第27話 拒絶(3)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
最初の石は、
誰が投げたのか分からなかった。
乾いた音がして、
ゼルの足元で砕ける。
空気が、張り詰める。
誰かが叫ぶ。
「責任を取れ!」
「選んだだろ!」
「助けられたはずだ!」
言葉が、
次々と投げつけられる。
その中に、
明確な悪意はない。
あるのは、
押し付けられなかった責任を、
返したいという衝動だけだ。
二つ目の石が、
肩をかすめる。
三つ目が、
地面に転がる。
護衛が前に出ようとするが、
ノクスが手で制した。
「手を出すな」
「しかし……!」
「これは、
基準が
引き受けるべき現象だ」
ゼルは、動かなかった。
避けもしない。
反論もしない。
基準として、
そこに立つ。
だが――
それが、さらに怒りを煽る。
「黙るな!」
「何か言え!」
叫びの中で、
ゼルは一つだけ理解した。
拒絶は、説得では止まらない。
境界線の外に置かれた者たちは、
線そのものを壊そうとする。
それは、
自分が正しい場所に戻るためではなく、
誰かを引きずり落とすためだ。
石が、再び飛ぶ。
当たらなかった。
だが――
その必要はない。
この瞬間、
世界は明確に選んだ。
基準を、
味方ではなく、異物として見ることを。
ノクスが、静かに記録する。
《基準:社会的拒絶、発生》
《感情反応:恐怖→敵意》
《次段階:対立、不可避》
ゼルは、
夜空を見上げた。
救われない者が、
必ず生まれる。
その事実から、
目を逸らすことはできない。
だが――
拒絶される覚悟も、
引き受けなければならない。
基準とは、
世界に必要とされ、
同時に疎まれる存在だ。
そして、
拒絶はまだ、始まったばかりだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第28話 敵意(1)へ続く




