同族嫌悪
side フリッグ
「ようこそ、あぁ、そんなに殺気立たないでも、如何こうするつもりはありませんよ」
「レンをどこにやったんですか!」
「気の早い方ですね、兄さんは別のところで戦っていますよ」
映し出される別の部屋、あれはリンネ!?
「兄さんを殺すことができれば、あの方を元の世界、元の時間に戻す。
簡単な契約です。
今の兄さんではどうあがいたところで彼女には勝てないでしょう」
すぐ助けにいきます!
「無駄ですよ、この部屋からは出られません。
どうしても出たいというのなら、私を倒してみることですね」
レンからは絶対に舞花さんとは戦うなと言われていますが
「通らせてもらいます」
「仕方ありません、どうぞ、先手は譲ってあげます」
「『ラグナロク』」
「面白い技ですね、世界を武器にするなんて」
主神すら一撃で倒せる技なんですけどね。
倒すどころか、傷一つ付ける事すら敵いませんか。
「しかし、これで分かったでしょう。
私を倒すことはできない、別に悲観的になる必要はありませんよ。
貴女が弱いわけではなく、私が強すぎるんですから」
勝てない、確かにこれは無敵ですね。
格の違いどころか、次元を1つ超えた強さ。
「それでも、諦める理由にはなりません」
例え、負けると分かっていても、レンならきっと諦めず、勝つ方法を導き出そうとするはずです。
「やっぱり、兄さんと一緒に過ごしてきたんですね」
「どういうことですか?」
「もし、貴女が兄さんと会わず、私と対峙していたらどうなっていたと思いますか?
いえ、もっと、簡単に要約すると、兄さんと会っていない貴女は、今ここに立っていられると思いますか?」
「それは……」
おそらく、無理です。
力だけが私のすべてだったあの頃、その私を塵を払うがごとく簡単にあしらわれていたら、立ち直れなかったでしょう。
「そういうことですよ。
別に貴女が特別というわけじゃありません。
兄さんの近くにいる人はみんなそうなんですよ。
急激に成長させるなんてことはありません、しかし、頑張ってみよう、兄さんの近くにいるとそう思わされるんです。
私もその1人ですからね」
そう言われれば、ミナ、アリス、フリュネ、ジン、は勿論、アルフヘイムの人達も上を目指すようになりました。
皆レンが居なければ、きっと、舞花さんに立ち向かおうなんて思えなかったんでしょう。
「どうして諦めたんですか?
それほどの力を持って、レンと過ごして、どうして諦めたんですか!」
「ミナ・レグスさん、私の記憶の一部を見せてあげたんですが何か言ってませんでしたか?」
『駄目ね、見せられたことは、話せないみたい。
でも、あの娘が言うことは理解できる。
たぶん、私じゃあの娘の前に立てない』
「何を見せたんですか?」
「聞いている通り、兄さんと私の生活ですよ。
何も特別な事じゃありません。
すぐに忘れてしまうことになりますが、貴女にも見せあげましょう」
確かに、普通の生活ですけど、え……
「13億523万2419回、それが兄さんが死ぬまで過ごした回数です。
何度も何度も、いろいろな条件でやり直しました。
中には、私は兄さんと結婚までしたことがあります。
それでも、結末は同じです」
「あ、あああ……」
これが、これが舞花さんがレンを殺すという結論に至らせた理由。
「兄さんは決して自殺なんかしませんよ。
そんな、簡単な逃避なんてしません。
しかし、その強さが兄さんを苦しめます」
何度も何度も、繰り返されるレンの死。
「兄さんはこの私から見ても跳び抜けて優秀です。
その能力、人格者でもあることから周りからは慕われ、責任ある仕事をいくつも抱えました。
しかし、出る杭は打たれる、兄さんをよく思わない人物がいないはずがありません。
それでも、兄さんは仲間を守る為、それらの人物を排斥してきました。
兄さんにとってそれは地獄の苦しみであることは貴女にもわかるでしょう?」
狂ってしまいそうになります。
これを見ながら、戦線に立つことができたミナは流石ですね
「今の兄さんも同じです。
近い将来、必ず限界が着ます。
その結果は見せたとおりです」
罪悪感に身を焼かれ、狂いそうになりながらも気丈に振舞い続け、体を壊し死に至る。
常に体を正常に保つようにしてても、心が持たず廃人に。
「これで貴女も分かったでしょう。
兄さんは100年も持ちません。
ならば、今すぐに殺してあげるのが慈悲です」
でも、1つだけ分かったことがあります。
「装填、ワールドバレット」
「どういうつもりですか?」
「記憶を見せて貰ったからこそ分かりました、レンは必ず救えます」
side out
「────はぁ、はぁ」
天笠の攻撃は音による衝撃波のみ、だが、全方位という点が厄介だ。
障害物があれば、防ぐことはできる。
だが、視覚情報ではなく、音による情報で俺の居場所、弾の軌道が読まれすべて回避さてしまう。
「隠れても無駄だ」
「───っ!?」
多少の障害はあってないようなものか。
このままじゃ、いずれ追い詰められる。
何か打開策はないのか!?
