姫の命令
「なんだかんだで我が家が一番だな。」
「観光は楽しいですけどやっぱりここが安心というか居心地がいいですね。」
流石に姫が現れてからは特にこれといったトラブルもなく翌日アースガルドを出発し中間の街で一泊しアルフヘイムへと帰ってきた。
「早速これを飾りましょう。」
アースガルドで買った絵画だが一応プロの作品らしいがそこまで名の売れていない画家の作品らしい。
フリッグ曰く、後に有名になるだそうだ。
「アリス、着いたぞ。」
「んにゅ~、もうちょっと~」
アリスは寝ぼけてても可愛い。
もう最近ではシスコンと開き直ろうかとすら考えてしまうほどだ。
「アリスにアースガルドの空気は辛かったみたいですね。」
「アースガルドっていうより、城の空気だがな。」
もっとも、アースガルドを出る頃にはほぼ元通りだったんだが長旅で疲れが出たんだろう。
いくら真祖とはいえアリスはまだ子供だからな。
「それじゃあ、明日は仕事どうしますか?
一応蓄えはありますけど。」
「あんまり休みすぎてもだらけるから明日から早速仕事を貰いに行こう。
アリスが明日もこの調子ならミナに預けておけば大丈夫だろう。」
「分かりました。
それじゃあ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
明日から仕事頑張るとするか。
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「また会ったの。」
姫がなぜここにいるのか?
いったい何の目的だ?
護衛はいないのか?
そもそも、王族がそう簡単に外を出歩いていいのか?
やばいな、かなり混乱してる。
とりあえずこれだけは言っておきたい
「どなたですか?」
「ふむ、どうやらよほど妾に喧嘩を売りたいと見える。
よいぞ、妾の権力の限りを尽くしてやろう。」
「すみませんでした。」
やっぱり人違いじゃなかったか。
「なぜ姫がホームギルドにいらっしゃるんですか?」
「その姫という呼び方は止めよ。
妾の名は教えていたはずじゃが。」
「では、フリュネ様はどうしてここにいらっしゃるんですか?」
「そう他人行儀になる必要はない。
妾とお前の仲であろう。」
どんな仲だよ!!
それともうホームギルドの男連中の視線に本気の殺意が混じってんだよ。
そりゃ、何人も美少女を連れて来ていれば気持ちは分かるが誰1人として俺が連れてきたわけじゃないんだぞ。
「いえ、フリュネ様に対してそのような無礼な態度をとるわけにはいきません。」
「そうやって距離を取ろうとしても無駄じゃぞ。
それに、お前は妾に対して敬意なんぞ持ち合わせておらぬじゃろ。」
そりゃ、厄介事の塊どこか爆発して厄介事を飛散させそうな爆弾に持ち合わせる敬意なんて持っていない。
「いえいえ、私はフリュネ様を尊敬していますよ。」
「くだらないことで時間を取らせるな。
はっきり言って気持ちが悪い。」
そこまで言うか。
こっちは姫を相手しているだけで命がけなんだぞ。
フリッグはいま仕事を貰いに行ってるからいいものの見つかったらどんな目に会うか。
「それでは私はこれで、連れを待たせおりますので。」
「まぁ、待て。
今回のアルフヘイム訪問はお前目的ではないにしろ、せっかく再開じゃ、世間話でもしていくのが礼儀というものじゃろ。」
限界だ。
これ以上相手をしていればフリッグが戻ってくる。
「残念だが厄介事を運んでくる相手に持つ礼儀は無いんでな。」
「ようやく素を出しおったか。」
「取り繕っても無駄みたいなんでな。
アルフヘイム訪問が俺目的じゃないんならもういいか?
俺は仕事で忙しいんだ。」
「相変わらず面白い男じゃな。
ちなみ今回の目的はただの視察じゃ。
護衛がいない理由は付きまとわれるのが嫌だったからじゃ。」
どんなわがまま姫だよ。
まぁ、あの馬鹿王子よりましだが。
「レン、仕事貰ってきま・・し・・たよ・・」
・・・・・遅かったか。
「・・・・・説明してくれますよね。」
「偶然会った。
それ以上の説明は無理だ。」
こういうときは下手嘘は逆効果だ。
「そうですか、それでは早速ですが仕事に行きましょう。」
「ああ。」
穏便に済んでよかった。
「まぁ、待て。」
なぜ呼び止める!!
お前がいると秒ごとに機嫌が悪くなっていくんだよ!!
そのしわ寄せは全部おれに来るんだぞ!!
「なんでしょうか?」
「興が湧いた。
妾がこの街に滞在する間、妾の護衛を命ずる。」
「却下です。」
なんだこの展開。
どうして、アルフヘイムにいてまで厄介事に巻き込まれなきゃいけないんだ。
「もちろん拒否権はないぞ。
断れば不敬罪で処罰することも妾の自由じゃからな。」
この世界の奴は権力の濫用を当たり前とか思ってないか?
