表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/127

ニダヴェリール その⑩ 決勝戦

「お前ら、馬鹿だろ?」


ここが『月の庭』だからと言ってやりすぎだ。

俺は体質でまだいいんだが、フリュネでさえも余波で気を失ってるぞ……


「お姉ちゃんと一緒にしないでよ!」


「それはどういう意味ですか!」


「言われなきゃわからないの?

アリスが思ってた以上に可哀想だね」


「ぐぐぐ、元をただせばアリスが必要以上にレンに引っ付いているのがいけないんです!

それに、レンだってアリスみたいなお子様体形より私のような大人の体に抱き着かれた方がいいに決まってます!」


確かに、フリッグは出るところは出てるし、ウエストも細い。

それに比べアリスは……まぁ、言わぬが花だろう。


「アリスも数年経ったらそれくらいになるもん。

それに、お兄ちゃんはお姉ちゃんみたいな年増じゃなくてアリスみたいな若い子がいいに決まってるよ」


あぁ、そう言えばフリッグは少なくとも1万歳以上だと言ってたな……


「なっ!?

か、神という種族は基本的に老化なんてしませんから歳なんて関係ありません!」


「へ~、でも、精神的には老けていくんだよね。

これからはお姉ちゃんじゃなくておばさんがいいかな?」


あー、何か切れた音がしたな……


「あ、アリスぅぅぅ!!」


「ちょ、お姉ちゃんそれは洒落にならないよ!」


「聞き分けの悪い子にはお仕置きです『ラグナロク』!!」


「きゃぁぁぁぁ!?」


なんというか……


「やっぱり、お前ら馬鹿だろ?」


「で、そこの2人はどうしてぐったりしてるの?」


あの後も散々暴れたからな……

ベルゼムを手に入れ、アリスの力も増したから以前にも増して大技の応酬。

『月の庭』でなければ間違いなく世界なんて塵も残さず消えていただろう。


「自業自得だから気にするな。

それより、ジンは決勝まで行けたのか?」


「ああ、あれだけ啖呵切っておいてレンと闘えないまま負けるわけにもいかないからな」


「そう言うが、俺なんて素人に毛が生えたレベルだぞ?」


「もちろん、正々堂々闘えとは言えない。

そもそも、レンは正面切って戦うタイプじゃないしな」


「どんな策でも弄してきなさい。

全て読み切って、今度こそ私たちが勝つわ」


「後悔するなよ?」


「させてみなさい」



とりあえず、今ある情報をまとめよう。

武器は刀、防具は身軽に動けるように最低限しかない。

だが、下手な攻撃は刀で弾かれるかいなされてしまう。

毎日手合わせをしていたからこそ地力が違いが分かる。

それを覆すことができる神力、アリスが散々暴れたおかげで魔力の問題はクリアだが、1度フリュネ戦で見せてしまっているから通用するか……

銃弾を刀で弾くジンだ、神力が封じられてしまえば、トリックミラーによる多方向射撃も効果が薄い。

戦闘に関してはアリスの意見が欲しいところなんだが……


「なぁ、どうしてそんなに不機嫌なんだ?」


「さっき、ミナお姉ちゃんに見惚れてたよね……」


挑発的で、自身に満ちた迷いのない眼。

あの時の不敵な笑み、不覚ながらも見惚れてしまったことは認めよう。


「……うん、お兄ちゃん!」


嫌な予感がする。

いや、これまでの経験上これは最早確信だ。

脱出経路は……


「エッチしよう!

お兄ちゃんとミナお姉ちゃんは性格的に気が合うだろうけど体の相性までは分からないしね。

お兄ちゃんとアリスなら体の相性はばっちりなはずだから、ミナお姉ちゃんに負けないためにもエッチしよう!」


「ひとまず落ち着け、いつもの冷静なアリスを取り戻すんだ」


「このまま手をこまねいて、お兄ちゃんを誰かに取られるなんて絶対にいや!

この際、アリスが上じゃなくて、お兄ちゃんの好きにしていいから……しよ?」


俯いてもじもじしながら言う姿は、確かに愛らしいが俺には演技だと分かる。

というか、いつの間にこんな芸を身に着けたんだ?


「だから落ち着け、俺がアリスに手を出したらいろいろなものが終わる」


俺の社会的地位とか、記憶……はどうなるんだろうか?