「諦めろ、風峰、お前の力では私に勝つことは不可能だ」
言いたい放題言いやがって……まてよ、俺の力?
いけるかも知れない、いや、もう迷っている時間なんてない。
「天笠!」
「自棄にでもなったか、これで終わりだ!」
賭けは俺の勝ちだ!
「なっ!?」
スタングレネード、音と光による攻撃。
そう、俺は天笠の前では銃のみでしか戦ってこなかった。
俺の力は武器を創る、それを天笠は知らない!
「形勢逆転だな」
「っち、まさか、そんな物まで用意しているとはな」
「俺の勝ちだ、舞花のところに案内してもらおうか」
「甘いな、風峰、お前は唯一の勝利のチャンスを逃した」
「な……んだと……」
体が動かない!?
「音による人体掌握、精密な制御が必要でこれくらいの距離でないと使えないのが欠点だ。
風峰、私がお前の能力を知らないとでも思ったか?
今までのすべてはこの為の布石、知らないふりをしていたんだ」
まんまと罠に飛び込んだってわけか……
「銃を渡せ」
「っぐ……」
抗おうとしても無駄か、本当に体の制御を奪われている。
「これで、本当に終わりだ。
だが、1つだけ聞きたいことがある。
お前はなぜ、抗う。
お前は誰よりも死を望んでいたはずだ」
「死を望んでいることは変わらない、だが、それ以上にフリッグと共に生きていきたい。
どれだけ苦しくても、辛くても、あいつと一緒に生きたい」
そもそも、誰かに救ってもらおうって考えが間違いだった。
結局、自分を救えるのは自分しかいないんだ。
フリッグは変わった、あいつは俺がいたからというかもしれないが、それはあいつが変わりたいと強く望んだ結果だ。
「────そうか、だが、お前はここで死ぬ。
いや、私がお前を殺す」
「だろうな、俺がお前を嫌いなように、お前も俺が嫌いだからな」
生きる意味がなければ生きていけない。
普通ならそんなものなくても、惰性で生きていけるし、そもそも、生きる意味なんて考えもしないのかもしれない。
だが、俺たちはそれが必要で、俺は俺以外の誰かに、天笠は母親の夢にそれを求めた。
結果は今の通り、生きることに絶望するしかなかった。
「「お前を見ていると愚かな自分を見ているようで苛々する」」
同族嫌悪、結局、天笠と俺は似た者同士なんだろう。
だから、俺はこいつを倒し過去の自分と決別する!
「お前を殺し、私は私の望みに殉ずる」
「お前を倒し、俺は未来を生きる」
「死ね、風峰!」
銃口が引かれる、だが、ここまで来た俺の勝ちだ!
「ぐああああああ!?」
「俺がお前の能力を知らないとでも思ったか?
俺はどうして最初から、人体掌握をやらないのか不思議だったんだよ。
だが、その理由に気付けば、後は簡単だ」
引き金を引いた瞬間に、撃たれるのは鉛玉ではなく、衝撃と共に発動するスタングレネード。
効力は劣るが、あの距離で、不意に発動すれば人体掌握は解ける。
「すべてはこのための布石、策士策に溺れたな、天笠」
「か…ざ…みね…」
「少し眠ってろ、恨み言ならいつでも聞いてやる」
はぁ、何とか倒せた。
今頃、舞花とフリッグは戦っているはず。
俺が辿り着くまで、無事でいてくれよ
いよいよクライマックス!
舞花の積年の想いを受け止め、乗り越えたフリッグが出す答え。
語れるレンと舞花の出会い、レンの想いは舞花に届くのか
次回『思い出』
それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆’・:*;’・:*’・:*’・:*;’・:*’バイバイ☆