よくこの国成り立ってるな。
「権力の濫用は王族としてどうかと思うぞ。」
「なに、ばれなければいいんじゃよ。
それにそこの娘は神じゃろ。」
なぜばれた?
神術は使わせていないはずなのに。
「妾は過去最高といわれるほどの神力の持ち主での、流石に離れていては感じれぬがこう近くによれば感じ取れる。
まぁ、愚弟は分からなかったようじゃがの。」
油断していた。
あの馬鹿王子が噂の神の力を受け賜わりしものだと思っていたがこの姫のことだったか。
「どうじゃ?
このことをアースガルドに広めれば担ぎ挙げられることは目に見えるじゃろ。」
「確かにそうだが、いくら姫が強かろうろうとフリッグには勝てない。
悪が記憶を弄らせてもらう。」
こうなった以上罪悪感がどうと言っている状況じゃない。
フリッグが神だと知られたら厄介どころの話じゃない。
「そう脅すな。
妾は護衛さえ引き受けてくれればこのことは胸の内にしまっておくつもりじゃ。」
「そんな言葉を信用しろと?
記憶を弄った方が確実で安心できる。」
「それなら妾を監視下においてはどうじゃ?
父上がいる限り、私はアースガルドにいる必要はないからの。
それより、神と吸血鬼を傍に置いているお前の近くにいた方が楽しそうじゃしの。」
「冗談はほどほどにしてくれ。
誰が厄介事の塊である姫を抱え込むんだよ。」
「妾が姫だと知っておるものなどたかが知れておる。
それに知っておるとすればなおのこと妾にちょっかいなど掛けてこぬ。」
「悪いがそんなことは関係ない。」
「ふむ、意思は変わらぬか。」
「残念だがな。」
出来るだけ記憶に矛盾がないようにしてもらうから悪く思わないでくれよ。
俺だけなら問題ないんだがフリッグだけじゃなくアリスにも被害が及ぶなら放ってはおけない。
いくら甘いとは言っても俺にも優先順位くらいはある。
片方しか取れないのならばもう片方が切り捨てることに躊躇いは持たない。
「ちなみに、妾は護衛を撒くときにレン・カザミネの所に行くと言って来ておる。」
「っち、やってくれるな。」
いくら姫の記憶を操作しても見つかった姫に護衛が何があった聞き、俺の名を聞けばいずれ行きあたる。
どれだけ巧妙に記憶を弄ろうとも矛盾は発生してしまう。
そうなれば記憶を操作されたと気付かれる可能性もある。
「目的はなんだ?」
「いったであろう、ただの視察じゃと。
これでも王位継承権第一位なのでな、国の内情を把握しておくのは当然のことじゃろ。」
「大丈夫ですよ、レン。
私の力ならこの世界のすべての人から記憶を抹消することもできます。
そこの人だけでなく王やあのストーカー、アースガルドすべての人から記憶を抜き取ります。」
それしかないか。
「流石にそこまでされてはどうしようもない、潔くよく諦めよう。
じゃが、記憶を改竄されようともいずれ会うと思うがの。」
嫌なことを言ってくれる。
「・・・・・・滞在日数は?」
「レン!?」
「今日を入れて3日じゃ。」
「今日はすでに仕事を貰ってきている。
それが終わってからなら引き受けよう。」
「いいじゃろう。
報酬は後に出そう。」
「行くぞ、フリッグ。」
「はい。」
side フリュネ
ふむ、助かったというべきか、いやはや、やはり面白い男じゃ。
本気でここに留まるのも悪くないかもしれぬの。
あの娘、フリッグといったか。
あれは流石に妾でも勝てるとは思えん。
確かにあれなら世界全ての人から記憶を抜き取るくらい出来るじゃろう。
だが、神である娘より興味があるのはあの男の方じゃ。
今回引き受けたのは打算半分、甘さ半分、転んでもただでは起きぬという奴じゃの。
あの男にも勝てる気はせぬな。
精々引き分けに持ち込めればいい方じゃな。
どうにか側近に出来ぬものか・・・・・
side out
「どういうつもりなんですか?」
「あの姫の言うとおり記憶を消したとしてもいずれまた会う気がする。
それなら、こちらに引き込んで情報操作をしてもらった方が得だと思ってな。
それに、もしばらされたらその時は頼んだぞ。」
予感なんて不確定なものを信じさせられる姫の迫力には脱帽だな。
俺やミナのような策略を張り巡らせるのではなく、その天性のカリスマだけで成功させるタイプだ。
ミナとは別の意味で敵に回したくない相手だ。
「分かりましたが、必要以上に関わらないでくださいね。
これ以上、レンの周りに女が増えるようであれば監禁しなければいけませんから。」
虚ろな目で言われても怖いんだが、平然とした顔でさらりと言われる恐怖は洒落にならないな。
普通なら冗談で笑い流せるところだが、相手がこいつだけに流せない。
これ以上増えると本気で監禁されるんだろうな。
想像しただけで怖気が走る。
本気で気をつけるとしよう。
予約投稿するつもりが間違って投稿してしまいましたので明日投稿するか分かりません