番外編 元の世界の日常
100話突破記念ということで死ぬ前の世界での蓮の生活です。
「兄さん、兄さん、もうお昼ですよ。」
「・・・・ん、俺、寝てたか?」
「はい、兄さんが授業中に居眠りとは珍しいですね。
いくら思春期真っ盛りとは言え、夜の運動はほどほどにしないと駄目ですよ。」
「それは、彼女いない歴=年齢の俺に対する遠回しな嫌味か?」
「あら、兄さんは彼女が欲しかったんですか。
それなら、私が一肌脱いであげましょうか?」
「お前と俺は血は繋がらなくても兄妹だ。
それに、兄妹じゃなくてもお前だけは御免こうむる。」
「つれないですね。
それはそうと、東宝院さんたちが待っていますよ。」
「あいつらが待っていながらお前が起こしに来るというところに悪意を感じるな。」
「今日の兄さんはやけに突っかかりますね?
もしかして生理ですか?」
「俺は男だ。
生理なんて来てたまるか。」
「あら、そうですか。
もし、女性になりたかったらいつでも言ってくださいね。
私が中国の池に突き落としてあげますから。」
「やめろ、お前が言うと冗談に聞こえない。
それより、あいつら待たせてるんだろ?
そろそろいくぞ。」
「もう少し兄妹水入らずの時間でいいと思いますけど、兄さんがそういうなら仕方ありませんね。」
いつもどうりだが、クラスの皆はドン引きだな・・・
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「遅い!!」
「すみません。
兄さんが生理で苛々していたので少々時間を取られました。」
「まだそのネタを引っ張るつもりか。」
「はい。
実は、兄というの良いですけど、姉も欲しいと思ってたんですよ。」
「・・・・・・・俺が悪かった。」
「やはり、仲のいい兄妹というものは良いですよね。」
こいつに口で勝てる日は一生こないだろうな・・・
「遅れてきていちゃつくな!!
蓮、早く飯を出せ。」
ちなみにこの怒鳴ってる奴は東宝院帝
名前からなんとなく分かると思うが、相当な金持ち。
日本有数の資産家で、その跡継ぎだ。
なぜそんなやつが、俺みたいな一般市民が通う高校に通っているというと、話せば長くなるから割愛さてもらう。
「毎回思うんだが、どうして俺がお前たちの分まで作らされてるんだ?」
「それは、蓮が作る飯が美味いからだよ。」
で、こいつが藤宮霊
正直こいつのことは分からない。
警察のお偉いさんが頭を下げるわ、大企業の社長が直々に会いに来たこともある。
なにより、唯我独尊の帝を唯一言い聞かせられることができる人物。
「お前らのお抱えの使用人に作ってもらえばいいだろう?」
「高価な食材を使っているんだから美味いのは当然。
だから、たまにはこういう安っぽい食材で作ったものが食べたくなるんだよ。」
もう、なにもいうまい。
「すみません、遅れました~」
「和緩、貴様はいつになったら遅れずにくるんだ!!」
「わ~、今日も美味しそうなお弁当ですね~」
「帝、諦めろ。
楓香先輩のこれはどうしようもない。」
この人が俺たちの1つ上の楓香和緩
お茶の本家で生まれ、とにかく周りを和ませる。
本人もかなりのマイペースで、帝が唯一苦手としてる人物だ。
「うん、美味しい。
これならいつでもお婿さんに行けますね~
どうです、蓮君がお婿に来てくれるなら大歓迎ですよ~」
「その話は毎回お断りしてるじゃないですか。
楓香先輩ならもっといい人見つけられますよ。」
「もう、いけずですね~
まぁ、蓮君を落とす前に怖い子姑をどうにかしないといけませんが。」
「ふふっ、私は兄さんに彼女ができるなら大歓迎ですよ。
でも、彼女ばかりに構って私を御座なりにするならいろいろやってしまうかもしれませんけど。」
で、最後にこいつが風峰舞花
俺の母方の弟の子供で、俺の従妹にあたるわけだが俺の両親が亡くなってから風峰の家に引き取られ兄妹として過ごしている。
