新しい妹
吸血鬼退治から翌日
「どうだ吸血鬼の様子は?」
「傷はふさがっていますし、呼吸も安定してるので眠ってるだけのようです。」
やっぱりあれはやりすぎたか?
いくら化物だとしてもRPGをなんの防御もなしにくらわせたからな。
「それよりレン、この吸血鬼をどうするつもりですか?」
「とりあえず話を聞いてどうするか決める。」
こいつは血は吸っているが人は殺していない、ただ腹が減ってただけだろう。
それに精神がまだ子供みたいだったしできれば乱暴なことはしたくない。
「分かりました。
しかし、私は吸血鬼を癒すことはできませんよ。
暴れ出したら殺すかもしれません。」
「その時はその時だ。」
どうやら吸血鬼には神術との相性が悪いらしい。
それにしても遅いな。
「来たぞレン。」
「お邪魔します。」
噂をすれば
「どうだあの後。」
「ずっと目を覚まさない。
このままだと思うと罪悪感で死にたくなる。」
「気にしすぎよレン。
吸血鬼は血さえあれば生命力は最強クラスなんだから。」
なぜこの兄妹をこの家に呼んだかというと吸血鬼に対しての情報が欲しかったからだ。
もちろんこの兄妹だと分からないように変装に家周辺にはフリッグが結界を張っていて気付かれることはない。
「で、調べてくれたか?」
「そりゃ、愛しのレンの頼みだもの。」
「ミナ、ここで私のレンを誘惑するなら追い出しますよ。」
「レン、分かっていると思うが・・・・」
またこのやり取りか、いい加減飽きろよ。
「とりあえず吸血鬼のことを教えてくれ。」
「分かったわ。
吸血鬼って種族は結構希少種で文字通り個体数が少ないのよ。
一応九つの街の一つヨトゥンヘイムに集落があるらしいけど実際にあるかはっきりしてないみたい。」
「ちなみにヨトゥンヘイムは修羅の街って呼ばれててな強い奴ほど偉い。
力こそ正義ってところだ。
だからあそこにいる奴等はかなり強い。」
ふむ、どんな事情か分からないがこいつが噂になり始めたのはつい最近の話だ。
地図からするとヨトゥンヘイムはアルフヘイムからかなり離れている。
血が欲しいならもっと近くの街に行った方が賢明な判断だし、なにより子供がわざわざ遠くを選ぶとも思えない。
つまり、誰かが意図してここに放ったか、他の所まで運ぶ途中にこいつが逃げ出したか、こいつの親がここまで逃がしたかだが
「この国に奴隷制度ってやつはあるか?」
「言いたくないけど、一部の金持ちにそういうことをやってる奴がいるわ。
もちろん国は認めてないけど暗黙の了解になってる。」
「この街にそういう奴はいるか?」
「分からないけど、いないとは言い切れない。」
とりあえず一番目の理由は考えずらいな。
可能性は二番目か三番目だが、どうも二番目のような気がするな。
「お前らはこいつをどうすればいいと思う?」
「できれば親元に帰してあげたいけどヨトゥンヘイムは結構遠いから。
私もそうそう簡単にこの街から出ていける立場じゃないし。」
さて、どうしたものか。
「んっ・・・」
「レン、目を覚ましたみたいです。」
「フリッグはいつでも抑えられるようにしておいてくれ。」
「分かりました。」
暴れ出さなきゃいいんだが
「おなかすいた。」
そういえばあの時少し血を吸っただけで何も食べてないんだったな。
「吸血鬼って血以外で何か食べられるのか?」
「さぁ?
吸血鬼の実態なんてそうそう知ってる人いないんじゃない。」
困ったな。
なんとかしてやりたいがフリッグは神だから吸血鬼には相性が悪い。
この兄妹も血を吸われて良い気はしないだろうし、やっぱり俺しかいないか。
「ほら、血が飲みたいんだろ?
いくらでも飲んでいいから来い。」
「「「レン!!」」」
「いいの?」
「ああ、お前みたいな子供は放っておけないしな。」
それに俺は不老不死だしどれだけ血を吸われても問題ない。
「ありがとう、いただきます。」
痛っ
やっぱり牙が刺さる時は痛むな。
「ちょっとレン、大丈夫なの!!」
「俺は不老不死だって言っただろう。
だから俺は常に健康状態を保てるんだよ。」
あっ、これはやばいこと言ったか?
「常に健康状態?
それってあの時の勝負は両方とも痺れ薬だったってことよね。」
怒ってるよなぁ。
そりゃこんな反則技使われたら俺だって怒る。
「卑怯よレン!!」
「知るか!!
そもそもお前だってあれは運の勝負じゃないってことくらい分かってただろう!!」
「そんな反則技は卑怯よ!!
分かるわけないじゃない!!」
分からないようにしたんだから当たり前だろう。
「だがジンは気付いてたぞ。」
「兄さん、ほんと!!」
「ああ、あの二つの粉からは同じ匂いがしたから怪しいとは思ったがレンに聞いたら違うって言われたから気のせいかと思ったが。」
「それ早く言ってよ!!」
ああ、こいつがこうなると幼児退行するんだよな。
「・・・・名前。」
ん?
