第3話 新入生の視線(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
春の終わり、学院に新しい空気が入ってくる。
新入生だ。
一年生たちは、まだ制服がぎこちない。
視線は落ち着かず、歩き方もどこか慎重で、
この場所に「選ばれた」誇りと不安が混じっている。
俺が二年生として廊下を歩いていると、
そんな視線が、いくつもこちらに向けられているのを感じた。
――違う。
前列の優秀な先輩を見る目でも、
貴族の名札を見る目でもない。
もっと、率直な視線。
「……ねえ、あの人」
小さな声が聞こえる。
「二年生なのに、後ろの席の人でしょ?」
「そうそう。さっき実技で、何も起きてなかった」
噂は、もう下にまで降りてきているらしい。
俺は、気にしないふりをして通り過ぎる。
いつものことだ。
……だが、今回は少しだけ違った。
その視線の中に、
侮蔑も、嘲笑も含まれていないものがあった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第3話 新入生の視線(2)へ続く




