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波乱の予兆

「記念すべき一回目の目的地は首都、アースガルドに決まったわ。」


「やっぱり首都は見てみたいですよね。」


お前ら本当に仲良くなったな。

それにしても最初から首都か。

まぁ、気持ちは分からないわけじゃない。

九つの街の一つであるアルフヘイムでもこの賑わいだ、首都がどれほどのものか興味がないわけじゃないが


「ニーズヘッグは大丈夫なのか?

いくらなりを潜めているとはいえ偽装戸籍を作ったとこだぞ。

最悪、アースガルドに本拠地があってもおかしくないぞ。」


いくら顔が割れてないとはいえあの事件からまだ一月ほどしか経っていない。

アルフヘイムは安全だが、他の所は安全とは言えないし特にミナはまずい。

あの事件で顔が広く知れ渡りすぎてる。


「大丈夫ですよ。

いざとなれば私が守ります。」


「それに堂々と手を出そうものならそれこそ組織の秘密がばれる可能性が高くなるから、そう簡単には手を出してこないでしょう。」


確かにそうなんだが用心したことに損は無いからな。


「・・・・・・分かったが、ミナはフリッグかアリスの側を離れるなよ。

可能な限り1人になるな。」


「分かってるわよ。

意外と過保護なのね。」


「一応、護衛という建前があるからな。」


護衛の報酬だって貰ってるんだ。

護衛対象に危害を加えられては俺たちの意味がない。


「それじゃあ、2日後に出発するから準備しておいてね。」



side フリッグ


この国の首都、アースガルド、楽しみですね。

信仰の街というのがアースガルドの別名だそうですがそこはどうでもいいですね。

信仰してもらえるのは悪い気はしませんが私たち神は結局、世界が滅びることがないように均衡を保つことしかやりませんから敬われても返すことはできませんからね。

それに、神の名を借りてやりたい放題やってるというらしいですから。

そんなものより国の首都で人はどれほど賑わって進化を遂げているか見て回る方が何倍も楽しみです。

本当はレンと2人きりが一番なんですが今回はみんな一緒です。

それも悪くは無いんですけどね。


side out



side ミナ


やっと夢への第一歩が踏み出せる。

アースガルドへは何度か行ったことあるけど、街を見て回ることはあんまりできなかったから本当に楽しみだわ。

それに、何か面白いことがある予感がする。

流石にニーズヘッグと戦うのは勘弁して欲しいけど旅にハプニングはつきもの。

そして、異端は異端を呼び寄せる。

フリッグは神だしアリスは真祖の吸血鬼、私たち兄妹は街の跡取り、そしてその中心にいるレン。

これだけ揃って何も起きないはずがない。

ふふっ、ほんとに楽しみだわ。


side out



アースガルド、信仰の街にしてこの国の中心。

ちなみにこの国は王制だから当然王様がいる。

今はそんなことはどうでもいいが、問題は信仰の街ということだ。

フリッグは能天気だから何とも思っていないかもしれないが神であるフリッグの正体がばれたときは果てしなく厄介だ。

人でも神力を持っている奴もいるようだし、何かのきっかけでばれる可能性だってある。

それに、アリスは吸血鬼だから忌み嫌われる存在でもある。

これもばれたら面倒くさい。

それに、ニーズヘッグのこともある。

本当に厄介事ばかりの旅になりそうだ。


「お兄ちゃん大丈夫?」


「ん? ああ、大丈夫だ。」


なにがあっても俺の日常は侵させない。

最悪、この手を汚そうともこの日常だけは守ってみえる。


「それじゃあ行きましょう。」


ちなみに移動は魔力を利用した自動車だ。

作成者はミナ、しかも自作らしい。

元の世界のようなスピードは出ないが魔法陣に魔力を注げば後は全自動で動くので舵をとるだけでいい。

それにアリスとフリッグがいれば魔力には困らないし、そもそもミかとジンだけでも十分らしい。


「それにしても人の発想にはいつも驚かされます。」


「そうでしょ。

もっと褒めていいわよ。」


最高速度は50~60km/時、さらに地面から少し浮いているので振動もない。

魔力も最小限で済むよう何度も魔法陣を描き直したらしく燃費もいい。


「どう、レン、驚いた?」


「ああ、流石にこれには驚いた。

ジンが自慢したくなるのも分かる。」


「そうだろう。

俺の自慢の妹だからな。」


「そ、そう。

面と向かってそう言われると照れるわね・・・・・」


こういうところは本当に可愛いんだよな。

言ったらフリッグとジンは切れて、ミナは暴走するだろうから言えないがな。


「この調子で何事もなければ明日の昼ごろには着くと思うわ。

だから、適当なところで今日は泊まることになるから。」


不吉なことを言うな。

ミナが言うと本当に何か起きそうで怖い。


「レン、気をつけろ。

ミナがこういうときは経験上何か起きるぞ。」


お前も苦労してるんだな。


「いいじゃない。

