第26話 境界線(1)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
境界は、
宣言されてから生まれるものではない。
人々が集まり、
期待が重なり、
責任が固定されたとき、
いつの間にか、そこに存在している。
ゼルが立つ広場の中央には、
特別な印も、結界もなかった。
だが、
空気ははっきりと分かれている。
彼の近くにいる者たち。
少し距離を取る者たち。
そして、遠巻きに見つめる者たち。
「……ここまで、か」
ノクスが静かに呟いた。
「基準の影響範囲が、
自然に限定され始めています」
「自然、ね」
ゼルは、苦く笑った。
人は、
無限を前提に期待し続けるほど、
愚かではない。
救われた者は、
“次も救われる”と思う。
救われなかった者は、
“なぜ自分は外だったのか”と考える。
その問いが生まれた瞬間、
境界線は確定する。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第26話 境界線(2)へ続く




