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アリスの楔

「カザミネさん、あなた方の実力を見込んで受けて欲しい仕事が有るんですが。」


アリスを引き取って早1月、フリッグの指導のおかげで力の制御から魔法の効率的運用まで日に日に強くなってきてる。

それに、引き取るころはおぼつかなかった言葉もミナの指導で


「お兄ちゃん、どうかしたの?」


この通り、違和感がないように話せるようになっている。

流石に、俺やミナのように作戦を立てて戦うなんてことはできないがそれでもとんでもない成長だ。


「受けて欲しい仕事があるんだと。」


ちなみにホームギルドの役員も国から指令された依頼を一定以上消化しなければいけないらしい。

最近は俺たちがかなりの頻度で受けているのでここのホームギルドの役員は大喜びらしい。


「どんな仕事?

どんな仕事でもお兄ちゃんはアリスが守るね。」


いくら成長してもアリスの可愛さは健在。

むしろ物をはっきり言えるようになったぶんその破壊力は増してる。


「いつにもまして可愛らしい妹さんですね。

もう1人の妹さんはどこにいらっしゃるんですか?」


ちなみにフリッグはミナとどこに行くか決めている。

一応、月に1度は遠出をする際護衛すると約束したからな。

ちなみに、あいつのヤンデレはもちろん健在。

あまりにアリスに構いすぎると切れる。

一週間前はマジで監禁されかけた。

ちなみにミナは最近幼児退行はしていない。

そうそう、慌てるようなことは起きてないしな。


「あいつは今、旅行の準備中だ。」


「いいですね、旅行。

カザミネ兄妹が来てからは仕事が次々捌けるので私たちも楽をできて助かってます。

それで受けてくれますか?」


「ちなみにどんな仕事だ?」


流石に内容を聞かないで受けるような馬鹿な真似はしない。

アリスがいるとはいえニーズヘッグを潰せなんてのは無理だからな。


「アルフヘイムの管轄下にある中規模の町にドラゴンが出たらしいんです。

今はまだ被害が出てないみたいですが、知能の低いドラゴンはかなり危険が高いので被害が出る前に討伐して欲しいとのことです。」


ドラゴンか、この世界でもドラゴンというのは最強の生命体らしい。

最強といっても上から下まであって下の方は普通に人でも倒せるらしい。

ちなみに上に行けば行くほど生きた年数が長く、知能も高い。

なので今回はそんなに強くはないが腐ってもドラゴンだ。

はっきり言って俺が勝てるような相手じゃない。


「報酬は?」


「前金が金貨15枚、成功報酬がプラス20枚です。

さらに、ドラゴンの牙や鱗などを持ち帰ってくれた場合、こちらで買い取らせていただきます。」


報酬は悪くない。

ドラゴンの牙や鱗は入手が困難なためかなり高価なものになる。

今回は、レベルの低いドラゴンだから相場より低めだろうがそれでも十分な収入になる。


「どうするのお兄ちゃん?」


「アリスはドラゴンに勝てると思うか?」


「う~ん、まだ戦ったことがないからはっきり言えないけどお姉ちゃんより強くないよね?」


そりゃそうだろう。

フリッグを相手取れるのは今のところアリスだけだ。

それもかなり手加減を加えた状態でだ。


「いざとなればフリッグが飛んでくるだろう。

行くか、アリス。」


「うん♪」


やっぱりアリスは和むなぁ。



side アリス


初めまして、アリス・カザミネです。

今までは上手くしゃべれなかったからアリス視点は無かったんだけどミナお姉ちゃんの指導のおかげでこの場に立てるようになったよ。


「それにしてもいい天気だ。

大丈夫か、アリス。」


「うん。

太陽は苦手だけどそれでどうこうなったりしないから。」


死徒は駄目な人もいるらしいけど、真祖ともなれば太陽は生れた時から克服してる。

私は生れてまだ十数年くらいしか経ってないけど真祖だからまったく問題ない。


「お兄ちゃん、血を貰っていい?」


「もうそんな時間か。

いいぞ、ほら来い。」


アリスが一番好きな時間。

それはお兄ちゃんに抱きついて血を吸う時。

最初に血をくれるって聞いた時は本当に驚いたんだよ。

お兄ちゃんに会う前、他の人から吸おうとしたら逃げられたり攻撃されたりしたから。

今はお兄ちゃんがいるから他の人の血なんてどうでもいいんだけど。

お兄ちゃんの血は今まで飲んだどんな血より美味しいし、好きな人に堂々と抱きつける唯一の時間。

それ以外にあんまりべたべたするとお姉ちゃんが怖くなるからできないしね。

それよりも、お兄ちゃんはアリスが好きって言っても本気で捕えてくれてない。

やっぱり妹って言うのが駄目なのかな?


