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アースガルド その⑥ 王の器

「疲れた。」


「確かに今日はしんどい戦いだった。」


結局あの後もフリッグに連れ回されて城中を隅々まで見て回った。

その間アリスはずっと背負っていたから余計に疲れがたまる。

言っておくがアリスは決して重いというわけじゃない。

言うなれば人が重いんだ。

それにしても、金貨百枚ってそれはそれは重い。

札のありがたみが滅茶苦茶実感できるな。


「流石に明日は大丈夫だろう。

いくらなんでも、そこまで性急に動きを見せるとは思えないしな。」


「分からないぞ。

なんといってもレンがいるからな。

なにかあっても不思議じゃない。」


俺だって好きで厄介事に巻き込まれているわけじゃない。

嫌でも向こうから寄ってくるんだよ。


「とりあえず今日は休もう。

観光は明日までで次の日にはここを出るんだ。

今日苦労した分、明日楽しもう。」


金はあるしな。


「そうだな。」


明日は何事もありませんように。

「レン・カザミネという奴はおるか?」


この世に神はいないのか。


「呼びましたか?」


一応いるんだったな。

それじゃあこれは運命というやつか?

厄介事から逃げられないという運命。

だが、俺は運命なんて認めないぞ。

見たところ顔を知らないみたいだから、このまま離れてしまえば


「そこの、レン・カザミネという者を知らぬか?」


なぜ、そこで俺を指名する。

やはり、逃げられないのか・・・・


「知りません。」


「そうか。

この宿にいるという情報だったが、既に発った後だったか?」


よし、この隙に逃げよう。

俺が関わる美少女は必ず厄介事を運んでくる。

それが、高飛車だったらどんな無茶振りをされるか分かったもんじゃない。


「グレイを倒したものがどんなものか気になったのだが仕方あるまい・・・」


王子の次は姫か!!

これに見つかったら終わりだな。

不幸中の幸いとして顔を知られていないのは助かった。


「なんて言うと思うたか?」


は?


「貴様がレン・カザミネであろう。」


また期待させた落とすのか・・・・・


「人違いです。」


「くだらない言い訳で時間を取らすな。」


これは詰んだな。


「はぁ、それで姫が何の用です?」


「あのグレイを倒した者を見てみたいと言ったであろう。

どんな豪のものかと思えば意外と細いな。」


あれを力で倒すことができるなんて、それこそ神か人の中でも頂点に立つ者だけだ。


「満足したならもう行っていいですか?」


「まぁ、待て。

力で倒してないというのなら、智でグレイを倒したのであろう。

それに父上に対しひるむどころか貸しを作ろうとしたその度胸。

どうだ、妾の夫とならぬか?」


落ち着け俺。

ここで判断を誤ったらもう無理だ。

この時点で後ろからの殺気が洒落になってない。

ミナとアリスは許せたとしても流石にこれ以上増えたら本気で記憶を消される。


「謹んでお断りします。」


「そうか?

妾は別に愛人は許可するぞ。」


物理的に突き刺さってくる視線には慣れたつもりだったがこれは別格だ。


「王族と籍を入れるつもりはありません。」


「そうまで言われた仕方あるまい。

では、妾の側近とならぬか?

