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弱点は見えないのに胃痛と退職願は見える俺の超鑑定、気付けば世界を救っていた

作者: 日御碕 出雲
掲載日:2026/09/22

【第15作目】ラノベにありがちな【鑑定スキル】って、本当に使えるのだろうか?百科事典や専門書クラスだったらどうするのだろう?そんな事を思って書いてみました。


------------------

「勝った」


異世界転生した瞬間、ユウキは確信した。

なぜなら神様から授かったスキルが、【鑑定】だったからだ。


ラノベで読んだ鑑定持ちは、勝ち組筆頭なのだから。

レアアイテム発見。

宝探し。

隠し能力発見。

美少女の好感度確認。

人生イージーモード。


「剣? 魔法? いらんいらん。鑑定だけで食っていける」

ユウキは転生初日に勝利宣言した。


道端の石を鑑定。

「うん、石」

草を鑑定。

「うん、草」

木を鑑定。

「うん、木」

犬を鑑定。

「うん、犬」

何も分からなかった。


だがユウキは前向きだった。

「きっとレベルが低いんだ!」

 そうに違いない。


-----------

 一か月後。

 鑑定しまくった結果。

「きたぁぁぁぁぁ!!」


【鑑定Lv2】or【超鑑定】に進化できますの表示。

光る【超鑑定】ボタンを全力で連打。

ボタンが壊れる勢いだった。

「これでチートだ!」

選択直後、体が一瞬光りスキルが進化したことを悟った。



最初に手にしていたリンゴを鑑定。

界:真核生物

門:被子植物門

綱:真正双子葉植物綱

目:バラ目

科:バラ科

属:リンゴ属

種:異世界リンゴ

「??」


続き。

推定樹齢:12年2か月

糖度:14.91

全細胞数推定約八百二十億

「???」

葉緑体数推定

根系発達率

「…」

受粉に関与した蜂の推定個体数:153

「なんだこれは?」



気を取り直して、次に森でキノコを鑑定。

冒険者の命運を分ける一番重要な対象である。

「頼むぞ超鑑定」


界:菌界

門:担子菌門

綱:ハラタケ綱

目:ハラタケ目

科:テングタケ科

属:テングタケ属

「毒の有無は?」

種:赤斑点茸

「食べれるかが知りたいんだよ!」

胞子直径0.008ミリ

胞子総数推定

「魔法効能とかは!?」

生育環境適正温度18.3℃

「温度じゃねぇ!!」


きのこを見ながらブツブツ言っているユウキを見て

近くにいたベテラン冒険者が教えてくれた。

「ああ、それ毒キノコだぞ」

「五秒で答え出た!」

泣きたくなった。



さらに問題があった。

魔獣の鑑定である。


分類:霊長目

体重47.2kg

体脂肪率13%

虫歯2本

「弱点は!」

視力0.9

左肩に古傷

昨日、転倒した記録あり

「どうでもいい!!」

ゴブリンが棍棒を振る。

ユウキ逃げる。


鑑定続く。

昨日の夕食:

猪の生肉(死後3日)

