ニダヴェリール その⑤ 暗躍する影
「流石お兄ちゃん、これで第一関門突破だね。」
「ああ、これもアリスのおかげだ。」
「フリッグよ、済まぬな。」
「いえ、私もレンとアリスを甘く見すぎていました。」
この様子だとアリスもフリッグを上手く抑えられてたみたいだな。
2人とも誰にも悟られず妨害するなんて簡単にやってのけるだろう。
何気にそれが一番の懸念材料だったんだよな。
「それにしても、私の加護が働いてないなんて思いもしませんでしたよ。
レンの魔力が高いこともありますが、どうやら神力との相性が壊滅的に悪いようですね。」
「これでレンも神力持ちという訳か……
これでは、下手にからかうこともできぬ。」
「これからは、弾丸に神力が付いてくると思ってろ。」
いつもは、普通の弾丸は素で手掴まれるからな。
これで、鬱陶しいときは自力で追い出せる。
「あ、それは無理だよ。」
「それは、どういう…!?」
いきなり体が重く……!?
「やっぱりそうなっちゃったか~。
心配しなくてもすぐ、気にならなくなるよ。」
「アリス、これは?」
「単純にお兄ちゃんの魔力を吸いきれなくなっただけだよ。
お姉ちゃんと闘って、かなり魔力が無くなってたからお兄ちゃんの魔力を貰ってたんだけど、もう全快しちゃったからね。
魔力は少ない方に傾くから、今度はアリスの魔力がお兄ちゃんに流れちゃったんだよ。」
「つまり、今までのままってことか?」
「うん、補足するとお兄ちゃんの魔力を1受け取ると1000になっちゃうから『月の庭』でも使わない限りお兄ちゃんの魔力は必要ないんだよね。」
「ふ、それはいいことを聞いた。」
っく、結局はいつもと変わらず理不尽に連れまわされるのか……
「あ、あの……」
「ああ、目を覚ましたのか。」
「はい、アリスさんには助けて頂きお礼を申し上げます。」
「レン、こやつは……」
「ああ、あの眼は間違いないだろう。」
蒼い眼というは別に珍しくなんてないが、あれほど透き通っている眼は他にないだろう。
それに、彼女とは別に妙な力を感じるしな。
「相変わらず巻き込まれ体質じゃな。」
「原因の一端が言っていいセリフじゃないな。」
最初の頃のトラウマがあるせいか、旅先で女性と関わることになるとどうしてもフリッグの様子を伺ってしまう。
だいぶ落ち着いているとはいえ、こればっかりはしばらく治りそうない。
「そして、アリスさんの実力を見込んでお願いがあります。」
この話を聞けば間違いなく厄介事に巻き込まれるが……
とりあえず、アリスと目を合わせる。
どうやら、アリスも同意見だな。
「話を聞いてから決めさてもらうね。」
こういう時はとりあえず情報を集める。
この街に来るまでにあらかたの情報を集めているが、それでも災禍の中心にいる人物から話を聞けるなら是非とも聞いておくべきだ。
ちなみに、フリッグとミナともアイコンタクトである程度のことは分かりあえる。
俺の嘘を雰囲気で見抜いてくる奴らだからな。
眼を見ればある程度分かるそうだ。
「アリスさんに私の護衛を頼みたいのです。」
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「ふーん、また面白そうな事になってるわね。」
「俺は全く楽しめないがな。」
「人生楽しまないと損よ。
そういえば、レンと兄さんが当たるは決勝よね?
それまで、負けたら許さないわよ。」
「俺には負けてもらった方がいいんじゃないのか?
俺が負けたらその時点でミナの勝ちだからな。」
「私は負けず嫌いなの。
負けた相手に勝ち逃げさせてあげる程殊勝な性格してないわよ。」
「ミナらしいな。」
本当に、あった時から変わらないな。
願わくば、この部分だけはずっと変わらずにいてほしい。
だからこそ、まだ負けてやるわけにはいかないな。
「うぅ~、れ~ん~」
「なにを…って、顔が赤いが大丈夫か?」
「だ~いじょうぶです!
ふわふわしててきもちいです~」
なんだこれは?
こんなフリッグは初めて見るぞ。
「……すまぬ、まさかそこまで酒に弱いとわ思わなかったのじゃ。」
酒に弱い神ってのはどうなんだろう?