そなたの智は必ず役に立つ。」


「お断りします。

今の生活が気に入ってるので。」


話しが分かる相手でよかった。

これがあの馬鹿王子のような奴だったら終わってたな。


「ふむ、そこまで言うのなら潔く引くとしよう。

妾の名はフリュネ・セシリア。

王位継承権第1位、なにかあれば訪ねて来るといい。」


つまり、次の王はこいつか。


「一つ聞いてもいいですか。」


「なんじゃ?」


「この街は信仰の街だと聞いています。

姫は神を信じますか?」


「ああ、神は居るぞ。

ただし、神は何もしてはくれぬがな。」


「ありがとうございます。」


「ふむ、やはり妾のもとへと来ぬか?」


「お断りします。」


この人が王となるなら問題はないだろう。

確固たる己を持ってる。

できれば敵対はしたくないな。


side フリュネ


『神を信じるか?』か。

この妾を試すとは面白い奴じゃのう。

馬鹿な弟にも見習わせたいところじゃ。


「随分と機嫌がよさそうだな。」


「ええ、面白い人材を見つけたもので。

まぁ、断られてしまったのですが。」


レン・カザミネの情報はあらかた集まっておるからこちらから出向こうと思えば出来るがな。


「確かに彼はいい人材だ。

王である我を相手取れる人物だからな。」


「おや、妾はまだ誰だと言ってはいませんが。」


「我は王だぞ。

それくらいのことは分かる。」


「では王たる父上に1つ尋ねます。

父上は神を信じますか?」


「もちろんだ。

だが、神とて万能ではない。

それに、神が定めたものなどこの世にはない。

すべて人が定め、神は世界に影響を及ぼすことはない。

だが、神の定めというものは影響力がある。

信仰と行政、上手く折り合いをつけなければ王は務まらない。」


やはり、父上は王だな。

これを越えねばならぬのか。


「それは、彼に尋ねられたのか?」


「ええ、会っていきなり妾を試すようなことを言う者は初めてでした。

本当に側近に欲しいところです。」


あれほどの者たちを傍に置いているのだ、近々また会うことになるじゃろうがな


「父様、なぜ情報提供の掲示を撤回しているのですか!!」


「グレイよ。

我は神の教えに背くとはないようにといったはずだぞ。」


「彼女は僕にこそ相応しい人です。

あのような男に騙されている彼女を救うことは教えに背いておりません。」


まったく、相変わらずの狂信ぶり。

これが血の繋がった姉弟だと思うといい気分が台無しじゃな。


「グレイ、そこまでにしておけ。

見苦しいぞ。」


「姉様、いつまでも僕が下にいると思わない方がいいですよ。」


ほう、確かに前よりは力が増しておるようじゃの。

これを、智で屈服させたか。

ますます興味が湧くの。


「それ以上醜態をさらすな。

王族としての品が下がる。」


「僕を見下すな!!」


「無様」


「がはっ!!」


所詮はこの程度。

多少神力を有しているからと努力を怠ったからじゃ。


「相変わらずだな、フリュネ。

流石は神の力を受け賜わった者。」


「王を継ぐ者として不必要なものです。

このような力より彼のような人材が欲しいものです。」


それに、周りにいる者も優秀そうだったからの。

いずれ会おうぞ、レン・カザミネ


side out



「レン、次はあっちに行きましょう!!」


「分かったから、少しは落ち着け。」


一時はどうなるかと思ったがどうにかなったみたいだな。


「大丈夫か、アリス?」


「ちょっとつらい。」


アリスは昨日、散々に城の空気に当てられた所為かぐったりとして俺が背負ってる。


「何か欲しいものはあるか?」


「お兄ちゃん。」


「それは諦めてくれ。」


「それじゃあお兄ちゃんの血。」


「周りに見られないようにするならいいぞ。」


信仰の街で吸血鬼だと知られたら迫害されるのは目に見えてる。


「それじゃあ、いただきます。」


こうなったら、しばらくはこのままだろう。


「今回の旅はなかなか有益なものだったわ。

アースガルドの街並みも見れたし、なにより王と面会もできた。

なにより、いろいろ面白いことが起きたし言うことなしね。」


「できれば、もう少し穏やかな旅を用意してくれ。

王子の次は王でその後は姫だぞ。

特に姫に関しては、また会いそうな予感がする。」


本気で俺を側近にするためにアルフヘイムまで押し寄せて来るくらい平気でやってきそうだ。


「その時はその時で考えればいいでしょ。

レンはいちいち先のことを考えすぎよ。

もっと今を生きなさい。」


そう言うが変わろうと決意したところでそう簡単に変われるほど単純じゃない。


「努力するよ。」


「そう言えるってことは少しは変わってるってことよ。」


確かに今までの俺だったら無理だったな。

いつもなら、いつこの関係が終わっても傷つかないように、相手を傷つけることがないように信じることなく諦めていた。

今は少しくらいは信じてもいいと思える。


「そうだといいな。」


「レン!!

これ家に飾りましょう。

人の感性は素晴らしいものばかりです。」


「分かったから、はしゃぐな。」


そういえばフリッグはいることが当たり前のように感じるんだよな。

まぁ、俺の平穏の一部だから変わらず当たり前なのは当然なんだが、こうも違和感がないってのも変だな。


「どうかしましたか?」


「いや、そのまま変わらないでくれ。」


「分かりました?」


平穏が逃げ道だとしても平穏が大切なことには変わりはない。

俺が変わって人を傷つけることで傷つくことに慣れたとしても、やっぱり傷つけずに済むに越したことはないしな。


「それで、いくらだ?」


「金貨50枚だそうです。」


いろいろと言いたいことがあるがここは我慢しよう。

いつも世話になってると思えば、それに金はある。


「あ、これもいいですね。」


ちなみに金貨80枚。

前言撤回、こいつ計算もできないほど馬鹿なのか?


「この馬鹿。

いくら金があると言っても限界があんだぞ。」


「その分は帰ってから働きます。」


そりゃ、お前が1人でやれば簡単に稼げるだろうが無駄使いを続けていたら駄目になる。


「駄目だ。

どっちかにしろ。」


「う~、ちょっと待ってください。

具体的にはあと1時間ほど。」


そんなに迷うものなのか?

確かにいいものだと思うが。

まぁ、今回だけは特別に許しやるか。


「分かったよ。

今回だけは両方買ってもいいぞ。」


「本当ですか!!

大好きですレン!!」


買ったものは銀のネックレスと一枚の絵画。


「あの、レン、これ着けてくれませんか?」


久しぶりにこういう表情見たな。

具体的は顔を赤くして上目づかい。

前にも言ったがこれを断れる男なんていない。


「これでいいか?」


「はい♪」


悔しいが滅茶苦茶可愛い。

もう見慣れた思ったがこういう笑顔を見ると違うな。

それでも、女というよりは妹って感じだな。

となるとアリスは娘か?

まぁ、どちらにせよ大切だったことに変わりはないか。


「レン、ずっと一緒にいましょうね。」


「百年が限界だ。」


「まだ言ってるんですか?

いい加減諦めて私とずっと生きましょう。」


「それは考えられないな。

そう思わせたいなら頑張ってくれ。」


変わろうとは思うがやっぱり百年が限界だと思う。

それもいつ変えられるか分かったもんじゃないがな。


「はい♪

いつも通り尽くしてレンに振り向いてもらえるよう頑張ります。」


これが病んでなければ本当に最高なのになぁ


ネタが思いつかなくて連続更新が難しくなってきました。

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