「まぁ、それは杞憂ですけどね~
シスコンの蓮君が舞花ちゃんを御座なりにするなんてありえませんし。」
「楓香先輩、その話ももう飽き飽きするほど聞きましたよ。
こんな歳から痴呆ですか?」
「・・・・蓮く~ん。
女の子に対して言っていいことと悪いことが分からないのかな~
これはお姉さんがちょっ~と教えてあげないといけないのかな~?」
「・・・・すみませんでした。」
「蓮君は素直ないい子ですね~」
いくら何でも弱すぎないかと言われそうだが、楓香先輩はお茶だけでなく、日本のあらゆる文化に通じている。
華道や書道、もちろん弓道や剣道まで、その全てが有段者。
どうあがいたところで俺が勝てる人じゃない。
それを知らなかった時は気付かないうちに投げ飛ばされてたな・・・
「で、霊、今日はなんで集めたんだ?」
「ふむ、最近通り魔事件が多発していることは知ってるよね。
それ犯人を捕まえてくれと頼まれた。」
「ほぅ、面白そうじゃねぇか。」
「物騒な世の中になったものですね~」
はぁ、また面倒事を運んできやがって・・・・
どうしてこいつらは平穏に過ごそうと思わないのだろうか?
いや、楓香先輩は別だろうが。
「これが概要ね。
一応、機密事項だから気をつけるように。」
そんなものを一般人に見せるなと言いたいが、言って聞くような奴らじゃない。
それに、舞花がいる限り最悪のことなんて起こらないだろう。
「妙だな。」
「妙ですね~」
「同感だな。」
概要はこうだ。
詳しい時間などは省くが事の始まりは8日前。
犯行時刻は16時から20時、10歳の子供から70歳の老人まで見境なし。
犠牲者はたったの8日で13人。
それだけの犠牲者だというのに目撃証言が1つもないときてる。
「当然だが、警察があれだけ出回っているのにも関わらず目撃証言が1つもない。」
「それも人が多くなる時間にですからね~
それに、ただの通り魔事件にしては手際が良すぎますね。
確かに、人通りが少ない場所での犯行ですが少し騒げば誰か1人くらい気にしてもおかしくありません。
つまり、犯人は被害者を即死あるいは、薬か何かで眠らせて殺している。
これは少し奇妙ですね~」
「そして、凶器がそれぞれ違うこと。
鈍器で頭を殴られている事もあれば、鋭利な刃物で一刺っていうのもある。
僕が気になったところは被害者に統一性がないところかな。
犯人を特定させない為だけにしては被害者が多すぎる。
これは、殺人そのものが目的の可能性が高いね。」
「つまり、これは誰かに向けてのメッセージあるいは挑発。
そして、犯人は複数、最悪組織として動いている可能性もあるな。」
「皆さん、随分頭が回るようになりましたね。
60点をあげましょう。」
「相変わらず見下した言い方しやがる。
その内、吠え面書かせてやるから覚えとけ。」
「やっと、赤点回避か・・・
まだまだ、舞花ちゃんは遠いね。」
「まぁ、まぁ、これから人生長いんですから、のんびり行きましょう。」
「それでは兄さん、回答をお願いします。」
「本当にお前はいい性格してるな。」
「いやです、兄さん。
そんなに褒められたらいろいろしてあげたくなっちゃうじゃないですか。」
舞花に皮肉が通じるわけないと知っているんだが、どうしても口走ってしまうな・・・・
「はぁ、俺が一番おかしいと思ったところろはどうして同一犯だと確定されているかだ。
確かに、13人も連続で死んでいれば同一犯だと疑うのは当たり前だ。
だが、犯人は誰かを挑発するような犯行を犯しているにも関わらず、殺人の方法が違う。
これだと、同一犯と決めるには時間がかかってしまうだろ?」
「つまり、この件には警察、っていうか僕にこの案件を持ちかけてきた連中が一枚かんでるってこと?」
「おそらくだがな。
それに気付けば、話を聞こうとする。
だが、警察が一般市民である霊に頼っていることなんて世間に知られていいはずがない。