実は、神力を持っているただの人って言われても何の違和感もないどころか、神だと言われても信じられないな。
「ほら、さっさと離れて、もう寝ろ。」
「い~やです~。
ちゅ~してくれないと離れません~」
「子供みたいな我儘言ってないで離れろ。」
力づくで離そうとしても、フリッグに勝てるわけもなく、抵抗すればするほど強く抱きつかれる。
しかも、フリッグはかなりスタイルがいい。
つまり、体を押し付けられるように抱き着かれるといろいろまずい。
「れんがわるいんですよ、ひっく、ど~して、かっちゃうんですか~」
「はぁ、ほら、まず少し落ち着け。」
「ふにゃ~、もっとなでてくだしゃい。」
気持ちよさそうに目を細めるフリッグ、それは良いんだが誰も助けてくれないのか?
まぁ、酔っぱらている状況で下手に刺激を加えて暴走するよりましなんだろうが
「で、どうして俺に負けてほしかったんだ?」
「そ~です!!
れんがまけたら、わたしがやさ~しくなぐさめてあげようとおもってたんですよ!!」
例え負けてもそこまで落ち込むことはないと思うぞ?
それに、そんな事ミナとアリスが黙ってみてるとは思えないしな。
この短絡的な思考というか、感性だけで動いてるようなところはフリッグらしいな。
「そして、わたしはれんにちょうきょうされちゃうんです。」
「悪い、ちょっと話を聞き飛ばしたみたいだ。
フリッグが俺を慰めるところまでは聞いてたんだがその先を誰か教えてくれないか?」
「心配しなくても聞き飛ばしたりはしてないわよ。
妄想が漏れただけじゃない?」
フリッグが俺をどう見ているのか激しく気になるな。
どうして、慰めてから調教に話が飛ぶんだ?
「れん、すきです……」
寝たか。
「フリュネ、フリッグを頼む。」
「いいじゃろう、妾も今夜は寝ることにする。
また、明日会おう。」
「私達もそろそろ寝ようかしら。
レンも、夜更かしして負けたなんてならないように早く寝なさいよ。」
不老不死だから寝なくても健康に障害はないんだけどな。
それに、今夜はやることもあるし、忠告は聞けそうにない。
「アリス、俺と組まないか?」
「何を言ってるの?
お兄ちゃんとはもうペアを組んでるでしょ?」
「惚けなくてもいい。
アリスが何かを企んでいることは分かってる。
それに俺も乗っかろうと思ってな。」
「む~、今度はばれないと思ったんだけど、どこで分かったの?」
「アリスが彼女を俺のところに連れてきたところでだな。」
「巻き込まれるより、最初から目の届くところに置いておこうと思ったアリスの判断は間違ってたかな?」
「いや、それがフリッグならそのまま納得していたが、アリスなら話は別だ。
アリスの能力と頭脳があれば、この街にいる間彼女を俺に近づけないようにすることくらいやってのけるはずだ。」
「それは買いかぶりすぎじゃないかな?
アリスにもできることとできなことはあるよ。」
「ちなみにもう1つ不自然な事があった。
それは彼女がアリスの名前を知っていたこと。
前提として俺は厄介事は避けたいんだ。
その前提があり彼女と接触したら、まず芽を潰そうとするってことは誰にでもわかる。
それなのに、アリスは名前を教えている。
これは、最初から深く関わるつもりでいるってことだ。
この矛盾をどうやって言い逃れする?」
「名乗られたからその流れで名乗っちゃったって言い訳は駄目?」
「アリスがそんなミスをするわけないし、お前らの事なら嘘をついてるかついてないかくらい雰囲気で分かる。」
「……降参だよ。
あの護衛の件もアリスに頼んでくるように態々背負って走ったり過剰に力を見せたんだしね。」
「協力を取り付けたことだし、早速行くか。」
「うん、障害物は早めに取り除かないとね。」
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「久しぶりだな。」
「僕としては君達ともう2度と関わるきなんてなかったんだけどね。
まぁ、久しぶりと言っておこうかレン・カザミネ。」
「随分と嫌われているようだな。
だが、話は聞いてもらうぞ、アビス・ラクライマ。」
久しぶりの登場となったアビスです。
もう忘れられてるかもしれませんが;x;
レンとアリスの思惑は?
レンの方はそこそこ分かりやすいかもしれませんね。
リースを取り巻く環境と古龍種の伝承、レンとアリス、『ニーズヘッグ』、さらにニダヴェリールも様々な思惑が飛び交うニダヴェリール編。
そろそろ、物語の核心に迫るかもしれません!
そして、レンとアリスvsジンとミナの勝負もありますので気が向いたら読んでください。
それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'バイバイ☆