ニダヴェリール その④ 本当の狙いは
side フリュネ
「いくら起動が変わろうが、直線にしか来ない弾なぞ恐そるに足らぬわ!!」
「確かに一発ならな。」
弾ぎれ・・・・はあれがレンの能力で作られている以上それは望めぬ。
あの鏡を割ろうとしても複数の弾丸が四方八方から襲ってくる中困難、レンを狙うにしても同じことが言えよう。
それにしても、複数の弾丸を妾に向けて操作できるものじゃ。
鏡から鏡に入るまでの時間は1秒に満たぬ。
その刹那の間に複数の鏡を繋げ、さらにそれぞれ別の場所から弾丸を撃ちだす所業、真似できるものなどそうそうおるまい。
「……っ!?」
「どうやら、5発も撃てば躱せないらしいな。
降参するなら今の内だぞ?」
「はっ、ぬかせ。
こんなかすり傷程度で妾に勝ったつもりか?」
「だろうな。
それじゃあ、次は倍の数行くぞ。」
「妾に傷を負わせたことは誉めてやろう。
じゃが、これで終いじゃ『フレーデ』」
side out
side フリッグ
これで私たちの勝ちですね。
『フレーデ』は神術の初歩の術ですがその防御力は堅牢の一言。
レンには悪いですがあの程度の攻撃では何発当てようと絶対に破ることはできません。
「無駄じゃ、いくら撃とうがその程度の威力では『フレーデ』は超えられぬ。」
「何回でも言ってやるが思い込みは命取りだぞ。」
「ふん、そんな豆鉄砲で何ができるというのじゃ。
そろそろ、終わりにするぞ。
せいぜい、逃げ回ってみよ!!」
やはり、レンが押され始めましたね。
先程までは防戦一方でしたが、『フレーデ』がある限りレンの攻撃は通じません。
ならば、フリュネの道を遮ることはできませんし、接近されればレンに勝ち目はないでしょう。
それにしても、フリュネも最初から『フレーデ』を使えば苦戦を強いられることもなかったでしょうに。
……まぁ、フリュネは誰がどう見てもSですから、適度に嬲りたい気持ちがあるんでしょう。
レンも間違いなくSですから、フリュネとは相性悪いんでしょうか?
会う度に喧嘩してますけど、お互い本気で嫌っているというわけではないですし、よくわかりませんね……
「そら、次行くぞ!!」
うぅ、いくら怪我をしてもすぐ治るとはいえレンをあんまり苛めないでほしいです。
レンも早く降参してくれれば、私が付きっきりで看病してあげられんですけど。
そして、フリュネに味方したお仕置きとしてちょっと乱暴に抱かれてレン好みに調教されて
………
「お、お姉ちゃん?
何を妄想してるか知らないし、知りたくもないけど、こんなところでくねくねしないほうがいいよ………」
アリス常識を促されるなんて、これはちょっと反省しないといけませんね。
「なんだかすごく失礼な事言われた気がする………」
そういえば、アリスもSなのにレンとは仲良いですよね。
もしかしすると、アリスも実は私と同じMなんでしょうか?
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半裸で後ろで手を縛られ、羞恥を感じながらも興奮を隠せず、息は乱れ、朱く火照らせた体、そして
「……おにいちゃん、アリスをい・じ・め・て♪」
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………やめましょう。
人として超えてはいけない一線をいろいろ超えてますし、女である私でも超えてしまいそうです。
なにより、そんな誘惑をされて私が勝てる見込みがありません。
「アリスはずっとそのままでいてくださいね。」
「なんだろう、すごく穢された気がする。」
さて、試合はどうなっているんでしょうか?
「ぬるい、蹴りとはこうやるのじゃ!」
「ぐぉ……」
このままではじり貧ですね。
レンも諦めが悪いですね、いくら撃ったところで『フレーデ』は破れないというのに……
………そんなこと戦ってるレンが一番わかってるはず。
それなのに、態々鏡を使ってまで当てようとしている。
何か嫌な予感がします。
「そろそろ決着かな。
お姫様は見事にお兄ちゃんの術中に嵌ってるね♪」
っ、やはり何か裏が!?
ですが、いったい何の為に………
「お姫様の直感は大したものだよね。
どれだけ巧妙に裏を欠こうとその直感で躱されちゃう。
『トリック・ミラー』をあれだけ駆使してようやく当てられるんだがらここぞの一発は持ち前の直感で躱される可能性が高い。」
これはレンがこの世界に来たばかりの時に戦ったあの魔物との戦いに………
しかし、あの時は麻酔弾というある意味必殺の武器があったから勝てたのであって、いくら心理的に動きを制限したとしても、いえ、例え必殺の武器があったとしてもフリュネの直感ならば致命傷は避けられるはずです。
「お兄ちゃんの狙いはお姫様を倒すことじゃないんだよ。
お兄ちゃんは詐欺師だからね。
嘘はつかなくても、自然に偽って普通に考えればわかることなのにそれを分からなくする。」
この試合の勝利条件は………!?
side out
そろそろだな。
『トリック・ミラー』はあることを隠すための囮
四方八方から襲い来る複数弾丸に、いくらフリュネと言えど完全に躱せるはずがない。
さらに、半端な神術を使用したところで『トリック・ミラー』は跳ね返す。
この状況で防御系の神術を使ってくることくらい誰にでもわかる。
そして、いくら撃っても無駄だということは誰が見ても明らか。
つまり、ここまでは躱す必要がないと思い込ませるための演技。
全ては、この一発のための布石だ!
「終わりだ!」
「……ぬ!?
まさか、このような隠し玉を持っていようとはな。
先程の弾はアリスが用意したものじゃな。」
「ああ、アリスが作った特製品だ。
アリス曰く、あらゆる神術を無力化できる代物だそうだ。」
「……成程、すべてはその一発を当てるための布石か。
じゃが、次はない。
妾の勝ちじゃ。」
「いや、俺の勝ちだ。」
「何を言っておる……」
「お前の武器を見てみろ。
それでまだ戦えるのか?」
「……っ、そういうことか。
お主が最初から狙っていたのは……」
「そう、武器破壊だ。
お前をあの一発で倒せないことくらい承知済みだ。
そして、2度目がないこともな。
だからこそ、その一点に全てを掛けたんだよ。」
「まんまと踊らされという訳か……」
「言っただろう?
思い込みは命取りだってな。」
『第5回戦、勝者レン・カザミネ!!』
というわけで、ばれなければ反則ではないという主人公にあるまじき方法でフリュネに勝利しまし、フリッグはよくわからない方向に走っています。
フリッグはやっぱりちょっと残念な娘という位置は変わりませんね。
そこが可愛いわけですが……
さて、次回はニダヴェリールの裏でいろいろな思惑が動きます。
それではまた次回(。・ω・。)ノ~☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'バイバイ☆