「愛し合う2人が一つ屋根の下で2人きりなんだよ!

こんな状況で何もないなんて許されないよ!」


いや、許すも許さないも今まで何かあったことなんてないだろう。

それにしても、今日のアリスは変だな。

いつもなら、誘うではなく襲うだからな。

それに、言っていることもアリスにしては幼すぎる。

ミナの件以外に何かあったか?

……あったな


「アリス、ありがとうな」


「また、話を逸らそうとする……」


「それは否定しないが、今回はアリスのおかげで上手く行ったようなものだからな。

こうされるのは嫌か?」


「……いやじゃない」


あの時もこうやって頭を撫でてやってたんだが、フリッグに邪魔されまだ十分じゃなかったらしい。

それが無意識に不満だったんだろう。


「アリスね、誰かの為って言葉嫌いなんだ。

誰かの為って自分のやったことの責任を押し付けてる気がするから。

アリスはいつもお兄ちゃんの為じゃなくてお兄ちゃんに褒めてもらうために頑張ってるから、お兄ちゃんの役にたてたらこうやって褒めてほしいな」


俺はもう少し頼って欲しいところだが、それは俺のエゴか。

成長を嬉しく思う反面寂しくもあるな……


「これくらいならお安い御用だ」


「ありがとう、もういいよ

それじゃあ、明日の作戦会議しよっか」


side アリス


「うぅぅ~」


「どうしたんですか、そんなに唸って?」


「ううん、悩み事がないお姉ちゃんが羨ましいなって思っただけだよ」


「ありがとうございます?」


分かってたけど、お兄ちゃんが好きすぎる。

ちょっとは感情の抑制ができると思ってたのに、ちょっとしたことであんなに乱されるなんて……

それに、あのままお兄ちゃんに撫で続けられてたら心も体も蕩けさせられるところだった。

主導権はアリスが握るって決めてたのに、頭をなでられただけでお兄ちゃんにリードして欲しいと不覚にも思わされるし……

うぅ、全然気持ちが切り換えられないよ。


「って、全然褒められてないじゃないですか!?

むしろ、馬鹿にしてますよね!!」


「お兄ちゃん……」


「トリップしてないで私の話を聞いてください!」


「フリッグ、煩い!」


side out


『第136回、ニダヴェリール武闘大会、決勝戦を開催します!』


流石に決勝戦だけあって会場は満員、これで下手な試合なんてしようものならどんなクレームがとんでくるか……


『我が国最強と言われている姫、フリュネ・セシリアを降し、その後の試合も巧みな戦術でここまで勝利してきたレン・カザミネ。

対するは、すべての試合を一刀の元に沈め、圧倒的な実力で勝ち進んできたジン・レグス。

決勝の舞台に相応しい2人の対決となりました!』


ジンの試合は最初のあたりは見てたんだが、まさか全試合一撃とは……

俺の周りには規格外のフリッグとアリスがいるし、その下にいるとしても神力を持っているフリュネだ。

基準が高すぎてジンの力量が測れなかったがここまで強いのか。


「まぁ、この大会は武器が限定されているからな。

俺より強い奴は世界にいくらでもいる」


「それでも、十分凄すぎるだろう。

できれば、手加減してくれると助かる」


「それはできない相談だな。

油断していたら、それこそ一瞬で終わりそうだ」


『それでは、決勝戦、レン・カザミネvsジン・レグス、始め!』


一気に終わらせる。

神力を纏わせた弾丸とトリックミラーによる全方位一斉攻撃。

ジンがいくら強くてもこの世界で神力に勝る力は存在しない。


「残念ながら、うちの妹は天才なんだ。

ミナが対神力の魔法を開発していないと思ったか?」


「そう簡単には勝たせてもらえないことは分かった」


アリスの『月の庭』ほど大規模かつ強力な効力ではないが、これはきつい……

銃弾に纏わせていた神力も効果をなくしている。

これは……


「『万魔殿』、世界に存在している魔力を強制的に纏わせる魔法だ。

普通に使っても、ただ相手に塩を送るだけだが、神力使いには別だろ?」


俺の場合、魔力も持っているから今まで通りに戻されるだけだが、フリュネのように純粋に神力のみを使っている奴にとっては天敵となる魔法だな。

効力がどの程度かは知らないが、もしかしたら神すらも墜とせるかもしれない。


「どうした?