「名前で呼んでくれた許してあげる。」
こういう時にうかつに行動するとジンとフリッグが切れるからな。
まずは様子見だ。
ジンは・・・・・・・・・問題ない。
フリッグは・・・・・・・そりゃあ切れるよなぁ。
「・・・・・・いいですよレン。」
そういうならこの圧力をどうにかしろ。
「分かったよ、ミナ。
これでいいか?」
「うん!!」
「どさくさにまぎれて抱きつかないでください。」
ミナの体が俺の前でピタリと止まった。
よほど切れてるなこれは。
「ごちそうさま。」
そういえば忘れてた。
「お前名前は?」
「ありす。」
いかにもって名前だな。
長い銀髪に青い瞳、人形のような容姿。
成長したらフリッグやミナと同じくらいの美少女になるな。
「アリスはどこから来たんだ?」
おいおいお前らいくら名前で呼んだからってこんな子供に嫉妬するなよ。
「わかんない。
まえにいたところでへんなひとたちにちをくれるっていうからついてきた。
だけどあんまりくれなかったからにげてきた。」
「両親は?」
「しらない。」
「これからどうするつもりだ?」
「わかんない。」
アリスの話を聞く限り俺の予想はほとんど当たりだな。
こいつをどうやって抑えていたか気になってたんだがそれなら納得できる。
しかし、一つだけ疑問が残る。
「どうして人を殺さなかった?」
「わかんない。
でも、ひとはころしちゃいけないってだれかにおしえられたきがする。」
最低限のことは分かっているようだな。
だが、空腹が限界に来ればそれを守るか分からない。
「フリッグ、こいつここに置いていいか?」
「駄目です。」
即答。
お前はこんな小さな子供を追い出すのか?
神って器量狭いな。
「一応理由を聞いておこう。」
「レンにこれ以上女を近づけたくありません。」
「その意見はどうかと思うけど私も賛成かな。
今はおとなしいけどいつ暴れ出すか分からないし。」
「レン、悪いが俺も賛成だ。
そいつの力は身をもって経験したが危険すぎる。」
一対三か・・・・
こいつらが言ってることは分かるし正しいとも思うんだがやっぱり俺は甘いんだよ。
「おにいちゃん。」
「どうした、ん!!」
「「ああっ!!」」
「レン、ロリコンは犯罪だぞ。」
黙れジン。
シスコンだって行きすぎると犯罪だ。
「どういう「しゅじゅうのけいやく。」なに?」
「これでアリスはおにいちゃんにさからえない。」
なるほど。
子供と思ってたがそこそこ頭は回るらしい。
「俺とアリスは主従の契約を交わした。
つまり俺がこの街に危害を加えようとない限りアリスは安全だ。
それに血はすべて俺が提供する。」
これで兄妹は抑えた。
後は・・・・・・・
「レン・・・・・・・・
ミナの時は許しましたが今度ばかりは許しませんよ。
レンは私の物なんですから他の女なんかに触れたら許しません。」
マジで怖い。
最近本気で貞操の危機を感じ始めてるぞ。
だが、やってやれないことはない。
「落ち着けフリッグ。
俺はお前みたいな外見が好きだからアリスのことを好きになったりはしない。」
恥ずかしい。
最近人前でこんなことするの増えたなぁ・・・・・
「ふぇ!!
レレレレレ、レン!!
そ、その、あの私「だからアリスのこと許してやってくれないか?」も、もちろんです。」
我ながら最低だな。
でも、アリスのこと放っておくわけにはいかないし割り切ろう。
ちなみに嘘は言っていないからな。
外見は好きだが中身は別だ。
「レン、私はどう?」
また厄介な。
下手な答え方をすればジンが切れる。
「ジンも言ってる通りミナも相当な美少女だと思うぞ。」
これならどうだ?
「分かってるなレン。」
よし。
「おにいちゃん、ありすは?」
アリスよどうしてお前は俺を追い詰めるようなことを言うんだ。
好きだと言えば間違いなくフリッグとミナが暴走する。
嫌いだと言えばアリスが悲しむ。
考えろ、なにか道はあるはずだ!!
「ア、アリスは俺の妹のようなもんだ。
兄が妹を嫌えるわけないだろう。」
これがギリギリのライン。
女として見ているわけでも好きと断言したわけもなく、かといって嫌いと言っているわけでもない。
フリッグは・・・・・・・・・・・まだ悶えているのか、これなら大丈夫だ。
ミナは・・・・・・・・・・・若干危ないが大丈夫だろう。
ジンは
「流石だレン。
そうだよな、兄が妹を嫌えるわけないよな!!」
よく考えればシスコンのこいつが妹と聞いて否定的になるわけないか。
「おにいちゃん、だいすき。」
やばい!!
なんだこれは!? 超和むぞ!!
フリッグやミナのような美少女を見ていても眼福だが、残念なことに中身が面倒くさいの一言に尽きる奴らだからな。
それに比べてアリスは・・・・・・・・・・・
俺もジンのことシスコンって言えなくなるかも・・・・・
とりあえずメインはこの5人です。
その内増えるかもしれませんが・・・・・