第25話 責任(2)
本作は「魔術が当たり前の世界」で、ただ一人そこから外れた少年の物語です。
静かに歪み始める学院の日常と、気づいてはいけなかった違和感をお楽しみください。
次の街では、
人が集まっていた。
怪我人。
崩れた家屋。
治癒魔術も、補修術式も、
長時間使えない状態が続いていたらしい。
ゼルが足を踏み入れた瞬間、
空気が変わる。
「……来た」
その一言で、
視線が集まる。
誰も命令しない。
誰も詠唱しない。
ただ、
“いること”を期待している。
ゼルは、立ち止まった。
全員を救うことはできない。
どこまでが影響範囲かも分からない。
それでも、
ここに立つ限り、
救えなかった結果は
すべて彼の“責任”として残る。
「基準は、
選択を可能にする存在です」
ノクスが、低く告げる。
「しかし、
選択しなかった結果からは、
免責されません」
それは、
宣告に近い言葉だった。
ゼルは、初めて恐怖を覚えた。
力ではない。
世界でもない。
期待だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
善意や好奇心が、必ずしも優しさにならない世界を描いています。
続きもゆっくりと深まっていきますので、お付き合いいただければ幸いです。
第25話 責任(3)へ続く