キノコの丸焼き

水たまりの水

「食事日記じゃない!!」




---------

さらに月日が経ち【超鑑定Lv2】になった。

嫌な予感しかしない。

だが好奇心に勝てない。


目の前のリンゴを見る。

DNA解析開始

祖先個体特定中

七代前までの系譜表示

「家系図いらん!!」

収穫予測

病気発生率

未来腐敗確率

「おっ?」

腐敗後に集まる虫予測

虫の子孫予測

虫の繁殖成功率

「おおおおおい!!」


さらに酷くなった。



さらにレベルは上がり続けた。

【超鑑定Lv3】

もう怖いもの見たさだった。

試しに宿屋のパンを鑑定する。


小麦生産者:ハンス

その父:カール

その父:ゲルハルト

「農家の家系図やめろ!!」

流通経路表示開始

荷馬車経由

街道第三支線利用

料金徴収担当:トーマス

「物流管理システムじゃない!!」



村娘に鑑定を頼まれたこともあった。


村娘 エミリア

年齢:18

身長:160.2cm

体重:50.3kg

「ストップ!!」


右足小指骨折歴あり

17歳時に井戸に落下

初恋相手:ジュリアス

「やめてぇぇぇぇっ!!」


村中を追いまわされた。


----------

そんなある日。

王都が大騒ぎになった。


魔王軍四天王の一人。

厄災竜バハムロが出現したのだ。

国軍総動員。

S級冒険者が集結。

勇者まで派遣された。


もちろんユウキも物見遊山でついて行った。

野次馬である。

「勝てる気がしねぇ……」

巨大な黒竜が空を覆う。


勇者の聖剣も。

大魔導士の禁呪も。

ほとんど効いていない。

絶望的な戦況。


その時だった。

「せめて情報くらい見てやるか!」

自暴自棄で鑑定発動。


種族:竜種

年齢:387歳

身長:11.8m

体重:12.4t

鱗総数推定

「いらん!」

虫歯:0本

「健康だな!」

昨日の夕食:ワイバーン3匹、牛7頭

「大食い自慢か!」


だがスクロールし続ける。


何万行もの情報が流れる。

もはや視界が文字で埋まる。


好きな食べ物:燻製肉

嫌いな食べ物:ピーマン

「子供か!」

趣味:陶芸

「えっ?」

最近の悩み:部下が命令を聞かない

「えっ?」

ストレス指数:98%

睡眠不足継続日数:34日

胃痛発生率:89%

退職願作成回数:17回

「待て、待て」

転職希望先:人里離れた静かな山奥

「待て待て待て」


ユウキはひらめいた。

というか、他に有効な情報がなかった。

「お、おい竜!」


戦場が静まる。

なぜか勇者より目立っている。


「お前、本当は仕事辞めたいんじゃないか?」

 黒竜が固まった。

「……なぜ知っている」

「やっぱり!?」

どよめく王国軍。


「だってお前、胃痛と睡眠不足と転職希望が表示されてるし!」

「誰にも言ったことない悩みだぞ!?」

図星だった。


四天王なのに休みゼロ。

部下は言うことを聞かない。

魔王は無茶振り。

会議ばかり。

最近は侵略計画書を三十七回も差し戻された。

「つらい……」

泣き出した。

厄災竜が。


人類最大の敵が。

戦場のど真ん中で。

「有給が……欲しい……」

その場にいた全員が同情した。


黒竜をダメ元で説得してみた。

そして三時間後。

厄災竜は魔王軍を辞めた。


結果。

魔王軍侵攻は停止した。


勇者は何もしないまま英雄と呼ばれた。

王国に平和が戻った。


厄災竜は山奥で冬眠を始めた。


数か月後。

「なるほど」

ユウキは悟った。

「この鑑定、人の役には立つんだな」


レアアイテムも見つからない。

弱点も分からない。

毒キノコも判別できない。

戦闘ではまるで役立たない。


だが。


冒険者

・最近眠れていない

・恋人と喧嘩中

・無理している

商人

・借金で悩んでいる

騎士

・退職希望

なぜかそんな情報だけはやたら詳しくなった。


ユウキは今日も街を歩く。

「あの、少し話を聞こうか?」


気付けば悩み相談所みたいなことになっていた。

ちなみに収入は微妙である。


そして数年後。

鑑定はついに最終進化【神鑑定】となった。


「名前からして嫌な予感しかしない」

恐る恐る自分を鑑定する。


ユウキ

年齢:24

所持金:少ない

彼女:いない

将来の結婚確率:低め

髪の毛の将来予測:絶望的


「そこは表示するなぁぁぁぁぁ!!」


 こうしてユウキは初めて、自分の鑑定結果だけは二度と見ないと固く誓ったのだった。

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もしよければ、過去作も読んでみてください。

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― 新着の感想 ―
髪の毛の将来予想を出すとは、何とも残酷な鑑定能力。。。
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