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アースガルド その② レンの平穏と幸せ

今回はちょっとシリアスです

いろいろあったがアースガルドに到着して適当に歩きまわった後、本格的な観光は明日なので早めに宿をとることになった。


「いいところですね。」


「本当、部屋は広いし清潔に保ってある。」


当然男女は別れてるので俺とジンは他の部屋だ。


「それじゃあ、早く休めよ。

それと、できるだけ目立つ行動は避けるように。」


「分かってるわよ。

おやすみなさい。」


「また明日です。」


「ばいばい、お兄ちゃん。」


さて、俺も寝るとするか。


「レン、ちょっといいか?」


「どうした?」


「ちょっと飲まないか?」


「・・・・・・分かった。」


飲まなきゃ話せないような内容か。

ジンがそんな話を俺に持ちかけるとすれば内容はミナだろうな。

「とりあえず、乾杯。」


「ああ、乾杯。」


ここの酒は美味いな。

ヴァナヘイムから取り寄せてるのか?


「大体予想はついてると思うが話しがある。」


「聞こう。」


「話ってのはミナのことだ。

ミナは間違いなくレンのことが好きだ。」


「それを認めていいのか?

大切な妹なんだろう?」


「ああそうだ。

ミナは俺の大切な妹。

だからこそ、信頼できるレンになら任せられる。」


「考え直せ、あってまだ2ヶ月だ。

その程度で簡単に大切なものを預けようとするな。」


そもそも、俺はあいつの気持ちに応えるつもりはない。


「そうだ。

たった2ヶ月、それだけの期間で俺とミナを信じさせたんだ。

ミナは頭がいい、だから裏がある奴が近付いても信用しない。

そのミナが信用してる。

そして、俺もレンを信用している。」


「信用してくれるのは嬉しいがはっきり言わせてもらえばミナの気持ちは迷惑だ。」


耐えろ


「それは、どうしてだ?」


「俺が死にたがりだとジンも知ってるだろう?

その俺にミナの想いは重荷でしかない。

それに、俺がミナの想いに応えれば今の日常は崩壊する。」


耐えろ


「話しはそれだけか?

明日も観光するんだ、早めに休もう。」


「俺にとってミナは本当に大切な妹だ。

だが、俺にはミナの幸せを祈ることはできても幸せにすることはできない。」


「それは分からないだろう?

ジンはミナの家族だ。

赤の他人である俺よりミナに近い存在だ。

俺より確実幸せにしてやれる。」


耐えろ


「ミナはレンたちが来るまで退屈だと言っていた。

それは境遇に不満を持っていたわけじゃない。

ただ、なにかが満たされなかったんだ。

その何かをレンは満たしてくれた。

今のミナは本当に楽しそうに笑う。」


「それなら今まで通りの友達同士で十分だろう?

なぜ今になってそんなことを俺に言う?」


耐えろ


「俺の存在がレンからミナを遠ざけてると思ったからだ。」


「何度も言うが俺はミナを女としては見ていない。

それジンがいてもいなくても同じことだ。

だから、他の男が現れるまで守ってやれ。」


耐えろ


「そうか。

悪かったな、いきなりこんな話をして。

ただこれは知っておいてくれ。

俺はレンにならミナを任せられる。」


「言っただろう。

俺にそれは重すぎる。」


耐えろ!!


「悪かった。

付き合ってくれたありがとな。」


耐えてくれ。

今、俺が言ってしまったら期待させてしまう。

そうなれば、いずれ絶対に悲しませることになってしまう。

だから、耐えてくれ。


「あ、ああ・・・・・」


止まれ、止まれ!!

俺がやろうとしてることはその場しのぎだ。

問題の先送りでしかない。

だから、止まれ!!


「どうしたレン?」


いずれ悲しませるくらいなら、傷が浅い内に切っておくべきだ。

こんな罪悪感で俺の友達を悲しませることはあってはならない。

いずれ、ミナを任せられる男が現れる。

俺は死にたいんだ!!


「な・・んでも・・・ない。」


だから耐えろ、何でもないふりをしろ!!

耐えろ、耐えろ、耐えろ、耐えろ、耐えろ、耐えろ!!!!


「ジン、俺は人間だ。

エルフより確実早く死ぬ。

それでも、ミナを任せられると言えるのか?」


「ああ。

もちろんだ。」


止めろ、それ以上口にするな!!


「今、俺はジンの期待には応えられない。

だが、いつか俺が本当にミナを・・・・・・」


止まれ、頼む、止まってくれ!!


