ぎは?

この騒ぎにはまだ裏があるのか?

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