「どうかしたか?」


基本的にお兄ちゃんは鋭い。

だからこそ、お姉ちゃんやミナお姉ちゃんから告白されても先回りして上手く流してる。


「なんでもないよ。

御馳走様。」


「それじゃあ行くか。」


本当にどうやったらお兄ちゃんって落ちるんだろう?



side out



さて、目撃された町へと着いたわけだがドラゴンなんて見当たらない。

そりゃ、町の近くで見つかったら大変だがいちいち探すのも手間だ。

こういう時フリッグがいてくれたら助かるんだが。


「お兄ちゃん、たぶんあっち。」


「分かるのか?」


「うん。」


やっぱり人間とは基本スペックが違いすぎるな。

本当にいたよ。

背中に翼があって尻尾が生えてる。

典型的なドラゴンって感じだな。

あれなら固定大砲をいくつか配置すれば俺でも倒せそうだ。

まぁ、やる必要はない、というかやれない。


「はぁ!!」


改めてみるととんでもないな・・・・・

武器も使わず素手で強靭なはずのドラゴンの鱗を砕き、ブレスをかき消す。


「止め!!」


あれは死んだな。

どうやったかは知らないが外面に傷は無いのにその下にはクレーターが出来てる。

鱗がお金になるから極力破壊しないようにしたんだろう。


「終わったよ、お兄ちゃん。」


まぁ、どんなに人外でもアリスは俺の可愛い妹ということに変わりは無いがな。


side アリス


弱かったなぁ。

魔法を使う必要もなかったよ。


「それにしても強くなったな、アリスは。」


「お姉ちゃんがいろいろ教えてくれたから。」


お兄ちゃんには負けちゃったしね。

いまなら、あの爆撃が来ても大丈夫。

障壁を使わないでも耐えられるだろうし、かわせる。


「でもな、別にアリスは戦う必要なんてないし俺たちに迷惑をかけるとか考えないでいいからな。」


「大丈夫だよ。

アリスはお兄ちゃんを守りたいっていうアリスの気持ちの為に戦ってるんだから。」


「そうか、それならいい。」


「それとねお兄ちゃん。

私はもうお兄ちゃん以外から血を吸わないよ。

だからお兄ちゃんが死んじゃったらアリスも死ぬね。」


「それは許さない。

主従の契約は使いたいくないが俺が死んでも生き続けろ。」


「嫌。

例え、契約がアリスを生かそうとしても絶対に死ぬ。」


お兄ちゃんがいない世界なんて興味ない。

それに、アリスがこう言えばお兄ちゃんは死ねないよね。


「アリス!!」


「絶対に死なせないよ。

お兄ちゃんは皆から必要とされてるんだから。

それを抜きにしても好きな人を目の前で死なせるわけないよ。」


ミナお姉ちゃんも言ってた。

お兄ちゃんにたくさんの楔を打ち込んで死なせないようにした後、お兄ちゃんを変えるんだって。

お姉ちゃんは永遠を信じさせるって、ミナお姉ちゃんは振り回して、別のことで幸せを感じさせるって言ってた。

それじゃあアリスは


「アリスはお兄ちゃんに愛してもらう。

たくさん、たくさん、妹としても恋人としてもそうすればお兄ちゃんは死なないよね?」


いっぱいアリスのこと想って、アリスを中心に考えてもらえるように。


「分かったよ。

その代わり約束してくれ、百年後、俺が変わることがなかったら俺が死んでも生き続けてくれ。」


「これでお姉ちゃんたちと同じだね。」


「ああ、まったくアリスには敵わないな。」


「大好きだよ、お兄ちゃん。」


例え、お兄ちゃんがどんなことになってもずっと好きだよ。


side out



参ったな。

まさかアリスがあそこまで考えてるとは思わなかった。

また死ねない理由が一つ増えた。

フリッグは永遠、ミナは刹那、アリスは平穏なんて関係なし。

三者三様、どうして俺なんかにここまで尽くしてくれるのか。

どう転んだところで変わりはしないというのに。

俺が誰かを好きになっても結局、失ってしまうことを先に考えてしまう。

傷つきたくないから、先に逃げておく。

信じることが怖くて逃げているだけの俺だってのに。

三人の中で誰が一番ですか?

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