神力を失った俺なんてすぐに倒せるだろう?」


「『絶好の機会こそ気をつけろ』、ミナから言われてる。

この程度の事態は想定内、勝ったと思わせ油断したところを不意討つ、それがレンだろ?」


まったく、手の内を知られている相手はやりにくいな。


「確かに神力が封じられることは想定内だ。

こんな方法で封じてくることは読めないかったけどな。」


神力が駄目なら、莫大な魔力で補えばいい。

神力には及ばなくても、通常の状態と比べると天と地の差だ。


「これなら『万魔殿』の恩恵も受けられそうだ」


「だが、それは俺も同じだ」


「───っ!!」


速い!?

いつも、手合わせをしていなければ間違いなくやられていた。

苦し紛れに撃っても、当然の如く躱される。


「これならどうだ!」


躱された弾をトリックミラーで反射、全方位とは言えないが攻撃中に背後からの攻撃。

後ろを向いて、弾を処理しようとしても、俺に背を向けることになる。

だが、この程度なら易々と切り抜けられる。

真の狙いは、弾を弾かせること。


「これも対策済みだ」


「これは誰にも見せたことないはずなんだが……」


さっき、撃った弾は弾こうとすると弾が分裂する仕組みになっている。

弾が小さくなる分、威力は落ちるが動きは鈍る。

少しずつ、削り取るつもりだったが……


「弾を消滅させられたらどうしようもないな」


「神力を封じたらレンが細工をできる物は弾だけ。

そして、細工といってもアリスが用意する強力無比な弾か、レンが用意する確実に当てられるようにする弾。

あんな苦し紛れに、アリスが用意した弾を使う筈もないからな。

つまり、後者、そこまで分かっていれば、対策は簡単だ。

弾自体を跡形もなく消滅させてしまえばいい。

全部、ミナの入れ知恵だけどな」


「多方向からあれだけの弾を処理できるジンの腕があってこその策だな。

まったく、恐れ入る」


余裕ぶってるが、正直かなり詰んでいる。

通常の弾にアリス特性の弾を混ぜたとしても、相手は熟練の戦士だ。

僅かな違和感で感づかれてしまう。

それを誤魔化すために余裕を奪うつもりだったんだが……


「万策尽きたか?

悪いが、考える時間は与えるなと言われている、決めるぞ!」


普通にやっても勝てないことは分かった。

あまり、この手は使いたくないが……


「腕の一本はくれてやる!」


遠くから撃って当たらなければ、近くで撃てばいい。

それに、刀は切る為の武器。

もちろん近づかなければ当たらないが切る為にはかなりの速度が必要、だが、近づきすぎると最高速度到達点までに対象に当たって威力が十全に発揮できない。

それでも、ジンほどの腕前なら初速で十分な威力が出てしまう。

肉を切らせて骨を断つ、返しの太刀が来る前に一撃必殺の弾を撃ち込む!


「──っぐ」


一瞬だけ訪れる痛み、だが、この距離なら外さない!


「ミナもこの展開は予測していなかった。

だが、これは戦士としての勘で読み切ったぞ。

俺の武器はこの刀だけじゃない」


「なっ!?」


「俺たちの勝ちだ」


「まさか、小太刀を隠し持ってるとはな……

ああ、俺の負けだ」


『第136回、ニダヴェリール武闘大会、優勝はジン・レグス!』



ようやく、ニダヴェリール編完結!


3ヶ月も掛かってしまいました(・_・;)


ニダヴェリール編ではフリッグは最初から最後までいじられ役、アリスはレンに骨抜きにされ、ミナは出番が少なかった(/∀≦)


次回からはミナメインになる予定です!


書き始めたころからミナが一番好きだったんですが、書いているうちにフリッグもアリスも愛着がわいてしまい、最後は誰とくっつけるか迷っちゃいますね(・・*)。。oO


また、関係ない話に移りますが、ついに、ついに、待ちに待ち望んだ『魔法使いの夜』が届きました!


『奈須きのこ』の作品は面白いですよね!


『DDD』の3巻も待ち遠しい……


それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'バイバイ☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