それを理由に人気のないところでの話に持ち込もうとするはずだ。」
「そこで、俺たちを一網打尽にしようって魂胆か。
まったく、恩知らずな奴らだ。」
「俺と舞花を除く3人なら、身柄を必要とされてもなんらおかしくない。
それに、いくら舞花先輩が強くても相手はプロだろうし、数を用意すれば抑え込むことも難しくないだろう。」
「怖い話ですね~
蓮君、私が危なくなったら助けてくださいね。」
「それは、楓香先輩より弱い俺じゃなくて帝か霊に行ってくださいよ。」
「ん~、分かってませんね。
好きな男の子に守ってもらいたいっていうのは女の子との憧れなんですよ。」
「からかうのもいい加減にしてください。
それに、俺と楓香先輩じゃ釣り合いません。」
「う~、また振られちゃいました。」
まったく、この人もどこまで本気なのかいまいち掴みづらいからやりにくい。
「さて、和緩先輩の告白タイムも終わったことですし答え合わせをしましょうか。
とは言っても、兄さんが正解を言っちゃいましたからその後の話しかないんですけどね。」
「・・・・・・・」
「兄さん、そんなに見つめられたら照れてしまいます。」
「はぁ、舞花帰ったら少し話がある。」
「・・・・・分かりました。
まぁ、結論から言いますと黒幕だった警察の一部を解雇させました。
犯行を行っていったのは雇われていた四名。
その四名を捕まえて本人の前で吐かせて、言い逃れもできない状況でしたが、警察もこんなことを公表なんてできるわけありませんから、もう2度とこのようなことができないよう財産の没収、及び解雇という形に落ち着きました。」
「流石舞花ちゃん。
見事なお手前だね。」
まぁ、こんな感じで霊が不可解な事件を持ってきて、皆で推理して想像力を鍛えている。
最初の頃は、まったくだったが今は舞花から及第点を貰えるくらいには成長してるんだが・・・・
「何か言い分はあるか?」
「兄さんは心配性すぎです。
私に危険なんてあるはずないじゃないですか。」
「いいか、お前は誰が何を言おうと人間だ。
それに、お前は俺の家族でもあるんだ。
危ないことをやってたら心配するのは当然だろう?」
「99点です。」
「話を逸らそうとするな。」
「いえ、逸らしてるわけではありませんよ。
兄さんは1つだけ間違っていました。
それは、黒幕の本当の狙いは兄さんです。」
っち、そういうことか。
「兄さんならわかりますよね。
あの3人の友人であり、なにより唯一私を操作できる存在。
私も兄さん以外が目的なら、表だって動くことはしませんでしたが、たった1人の家族である兄さんが危険だったので動かせてもらいました。」
「・・・・・叔父さんと叔母さんは今どうしてる?」
「さぁ?
今頃、どこかの有楽地で遊んでるんじゃないでしょうか。」
一応、舞花にも両親はいる。
だが、3歳の時点で育児を放棄したらしい。
聞こえは悪いかもしれないが、舞花を知っている人物なら仕方ないと言えるだろう。
3歳にして、両親を超える収入を手に入れ、その時点で一生遊んで暮らせるほどの財産を築いたそうだ。
そんな舞花を育てることなんて誰にもできないだろうからな。
「・・・・・分かった。
だが、次は行動を起こす前に一言くらい言ってくれ。」
「分かりました。
兄さん、お腹がすきました。」
「今日は何が食べたい?」
「それじゃあ、ハンバーグが食べたいです。」
「またか?」
「はい、だって、兄さんが初めて作ってくれた料理ですから。」
「恥ずかしいことをよくも臆面もなく言えるな。」
「ふふっ、家族なんだからいいじゃないですか。」
舞花に関してはいろいろ謎の部分が多いですが、それは本編が進むにつれ分かるようになる・・・はずです。
というか、舞花が出てくるまでまだまだかかりそうですが(;・_・)
次回は本編に戻ります。
それぞれの思惑が渦巻くニダヴェリール編の中核へと突入します!
それではまた次回(・∀・)/~~~