「俺がミナを好きになったら責任は持つ。

責任を持ってミナを幸せにする。

これが俺に今の俺に出来る最大の譲歩だ。」


やっぱり無理だったか・・・・・・

俺は結局、甘いだけで優しくなれないな。


「ああ!!

ありがとう、レン。」


本当に最低だな俺は・・・・



side ジン


やっぱり、レンは信用できる奴だ。

きっとあいつならミナを幸せにしてやれる。


「こんなとこでなにしてるの兄さん?」


「喜べミナ。

今はまだ無理だと言ってたがレンがミナのことを好きなったら責任を持つと言ってくれたぞ。」


「えっ?」


驚いてるな。

やっぱりミナも女の子だからな。


「それはレンが言ったの・・・・・」


「ああ、俺がミナを任せると言ったら今は無理だがと譲歩してくれた。」


「レンはどこ・・・・」


「ん?

眠れないからもう少し飲むって言ってたが。」


「兄さんの馬鹿!!

あのレンがそんなこと言うわけないでしょ!!

レンはどこまでも甘いのよ、そのレンが兄さんの頼みを断れるはずないじゃない!!」


side out


side ミナ


どうしてそこまで無理するのよ。

今頃、兄さんに期待させたって罪悪感に苛まれてる。

私の片思いの為にレンがそこまで傷つく必要なんてないのに!!


「レン!!」


「どうした?

できるだけ1人になるなって言っただろう。」


そんな泣きそうな顔で言わないでよ。


「どうして兄さんにあんなこと言ったの・・・・」


「もう聞いたのか。

心配せずともいずれ答えは出す。

それまで期待せずに待っててくれ。」


「どうして!!

レンは死にたいんでしょ!!

それなのにどうして期待させること言うの!!

それで傷ついているのはレンなのに!!」


死にたがりだから。

だからこそ、私やフリッグの気持ちを知っていても期待を持たせるようなことはしなかった。

私たちができるだけ傷つかないように悲しまないでいいように。

いつも他の人のことばっかり考えて、自分のことを省みないで傷ついてるくせに


「最後に傷つくのはレンでしょ?

死ぬ最後の時まで、ようやく望みが叶ってもそれじゃあ喜べないでしょう?」


「それでも、俺が答えを出せばジンの思いは報われる。

ジンは本当にミナの幸せを願ってる。

だからこそ、俺が答えを出さないことに苛立ってたんだ。」


「巫山戯ないで!!

私がそんな答えを望んでると本当に思ってるの!!

私はそんなに弱くない!!

私を幸せにする?

それならまずレンが幸せになってから言いなさい!!」


私はレンに幸せになって欲しい。

死への願望とそれに伴う悲しみへの罪悪感で苦しんでるレンを助けたい。

私は死ぬなとは言わない。

でも


「せめて、最期の時くらい、レンの望みが叶う時くらい幸せでいてよ・・・・・」


皆勘違いしてた。

平穏な日常が幸せ。

それは誰も傷つけず、自分も傷つかないから。

それがレンが唯一心が休まる時。

レンがそれを失ってしまったら絶対に壊れる。

それが風化なんてするはずがない。

なにもない日常があまりにも安心できるから幸せと勘違いしてる。

今のレンの本当の幸せは死だけだ。


「ごめんな。

俺が甘いからミナを悲しませてる。」


どこまで、どこまで甘いのよ。

自己犠牲で人を助けたって自己満足の偽善でしかない。

それを分かっていながら


「決めた。

もう容赦しない。

私はレンを変える。

レンが自分の幸せを見つけて傷ついてもその幸せを離さないように変えてみせる。」


その末に選ぶのが私じゃなくてもいい。

それでも私は尽くす。

大好きな人が幸せでいられるように。


side out



本当の幸せ。

俺の幸せは何も変わらない平穏な日常だ。

でもそれは、傷つかなくて済むから幸せなのか?


「レンは怖いのよ。

他人を傷つけることで自分が傷つくことを極端に怖がってる。

だから、なにもない日常が幸せだった。

でも、それは逃避よ。

幸せなんかじゃない。」


そうなのか?

俺は勘違いしてたのか?


「俺の幸せは何なんだろうな・・・・・」


「それを一緒に探してあげる。

レンが勘違いだって気付いても変わらない。

私は力の限り振り回してその時その時を楽しんで、いつか幸せを見つけられるように。」


「・・・・・・・・そうか。」


本当にミナはいい女だ。

本気で幸せになって欲しいと思う。

なら、俺は変わらないといけないのか。


「ミナ、俺はまだ答えは出せない。

だが、百年で必ず答えを出す。

それまで頼む。」


「ええ、任されたわ。」


綺麗だな・・・

作者的に一番お気に入りのキャラはミナです。

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