せっかくの長旅なんだから思い出になることが起きないとつまらないわ。」


俺はお前のように瞬間瞬間を楽しめるような精神してないんだよ。


「諦めなさい、レン。

これから何度もこんなことがあるんだから開き直って楽しみなさい。」


やっぱり本気なんだよなぁ。


「む、残念ですがレンは私が変えますからミナは頑張らなくていいですよ。」


「アリスも負けない。」


「大人気だなレン。

ミナとは友達までにしておけよ。」


相変わらずのシスコンだなジン、そして空気を読め。


「喧嘩はしないでくれよ。」


俺の為に傷つく人なんていて欲しくない。

自然に薄れればいいんだが無理そうなんだよなぁ。

だから、俺に出来ることは現状維持。

俺が変わらなければ当分はこのままだろうし、そもそも変われないと思うがな。

とりあえず何事もなく、九つの街よりは小さいがそこそこ大きい町で今日は宿泊することになった。

しかし、不気味なほど何もない。


「気を抜くなよ、レン。

ミナの直感は嫌というほど当たる。」


「だが、ここまで来て何が「誰か捕まえて!!」・・・・」


こっちに向かって男が走って来て、その後ろから追いかけてる人がいる。

ひったくりか、思ったより大した出来事じゃなかったな。


「どけ!!」


それにしても間が悪かったな。

俺たちが通らなければ無事に済んでものの。


「危ないよ。」


可哀相に、よりによってアリスの所に行くなんて。

まぁ、一番小さいから分からないわけじゃないがそこは一番の鬼門だ。


「アリスに触れていいのは私たちだけです。」


アリスが魔眼で動きを止めてフリッグが重力で押し潰す。

見事な連係プレイ、ひったくりに同情してしまう。


「ありがとうございます。」


「気をつけろよ、それじゃあな。」


なんだ、この嫌な予感は・・・・

一刻も早くこの場を離れろと本能が告げている。


「ま、待ってください。

あなたの名前は?」


聞かれたのは俺じゃない、男が男の名前を呼びとめてまで聞くなんて気持ち悪すぎる。

呼びとめられたのは


「私ですか?」


まぁ、見た目だけならかなり目を引く美少女だから呼びとめたくなるのは分かるがな。

最近は、家事も完璧にこなすようになってるし、戦闘能力は無敵だし、これで病んでなければ言うことないんだが。


「フリッグ・カザミネです。」


「フリッ「名前で呼ばないでください。」カザミネさんですね。」


本当にお気に入り以外のやつ以外には厳しいんだよな。

一目惚れした相手にこの仕打ち、自覚は無いだろうが同情したくなる。


「僕の名前は、グレイ・セシリアと言います。

あの、よかったら僕と付き合ってください。」


「嫌です。」


展開が早すぎる。

あって30秒で告白して即答で断ってる。

それにしてもセシリア、どこかで聞いたような。


「行きましょう。

レン、後でちょっと付き合って。」


ミナが滅茶苦茶面白そうな顔をしてやがる。

くっ、やはり面倒事か!!


「あの、どこに住んでるか「嫌です。」・・・」


頑張るなぁ。

結局あの後、渋々引き下がって行ったが問題はその後


「まったくしつこい人です。

私はレン一筋なんですから他の男なんかに興味なんてありません。」


さりげなくアピールするな。


「それで、あいつはいったい何者だ?」


フリッグがアリスを相手している間に聞いておくか。


「セシリアってのはアースガルドの王族の名よ。」


まさか、ここで王子が登場するとは。


「偽名の可能性は?」


「偽名で王族の名前なんて語ると思う?」


「逆に、こんなところで王族の名を出すか?」


護衛もなしに王族が独り歩きなんて危険すぎるだろう。

ここはアースガルドの管轄とはいえ、アースガルドではないんだから。


「ちなみに、王子の中の1人に神の力を受け賜わったって言う噂があってね、これは結構信憑性が高いのよ。」


おいおい、いったい何の偶然だ。


「面白くなってきたわね。」


「王族と関わりを持つなんて冗談じゃないぞ。」


「ま、あくまで推測の域を出ないから本当にあの子が王族か分からないけどね。」


もし、さっきの奴が王族なら厄介極まりない。

近くに護衛の影は無かった。

いくらお忍びにしても危険すぎる。

つまり


「あの子が王族だとしたら、逃げ出したか、誘拐されたか。

身なりがまだきれいだったから前者かな。」


または、追放されたか。

どれをとっても厄介なことには変わりない。

今日の様子からフリッグを諦めたとは思えない。

そのことを含めて考えると、やっぱり息抜きに抜け出したという線が高いか。


「本当にレンと居ると退屈しなくて楽しいわ。」


他人事だからって言いたい放題言いやがって

まぁ、フリッグだったのが唯一の救いか。

ミナだとジンが切れるし、アリスだとフリッグとミナが切れる。

アリスだと俺も切れるかもしれないし。

前途多難だなぁ。

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